第27回 学校、病院で「働き方改革」を阻害する要因は、業務や組織の特殊性なのか?

最近、企業だけでなく、学校や病院で「働き方改革」「業務改善」についてお話をする機会が増えています。そのたびに感じることは「働き方改革が必要だと思っているが、我々には実際には難しい、できないだろう」という「思い込み」や「あきらめ」のムードです。難しいのは“特別”な業務、組織だからなのでしょうか?

学校、病院で「働き方改革」を阻害する要因は、業務や組織の特殊性なのか?

最近、一般企業からだけでなく、学校、病院から「働き方改革」「業務改善」の問い合わせ、相談が増えています。「世の中の働き方改革の状況を聞かせてほしい」、「すぐに取り組みたいので相談したい」などさまざまですが、時間の許すかぎり訪問してお話をさせていただくようにしています。

特別な組織、仕事だから難しい……?

教育現場、医療現場へ行ってお話をうかがうと、小さな違和感のようなものを持つことが多々あります。
それは非効率な業務や過酷な勤務実態が存在し「働き方改革」の必要性を感じているものの、取り組む前から「我々には難しい」「できないだろう」という“思い込み”、もしくは“あきらめ”のようなものがあることです。

例えば、
「我々は一人ひとり個性のある生徒たちを指導する特別な仕事をしています。画一的な業務はなく、改善、効率化の余地はほとんどありません」
「医療現場では患者様の病気を治療し、命を預かっています。複雑で多様な業務があり、常に緊張感とスピードが求められます。一般企業のようなわけにはいきません」
というようなお話です。
そこには、多くの問題があっても、(自己犠牲的であっても)頑張るしかないという意識が見え隠れします。それは、高い職業意識、使命感、責任感がもたらすものなのでしょう。

いろいろとお話をお聞きした後、私は話を始めます。
「お聞きしたことは、学校に限らず多くの企業で同様に抱えている課題ですよ」
「その業務は、看護師の皆さんが行わなければいけないものですか? 他の方に任せることはできませんか?」
業界、職種の常識を持たずに、率直な意見や素朴な疑問を投げかけて自由なディスカッションを行うことが、私の最初の役割だと思っています。

業種、職種を問わず共通の課題はたくさんある

教育現場、医療現場は確かに一般企業とは異なる特性があります。業務の内容だけでなく、学校、病院、教師、看護師、医師などに関する各種法律の存在も大きいでしょう。けれども、一般企業にも各業種、業態による特性があります。外食産業、サービス業、金融業界、建設業、IT業界……、それぞれに特別な事情、特性があります。それぞれの“当たり前”や“常識”が、世の中の“特殊”、“非常識”ということは多々あります。

しかし、同時に、業種、業界、組織を問わず共通の課題もたくさんあるはずです。

一例を挙げれば

  • ムダで非効率な会議
  • 複数の人が同様の資料を作成する仕事の重複
  • 不十分な連絡や引き継ぎによる余計な仕事、ミスの発生

などです。これらは、多くの学校、病院、一般企業で発生している共通の課題です。

このように考えると、教育現場や医療現場(そして、多くの一般企業)で「働き方改革」を阻んでいるものは、そこで働く人たちの「思い込み」や「あきらめ」なのかもしれません。

教育現場、医療現場こそ「働き方改革」が必要

今、教育現場や医療現場でこそ「働き方改革」が必要なのだと思います。

学校で働く教師、医療現場で働く医師、看護師の勤務実態が各種調査で明らかになっています。
例えば、文部科学省が公表した「2016年度教員勤務実態調査」では、教諭の平均勤務時間が小学校、中学校とも1日平均11時間を超え(注1)、「過労死ライン」とされる月平均80時間以上の残業(時間外勤務)を、中学校で約6割、小学校で約3割の教諭が行っているというショッキングな結果が出ています。(注2)
看護師、医師についても、過酷な勤務実態が常態化されている結果が各種調査で表れています。

(注1) 出典:文部科学省 「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について(概要)」P.2

(1)教員の1日当たりの学内勤務時間

(注2) 調査報告書によると、「教員の1日当たりの学内勤務時間」が60時間以上の教員は、中学校で約6割、小学校では約3割となっている。
出典:文部科学省 「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について」P.14

7.1週間の総勤務時間の分布(1)教諭(主幹教諭・指導教諭を含む。)

週当たりの法定労働時間(=40時間)以上の勤務を残業(時間外勤務)とみなして計算すると、週に60時間勤務している場合には、一カ月あたりの残業時間数は、(60時間-40時間)×4週=80時間 となる。
ちなみに、実際の学内勤務時間には「持ち帰り労働時間は含まない」という但し書きが付されている。
出典:文部科学省 「教員勤務実態調査(平成28年度)の集計(速報値)について」P.9

5.1日当たりの勤務時間の時系列変化(1)(職種別:平日)

「忙しくて、働き方改革に取り組める余裕もない」という声が聞かれますが、多忙を極めるからこそ「働き方改革」の推進が必要なのではないでしょうか。「働き方改革」は忙しさを解消するためにも、優秀な人材を採用し定着させるためにも避けては通れないものであり、未来への“投資”と呼ぶべき活動なのです。

できない理由を考えるよりも、「どうやったら変えられるか?」という視点でまずは始めて欲しいのです。
組織内でディスカッションを行ったり、簡易的な実態把握を始めたり、外部の専門家を招いて話を聞いてみたりするなど、できることは多数あるはずです。(「外部の専門家を招いて~」というのは少し宣伝……というわけではありません)

教育、医療は国家の基本であり、少子高齢化が進む我が国ではその重要性は今後ますます高まっていきます。

学校や病院での「働き方改革」は、その組織内だけで実現することは容易ではありません。それは、行政と共に、受益者、利用者である生徒、保護者、患者、患者家族などを含めた国全体で考えるべき問題だと、国民の一人として私は考えます。

次回は5月17日(木)更新予定です。

働き方改革には「業務改善」が大変重要です。
注目のテーマ「働き方改革」では、企業力向上にもつながるシステムに求められることを1ページで分かりやすく解説しています。
働き方改革(ERPナビ)

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この記事の著者

ワークデザイン研究所 代表

太期 健三郎(だいご けんざぶろう)

ビジネス書作家/経営コンサルタント。
得意とする専門領域は、HRM(人材マネジメント)、人事・総務部門の業務改善。
三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、株式会社ミスミ、株式会社グロービスを経て、現職。グロービスではグループ管理本部でコンプライアンスおよびリスクマネジメントを統括し、ミスミでは全国13カ所の営業所、コールセンターの業務改善や、三枝匡社長(当時)の直轄タスクフォースで営業改革などを行う。
また、2013年~2015年にはクライアント企業であった食品メーカーの人事部長を兼務する。
神奈川県横浜市出身。著書『ビジネス思考が身につく本』(明日香出版社)。
ワークデザイン研究所

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