第3回 「人が足りない」を前提に考える。人材不足時代の職場づくりとは?

「最近、人が採れない」「求人を出しても応募が来ない」
――こうした声は、いまや多くの企業にとって“日常的”なものになりつつあります。この現実に、どう向き合えばよいのでしょうか?

「人が足りない」を前提に考える。人材不足時代の職場づくりとは?

「最近、人が採れない」「求人を出しても応募が来ない」
――こうした声は、いまや多くの企業にとって“日常的”なものになりつつあります。この現実に、どう向き合えばよいのでしょうか?

中小企業白書が示す「人材確保のカギ」

2025年版の中小企業白書では、「人材確保」が中小企業の最大の経営課題であると報告されています。

出典「中小企業白書2025 第1部第3章 雇用環境」(中小企業省・PDF)

注目すべきは、「人手が足りない」という現状に対して、一定の効果が見られた取り組みも報告されている点です。その中でも、以下の三つは人材の確保に好影響がある可能性が示唆されています。

1. 採用後3年間の“定着率”を高めている企業

採用できた人材がしっかりと職場に根付き、活躍しているかどうか。白書の調査では、定着率の高い企業ほど、人材確保の状況も良好な傾向が見られました。つまり、「辞めない職場」が、結果的に「人が足りる職場」に近づいているというわけです。

2. 経営者が自ら採用活動に関わっている

「社長が採用面接に出てくれた」「直接話を聞いてくれた」――
組織の雰囲気や熱意を直接伝えることができ、このような体験が応募者にとっては強い印象となり、入社の決め手になることがあります。調査でも、経営者自身が採用に関与している企業は、人材確保の状況が比較的良好でした。

3. 主体的にイノベーション活動を行っている

新しい商品開発や業務改善など、自ら変化を生み出す企業には、若手や多様な人材が引き付けられる傾向があり、イノベーションに積極的な企業は、人材の採用・定着ともに好結果を得ていると報告されています。

イノベーションというのはつかみどころのない言葉ですが、中小企業白書では“主体的なイノベーション活動”とは、「プロダクト・イノベーション」または「ビジネス・プロセス・イノベーション」の実現に向けた取り組みであるとされています。

プロダクト・イノベーション(製品・サービスの革新)

既存の商品やサービスを改良したり、まったく新しい商品を生み出したりする取り組みです。

具体例:

  • 自社の技術を生かして新製品を開発
  • 顧客ニーズに合わせてサービス内容を刷新
  • 新しい市場(例:高齢者向け、海外向け)向けの製品ラインを立ち上げる

ビジネス・プロセス・イノベーション(業務や提供方法の革新)

製造方法・業務プロセス・販売チャネルなどを見直して、効率化・高度化・差別化を図る取り組みです。

具体例:

  • ITツールを導入して、受発注や在庫管理の業務を効率化
  • 従来の対面営業に加えて、オンライン商談やEC販売を導入
  • 社内のコミュニケーション体制を見直し、意思決定を迅速化

「採用」と「定着」について

人手不足により、採用が困難を極める現在においては、「どうやって人を増やすか」ではなく、「今いる人材をどう生かすか」「どうすれば長く働いてもらえるか」に焦点が当たっています。
それは裏を返せば、採用活動そのものをより慎重かつ戦略的に行う必要があるということでもあります。大企業であれば多少の人材余剰にも耐えられるかもしれませんが、限られた人員で事業を運営する中小企業にとって、人材のミスマッチは大きな負担となるうえに、ミスマッチしてしまっている以上、「長く働いてもらう取り組み」の効果は発揮されない可能性が高いです。まず採用段階でのミスマッチを防ぐことが何より重要なのかもしれません。

ただし、このような考えは、「いい人材を採用できるか」という方針へとなりやすく、人材獲得競争が激化し、短期的・局所的にゼロサム的な競争が起きやすくなってしまいます。ゼロサム的競争では、どうしても資本力がモノをいう世界となりやすいです。そういった意味で、ゼロサム的な要素の少ない、人材育成や定着に焦点を当てるべきなのかもしれません。

担当者ひとこと

私のチームでも、常々人手不足を訴えていますが、人員補強はかなっていません。現在の人員である程度の成果が得られているせいでしょうか。がんばっているつもりですが、「もっとがんばれ」としか言われません。隣の芝は青く見えるモノで、同業他社の同じ仕事をしているメンバーは当社の倍の人数がおり、心なしかのびのび仕事をしているようにも見えます。

さて、個人的感情は置いておきます。人員補強の判断は難しいものです。私たち従業員側からしても、「人を増やすから、給料を下げるね」と言われたら、人員補強に慎重になります。また、人員を2倍にしたら、成果が3倍になるのかといわれると、自信をもって“3倍になります”と言い切ることが難しいケースの方が多いのではないでしょうか。人件費を2倍にして、売上や成果物が1.5倍では、短期的な投資判断としては成功とはいいにくいです。
かと言って、既存の人員に“無理”を強いる環境が固定化してしまうと、退職というリスクが潜む環境となってしまいます。

人材の確保や定着は、すぐに結果が出るテーマではありません。だからこそ、短期的な効率だけでなく、中長期的な視点での人材戦略が今後ますます重要になってくるのではないかと感じています。

この記事の著者

株式会社大塚商会

市場調査チーム

大塚商会 マーケティング担当の市場調査チームです。各業界の動向を調査のみならず、最新のITサービス情報の調査などを担当しています。

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