連載開始10周年を迎え、100記事を超える過去のコラムから筆者厳選の10記事と、書き下ろしのコラムをまとめて特別冊子をご用意しました。
本冊子の内容がヒントとなり、ビジネスにおける悩みや課題解決の一助になれば幸甚です。
第158回 「うちは特別だから」と話す会社の話
人事や組織の改革を進めるとき、「うちは特別」と言って一般論や他社事例を拒む会社があります。どの会社も特別であることは確かですが、一般論には原理原則、セオリーとしての側面もあり、安易に否定しない姿勢が必要です。
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「うちは特別だから」と話す会社の話
いろいろな会社に対して人事や組織開発の支援をしていると、主に社長や役員、管理職の方々からときどき言われることがあります。それは「うちの会社、業界、職種は“特別だから”」という話です。
会社が100社あれば、100通りの特徴がある
それぞれの会社が特別であるのはもっともな話です。会社の特徴というのは100社あれば100通り、業界も仕事内容も顧客の状況もみんな違っていて、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。そのため、どんな会社もみんな特別であることは間違いありません。似ている会社はあったとしても、全く同じではありません。仮に「特別でない会社」があるとすれば、それは「何一つ特徴がない会社」ということになりますが、そんな会社はおそらく存在しないでしょう。中には謙遜のニュアンスを含んで、「うちは特徴がない会社」と言われることもあります。ただし、それは商品やサービスなど、ある一面だけで言っている場合が少なくありません。
良いことも良くないことも、何かしらの特徴はどんな会社にもあり、社風も組織の成り立ちもみんな違いますから、「特別」でない会社はありません。同じ会社のチェーン店でも、お店によって違いがあるくらいですから、そういう意味では自社を「うちは“特別だから”」と話すのは確かにそのとおりだと思います。
ただ、特に人事や組織に関する話の中で、この「特別だから」という言葉が出てくる場合、そのニュアンスには、例えば、一般論や他社事例などで示されたものであっても、自分たちの会社では受け入れられない、または受け入れたくないという気持ちが含まれていることがあります。本音では改革、変革に前向きではない心理の表れといえるでしょう。「うちの仕事は特別」「うちの業界は特別」「うちの会社は特別」と言い、だから「その事例は当てはまらない」「その改革はできない」「その制度は使えない」「うちには合わない」となるわけです。
確かに一般論や他社事例をうのみにしてもうまくいくわけではなく、「合わない」「当てはまらない」が正しいときは多々あります。他の会社でうまくいった、効果があったといってまねをして、結果的に失敗した会社の例は私もたくさん見てきました。
特に人事や組織作りの中での一般論には、「これが絶対」というものはありませんから、他社の成功事例をそのまま持ちこんでも同じような成果を得られるとは限りません。
一般論や事例は「原理原則」や「セオリー」と捉えることができる
その一方で、人事・組織の分野でいわれる一般論や事例の多くは、「必ずうまくいくとは限らないが、7割くらいの確率で効果が見込まれる」というものです。一種の「原理原則」や「セオリー(定石)」と捉えて良いかもしれません。
例えば、スポーツの世界であれば、人によって体格も体力も性格も違います。それでも、速く走ろう、遠くまで投げよう、高く跳ぼうなどと思ったとき、そのやり方には一定の原理原則があります。どんな競技でも「こうやった方がおおむね効率が良い」「目標に到達できる確率が高い」という体の使い方やトレーニング方法のセオリーがあり、それらは競技のルールが変わったり、道具が進化したりする中で当然変化していきます。しかし、その時点におけるより良い方法、すなわち「原理原則」は常に存在するといえるでしょう。
同じように、人事や組織作りの中にもこの「原理原則」「セオリー」があります。環境は違っていても、その考え方に沿った施策をとれば良い方向になる確率が高く、マイナスに働くリスクが少ないといわれるものです。「原理原則」や「セオリー」には、業界や業種、職種にかかわらず当てはまる普遍的なものが多数あります。
例えば、どんな業態、業種でも働いているのは人間です。認められて褒められればうれしいですし、その方がやる気が出ます。反対に理不尽な強制や不公平な扱いをされれば、やる気は失われてしまうでしょう。認められると悲しい人や理不尽な扱いがうれしい人は、どんな特別な会社であってもいないはずです。
「原理原則」「セオリー」の認識は人事・組織改革の早道になり得る
このように特別ではない会社は存在しない一方で、「原理原則」が当てはまらない会社もまずありません。
一般論といわれるものは、当てはまるケースが幅広いなど、それが一般化された理由があります。「自分たちは特別だ」と言ってそこから目をそむけるのは、決して好ましいことではありません。
一般論を「合わない」「できない」と安易に否定せず、まずは「原理原則」「セオリー」として認識して、そこから自社なりにアレンジしていくことが、人事・組織の改革にとっては早道だと思います。
繰り返しになりますが、「特別でない会社」は存在しません。
次回は11月24日(火)の更新予定です。
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