ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第34回 業務の標準化をカレーの調理にたとえて考えてみましょう
業務標準化の主な目的は「業務効率の改善」と「プロセス、品質の統一」とにあります。今回は、「カレーの調理」にたとえて、業務の標準化と仕事のレシピづくりについて説明します。
業務の標準化をカレーの調理にたとえて考えてみましょう
業務の標準化を「カレーの調理」にたとえて考える
業務の標準化については、この連載でも何度か説明をしてきました。「結局どういうこと?」「面倒くさそうだなあ」「本当にメリットあるの?」なんて思った方もいらっしゃるかもしれません。そこで、今回は少し切り口を変えて、業務の標準化を「カレーの調理」と「レシピの作成」にたとえて説明したいと思います。標準化の本質を身近なことで考え、理解してもらいたいと考えたからです。
さて、業務の標準化とは「誰がやっても、同じ方法、同じ時間で、同じ成果を出せるように業務を定型化すること」です。その目的は二つ、「業務効率の改善」と「品質の向上・統一」です。標準化を行うと、誰が行っても効率よく、そして一定の品質を維持することができます。
カレーの調理で考えると、誰が作っても、同じ手順、同じ時間で、同じ味のカレーになるということです。皆さんの職場では、それぞれが少しずつ異なる方法で違う味のカレーを作っていませんか? そのような状態は、標準化と対立する概念として「業務の属人化」といいます。
調理方法が属人化されているとどうなるか
業務(ここではカレーの調理)が属人化しているとどうなるでしょう。
- Aさんは調理に20分かかり、Bさんは30分かかる(仕事のスピード、時間に関する視点)
- 人によって使用する食材の種類、グレードが異なる(コストと品質に関する視点)
- Aさんは野菜をざっくり大きめに切り、Bさんは小さく切る(プロセスと品質に関する視点)
- Aさんは毎日作り、Cさんは一週間分まとめて作る(プロセスに関する視点)
- 新人のDさんは失敗して、食材やカレーを無駄にすることがある(コストに関する視点)
- 調理する人や、日によって味が異なる(品質に関する視点)
思い浮かんだ事象を列記しましたが、これらのようなことが起きます。
そこで業務の標準化の出番です。誰が作っても同じカレーができるような方法を定めます(過去のコラムでも、多くのネットでも標準化については述べられていますので、具体的な標準化の方法については今回は割愛します)。標準化を行ったら、その内容を文書化したもの、業務標準仕様書を作成します。カレーのレシピのようなものです。
仕事のレシピを作る
レシピ(recipe)は、一般的に料理の調理法を記述した文書と思われていますが、もともとは「何かを準備する手順書」を表します。ですから、業務標準仕様書とは、まさに仕事のレシピなのです。
料理のレシピは通常、「料理の名前」「調理に必要とする時間」「必要とする食材と、その量または分量」「必要とする調理器具や道具」「調理する順番にそった手順一覧」などの項目で構成されています。
これを、仕事のレシピに置き換えると「仕事のインプット(情報)」「プロセス(手順)」「アウトプット(成果)」となるでしょう。標準となる時間、品質レベル、処理するポイントなども盛り込みます。レシピでは、表記は曖昧なものではなく具体的なものにします。調理の「適宜炒める」「塩を少々」や、「中火」「強火」のような感覚的、定性的なものではなく、“できるだけ”具体的、定量的に記載します。
レシピがあれば、業務を教えることが楽になる
仕事のレシピがあれば「業務効率の改善」と「プロセス、品質の統一」が実現されますが、それに加えて大きなメリットがあります。人に仕事を教えることがとてもスムーズになります(なるのです)。教える時には、レシピを見せながら手順、ポイント、コツを説明し、実際にやらせてみた後にフォローすればよいのです。教える側も教わる側も、手間も時間もストレスも減ることでしょう。
「仕事は師匠、先輩の背中を見ながら盗むもの」なんていうのは“昭和の時代”の話です。少なくとも、令和のオフィスの話ではありませんね。
業務の標準化がとっつきにくいものではないことを理解いただけましたか? あなたの行っている仕事、部門内の仕事について「カレー作りに置き換えたらどうなるだろう?」と考えてみてください。きっと、幾つか改善アイデアが思い浮かぶはずです。
このコラムの第9回で「業務改善(その5)標準業務仕様書を作ろう」という記事を書いています。仕事のレシピ(業務標準仕様書)の作成方法を説明しています。ぜひこちらも併せてご覧ください。