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第136回 「ビジネスOS」は「自分の未来を切り拓く力」
AIテクノロジーの発展が目覚ましいこんな時代だからこそ、人ならではの「ビジネスパーソンとしての在り方・考え方」を掘り下げておく必要があるのではないでしょうか。今回は私たちが「ビジネスOS」という表現していることの重要性を考えてみたいと思います。
「ビジネスOS」は「自分の未来を切り拓く力」
こんにちは!
それまでの日常生活を、3年以上続いたコロナ禍が激変させてしまった時間が、5月連休明けから感染症法上の位置づけが「5類感染症」に移行されました。本当に久々に少なからず、心理的には解き放たれた気持ちになる時期を迎えることができたように思います。
そんな中、AIテクノロジーの目覚ましい発展の代表格として世の中を席巻しているのが、「ChatGPT」を筆頭にした生成AIです。
一部では「“核”を超える脅威になりえる発明」という表現もあるようですが、AI分野で「ゴッドファーザー」と呼ばれたジェフリー・ヒントン氏が米Googleを退職し、急速に発展するAIの危険性にも言及しておられる状況もあります。
AI想定より速く人知超える公算、危険性語るためグーグル退社=ヒントン氏(ロイターWebサイト)
各国の対応の仕方や向き合い方もいろいろあるようですが、少なくとも、無視したり遠ざけたりすることは、既に不可能な「不可逆的な流れ」に入ってしまっていると思わざるを得ません。
「シンギュラリティ」という「人工知能が人間の知能を超える転換点」を示す表現があり、まだ先のことだとしても、その端緒についたといえるのではないでしょうか。
ビジネスシーンでの活用の仕方もさまざま検討されていますが、こんな時代だからこそ、人ならではの「ビジネスパーソンとしての在り方・考え方」を掘り下げておく必要があるのではないでしょうか。
ということで、今回は私たちが「ビジネスOS」という表現していることの重要性を考えてみたいと思います。
「ビジネスOS」とは何か?
そもそも、OSとは「オペレーティングシステム(Operating System)」の略で、パソコンをはじめとしたハードウェアを操作したり、アプリケーション/ソフトウェアを使ったりするための土台となる「基本ソフトウェア」を指しています。
この構造を、人間に当てはめて考えると、下記の図のように表現できるのではないでしょうか。
つまり、私たちが「仕事をするうえでの“考え方”としてのOS」という位置づけになります。
アプリケーションに該当する「スキル」は、あくまでも「道具」であり、AIはこの部分を代替可能なツールとして担っています。
一方、その「道具」をどのような価値観に基づいて使いこなすのか? 何を実現するために、どんな「スキル」が必要なのか? をつかさどっている部分が「OS」に該当し、一般的な表現の要素としては「人生観・価値観・仕事観・思考性」といったものに該当し、究極的にはそれぞれの人の「世界観」ともいえるかもしれません。
自分の「ビジネスOS」を認識しているか?
こう考えると、立場やキャリアを問わず、全てのビジネスパーソンにとって「ビジネスOS」は存在しているわけで、それは、自身の中に形成されているものだということになります。ところが厄介なのは、その自分自身の「ビジネスOS」がどのようなものなのか? 何を大切にしているのか? 価値観や人生観といったものを意外と自分自身で正確に認識していないケースが多いということです。
このことをピーター・ドラッカーは著書『プロフェッショナルの条件』の中で下記のように指摘しています。
誰でも自らの強みについては良く分かっていると思っている。だが、たいていは間違っている。分かっているのはせいぜい弱みである。それさえも間違っている事が多い。
多くの場合「何となく好きだから」「今まで長くやってきたから」という理由で自身の可能性を定義してしまっています。
過去、下記において「成熟度」と「氷山モデル」に関して触れていますが、
第134回 “行動変革”につなげる「推論のはしご」の理解と実践
本来、自分の「成熟度」を高めるには、「氷山モデル」を認識して、見えない部分を掘り下げることでしか「自分のビジネスOS」がどのようなものなのか? を認識できないのではないかと思います。
自分の「ビジネスOS」の探索
自分の「ビジネスOS」を探索するには
- 自己分析
- 他己分析
- 自分史の振り返り
- イヤなことからの逆引き
などが代表的な方法として挙げられます。
自己分析
過去の経験を棚卸し、印象的なエピソードを思い出す。印象的なエピソードでは、自分の能力や人柄などの特徴が見えてみます。そうした特徴から、自分の強みや思考性を見つけていきましょう。
他己分析
周囲の人に自分を分析してもらう他己分析も挙げられます。ドラッカーの指摘どおり、自分のことは自分が一番よく知っていると思いがちですが、自分だからこそ分からないこと、気づけないこともたくさんあることも現実です。特に自分では当たり前過ぎて見落としがちなことは意外と多いものです。
自分史の振り返り
自分史の作成は効果的な手法の一つです。特に小学校~高校時代にまでさかのぼって振り返ることは、いわゆる「大人としての思考の制約」を受ける以前のご自身の「価値観」が形成されていることが多い可能性があります。当時の自分が「何を経験し、何を感じ、どのような気持ちになったのか……」強く記憶に残っている経験を想起して書き出していきます。
イヤなことからの逆引き
上記の自己分析の派生的な視点になりますが、自分の経験でイヤだったこと、許せなかったことが思い浮かぶかもしれません。そんな場合は、そのネガティブな記憶を逆から考えて、「本当はどうありたかったのか、自分はどうしたかったのか?」と言い換えることが可能になるかもしれません。
いずれにしても、ChatGPTに代表されるAIの発展は加速度を増す一方だと思います。そんな世の中だからこそ、自分の「ビジネスOS」を自覚的になることは重要なのではないでしょうか。
そういう意味で「ビジネスOS」とは、「自分の未来を切り拓く力」と定義できるのかもしれません。
今後もよろしくお願いいたします。