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ApaRevo 活用コラム
高齢者版アプリについて
今回は、高齢者版アプリについてご紹介します。
高齢者版アプリについて
株式会社大塚商会
首都圏ソリューショングループ
ASCアパレル・旅行SPソリューション課
小野 優太
中国では高齢者におけるデジタルデバイト、いわゆる情報の格差を解消するため、国の行政機関である工業情報化部が2021年4月に「高齢者版アプリ」のガイドラインを公表し、取り組みを進めています。このガイドラインでは、次のようなことが決められています。
- 文字サイズは大きく(18pt以上)
- 広告は少なくする
- ポップアップ広告はNG
特にポップアップ広告は意図しないタイミングで表示され、消し方が分かりづらいためNGとなっているそうです。
- * 日本でも「高齢者・障害者等配慮設計指針」といった企画があり、文字サイズについて決まりはありますが、ポップアップ広告については決まりがありません。
高齢者のスマートフォン所有率は60代で8割、70代で6割を超えています。ECサイト、ネット通販というと若年層が利用するイメージがありますが、高齢者をターゲットとしたアパレル企業がこのガイドラインを取り入れてECサイトを開設すれば、新たな顧客獲得となるのではないでしょうか。
ケンタッキーフライドチキン(KFC)が公開した高齢者版アプリ
ケンタッキーフライドチキン(KFC)が高齢者向けに開発したアプリが利用者から高い評価を得ていますので、ご紹介します。
KFCでは単にガイドラインに沿った作りにしただけではなく、高齢者の消費者行動を把握し、これを妨げている問題を解消するという方向で開発を進めたとのことです。高齢者の消費者行動を把握するために、一部の店舗とモニターに高齢者版アプリを実際に使ってもらったところ、次のような問題点・解決策が見つかったそうです。
消費者行動 | 傾向 | 問題点 | 解決策 |
---|---|---|---|
消費者行動1 | あるメニューを気に入ると、次回以降も同じメニューを注文する傾向が強い | 気に入ったメニューの表示機能がなく、再度個別に注文が必要 | アプリ下部に「過去最もよく注文しているメニュー」「最近注文したメニュー」を表示 |
消費者行動2 | 薦められたもの(キャンペーンなどのおすすめメニューや、隣の客が食べているメニューを注文する確率が高い | トップページで薦められているメニューを注文したくても、メニュー一覧からそのメニューを選ぶのが難しい | 「おすすめメニュー」で一括注文できるように変更 |
消費者行動3 | 割引クーポンに敏感 | 割引クーポンは取得するものの、購入時にクーポンの適用方法が分からない | クーポンを取得したら、注文時に自動的にクーポンが適用され割引されるように変更 |
アプリは多機能であるがゆえに、高齢者にはそれが障害となってしまい途中で嫌になってやめてしまいます。そのため、操作を簡素化・自動化し、障害となる問題点を解決することでアプリの使用率を向上させたそうです。こういった点にも注目してECサイト開発をするとよいかもしれません。
最後に
面白いのが、20代の若者の間でもこの高齢者版アプリを使うことが広がり始めているそうです。その理由として大きいのが「ポップアップ広告が表示されないため」とのこと。多くのアプリが起動した瞬間にポップアップ広告が表示されます。悪質なものでは表示されてから数秒間は消せない仕様になっていて、トップ画面に戻れないケースもあるそうです。高齢者版アプリでは、ガイドラインによってポップアップ広告が禁止されているため、操作を邪魔することはありません。
また、アイコンや文字が大きくなるため、重要度の低い情報は削除され、必要なものだけが表示され使いやすくなっています。この高齢者向けに考慮されたアプリは、「煩わしくなくて便利」というメリットに気づき、最近では若者たちの間でも使い始める人が増えているそうです。
[SE]2023年4月18日