情報漏洩対策 / 多層防御漏れても、使わせない ――「流出後」に備えるファイル暗号化という一手
「ウイルス対策もファイアウォールも導入している。バックアップも取っている」。そう考えている企業は少なくありません。それでも情報漏洩の報道は後を絶たず、被害は高い水準で続いています。「防ぐ」「気付く」「戻す」と多層防御を積み重ねても、最後まで手が回りにくく、見落とされやすい層があります。外部へ持ち出されたファイルそのものを守る「データの層」です。多くの企業で、ここが次に手を打つ重点の候補になります。

入り口も検知も固めた。それでも「流出後」は守られていない
多くの企業が、ウイルス対策やファイアウォールといった入り口対策を導入しています。近年はEDRの導入やバックアップに取り組む企業も増えました。これらはいずれも「侵入を防ぐ」「侵入に気付く」「業務を戻す」ための層であり、守りの土台として欠かせません。

- * 四つの層に、決まった順番はありません。 どこから手を打つべきかは、守るべきデータと、取引先から求められる水準によって変わります。ここでデータの層を取り上げるのは、多くの企業で見落とされやすいからです。
ただし、これらの対策には共通の前提があります。守る対象が自社のネットワークや機器の内側にとどまっているという前提です。ファイルがいったん外部へ渡ったり、持ち出されたりした後は、これらの層の管理は届きません。取引先へ送った設計データ、退職者が持ち出したファイル、誤って送信した書類。手元を離れた情報は、そのまま読める状態になりがちです。
入り口を高くし、検知を強め、復旧に備える。その努力を重ねても、なお残るのがこの「流出後」の空白です。多くの企業にとって、ここが多層防御で最後まで残りやすい層になっています。
なぜ従来の対策だけでは足りないのか
侵入を防ぐ対策は重要ですが、防ぎ切ることを前提にはできません。警察庁の情勢報告でも、ランサムウェアなどによる被害は高い水準で続いており、近年はデータを暗号化せずに盗み出し、公開をちらつかせて脅す手口(ノーウェアランサム)も確認されています。
データが「外に出ること」を前提に考える必要があるということです。
出典:令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(警察庁・PDF)
バックアップも同じです。バックアップは業務を元に戻すための備えであり、止まった業務の再開に有効です。しかし、いったん流出した情報そのものを取り戻したり、無効にしたりはできません。
さらに漏洩のきっかけは外部攻撃だけではありません。IPAの「情報セキュリティ10大脅威」でも、内部不正や不注意による漏洩が上位に挙げられています。委託先、退職者、操作ミスなど、内側から情報が出ていく経路も現実にあります
「漏らさない」を高めるだけでは、いずれ限界に突き当たります。だからこそ、「漏れても読めない、使わせない」状態を併せて作る発想が必要になります。
発想の転換――漏れても中身を使わせない
その答えが、ファイルそのものを暗号化して守る考え方です。ファイルが作られた瞬間から暗号化し、権限のない人には開けない、読めない状態を保ち続けます。万が一ファイルが外部へ持ち出されても、中身を見せない、使わせない。情報が漏れること自体を完全には防げなくても、漏れた情報を読み取れないものに変えてしまう発想です。
これは、近年のセキュリティで重視される「ゼロトラスト」の延長線上にあります。
ゼロトラストとは、何も信頼せず、アクセスのたびに確認するという考え方です。その確認をネットワークやIDだけでなく、ファイルという最小単位にまで広げる。守る対象を「境界」から「データ」そのものへ移すという考え方です。
入り口、検知、復旧の各層を固めたうえで、この層を最後に加える。そうして初めて、守りが「流出後」までつながります。
業務を止めないか――運用の現実
暗号化と聞くと操作が重くなる、運用が面倒になる、という不安を持つ方もいます。実際、ファイルを開くたびにパスワードを入力したり、暗号化のたびに手作業が発生したりする仕組みでは、日常業務の負担になりかねません。
近年のファイル暗号化製品は、この課題に応える設計になっています。ファイルの作成や保存の瞬間に自動で暗号化する「透過運用」により、利用者は普段と変わらない操作でファイルを扱えます。暗号化を意識せずに使えるため、社員のITの習熟度を問わず展開しやすいのが特徴です。

ただし、注意すべき点もあります。暗号化には、鍵の管理、利用する環境、社外の相手がどう閲覧するか、ネットワーク接続の有無といった前提が伴います。ここを自社の業務に合わせて設計しないと、かえって「必要なときにファイルが開けない」という事態を招きかねません。製品を選ぶことと同じくらい、自社の運用に合わせた設計と、導入後の運用を続けられる体制が重要になります。
用途で選ぶ――二つのファイル暗号化
ひとくちにファイル暗号化といっても、守りたい対象と渡し方、使わせ方によって適した製品は変わります。大塚商会では、代表的な二つの製品を用途に応じてご提案しています。どちらも国産で、政府が推奨する暗号技術(AES256など)を採用しています。
DataClasys
守るファイルの種類が多く、使わせ方まで作り込みたい場合
Officeファイルから、CADや設計データといった専門的なファイルまで、ほぼ形式を問わず自動で暗号化し、閲覧、編集、印刷などの操作権限を細かく制御できます。暗号化した後もファイル名やアイコン、拡張子は変わらないため、これまでの操作性を保てます。利用中のファイルの権限は、ファイルを回収することなく、サーバー側の設定で後から変更できます。オフラインでも利用でき、社内はもちろん、海外拠点や外注先へ設計データを安全に使わせるといった継続的な運用にも向いています。
FINAL CODE
社外に頻繁に渡し、渡した後まで追跡・制御したい場合
ファイルを暗号化して渡した後も、誰がいつどのファイルを開いたかを追跡でき、権限を後から変更したり、手元を離れたファイルをリモートで削除(無効化)したりできます。相手が専用ソフトを導入できない場合でも、ブラウザーで閲覧できる方式を用意しており、画面の透かしや、印刷・元ファイルの取り出しの制限も設定できます。取引先が多く、社外とのファイルのやり取りが頻繁な業務に向いています。
どちらが自社に合うかは、守りたいデータの種類と、社外への渡し方・使わせ方によって変わります。二つを組み合わせるという選び方もあります。
メーカーに縛られず、運用まで
セキュリティ対策は、入り口、検知、復旧、データと層ごとに選択肢があり、製品も数多く存在します。大塚商会は特定のメーカーやサービスに縛られず、お客様の使い方に合わせて適した製品を選べる立場にあります。二つのファイル暗号化製品を用途で使い分けてご提案できるのもそのためです。
そして、ファイル暗号化は導入して終わりではありません。鍵の管理や運用のルールが業務に根づいて初めて、守りとして機能します。大塚商会は、セキュリティの監視や運用のサービスも併せて手がけており、導入後の運用まで含めてお任せいただけます。地域ごとに専任の担当がつく体制のため、長くご相談いただけます。
派手な新しさよりも確かに続く守りを。5年後も今日と同じように業務が回っている。そのための備えを一緒に設計していきます。
二つの製品を用途で選ぶ
守りたいデータの種類と、社外への渡し方・使わせ方に照らして、自社に合う一手を見極めることが第一歩です。「DataClasys」と「FINAL CODE」、それぞれの得意を用途で使い分けていきましょう。