第51回 AI時代の人材像は「*型」になる

かつてビジネスの世界では、人材をI型・T型・π型といった「型」で説明する考え方が広く用いられてきました。しかし、業務の流動化やAIの進展により、こうした静的なモデルでは人材の価値を捉えきれなくなっています。本稿ではスキルを固定的に捉えるのではなく、状況に応じて伸ばし、増やし、組み替えていく「*型人材」という新しい人材像について考えます。

AI時代の人材像は「*型」になる

1. 人材を「型」で語ってきた時代

かつて人材は、以下のような「型」で語られてきました(図)。

  • I型人材:一つの専門性を深く掘り下げた人材
  • T型人材:縦の専門性に加えて横断的な知識や視野を持つ人材
  • さらにπ型人材:二つの専門性を柱に活躍する人材

これらのモデルは、それぞれの時代背景において合理的でした。組織が比較的安定し、役割や職務が明確だった時代には、「どの分野にどれだけの強みやスキルを持っているか」を示すモデルとして、機能していました。

(図)人材の「型」

2. なぜ今、そのモデルがしっくりこなくなったのか

ところが最近、これらの「型」で人材を語ろうとすると、説明しきれない場面が増えてきました。理由は、仕事の前提条件が大きく変わってきているからです。
業務は流動化し、プロジェクト単位で人が組み替えられます。また、本来の担当領域を超えた仕事が日常的に発生するようになっています。さらにAIの進展によって、これまで人の専門スキルとされてきた作業の多くが自動化されはじめています。専門性が一本か二本か、というような“静的”な切り口だけでは、人の価値を説明できなくなっているのです。

3. これからの時代の人材の捉え方

では、今の時代の人材をどう捉えればよいのか。
私が注目したのは、「何を持っているか」ではなく、「どう伸び、どう増えていくか」という視点でした。そこで頭に浮かんだのが、「*(アスタリスク)」という記号です。中心から放射状に線が伸びる、あのシンプルなフォルムです。

4. 「*」のフォルムが示す動的な人材像

「*」は、中心から放射状に線が伸びる形をしています。「固定された型」ではなく、「必要に応じて変化しうる型」と考えました。中心があり、そこから線が状況に応じて、ある線は伸びたり、また新たな線が加わったりします。この柔軟性と可変性こそ、今の時代に求められる人材像に重なります。

5. *型人材の中心にあるもの

*型人材には、必ず中心となるコアがあります。
それは専門性かもしれませんし、特定の経験、思考の軸、価値観である場合もあります。コアを起点として、状況に応じてスキルを伸ばし、必要であれば新しいスキルを増やしていく。それが*型人材の基本的な姿なのです。

6. スキルを「伸ばす」と「増やす」

ここで強調したいのは、スキルには二つの動き方がある、という点です。一つは、既存のスキルを深める(伸ばす)こと。もう一つは、新しいスキルを獲得すること。
*型人材とは、スキルの“保有量”ではなく、スキルを組み替える力を持つ人材だといえるでしょう。そして、AI時代において重要なのは、特定のスキルを持つことよりも、変化に応じてスキルを更新していけることなのかもしれません。

まとめ

人材育成や人材評価においても、「専門性の数」で人を見るだけでは不十分になってきています。
それよりも、

  • スキルを更新できるか
  • 新しい領域に伸びていけるか
  • 経験を組み替えられるか

といった視点の方が重要になってくるでしょう。
*型人材という発想は、これからの人材を考える一つのヒントになるのではないでしょうか。

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この記事の著者

ワークデザイン研究所/石山社会保険労務管理事務所

太期 健三郎

ワークデザイン研究所 代表
石山社会保険労務管理事務所 パートナー・コンサルタント

経営コンサルタント。
管理間接部門の業務改善、HRM(人材マネジメント)の二本の専門領域を持つことを強みとする。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)、株式会社ミスミ、株式会社グロービスに勤務後、2008年にワークデザイン研究所を設立。
MURCでは人事コンサルティング、ミスミではコールセンターの業務改善を行った後、三枝匡社長(当時)の直轄タスクフォースで営業改革を推進する。グロービスではコンプライアンスおよびリスクマネジメントを統括、推進。
また、2013年~2015年にはクライアント企業の食品メーカーの内部改革者として人事部長・経営改革室長を兼務する。
「患者様の声をよく聴き、丁寧に診断・治療する“中小企業のかかりつけ医”」を信条としている。
ワークデザイン研究所
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