第154回 「管理職になりたくない」の気持ちは変えられるのかという話

さまざまな調査結果によれば、「管理職にはなりたくない」という人が増えているようです。こう思ってしまう理由や、この気持ちを緩和したり、前向きに捉えたり、最終的に解決できる方法があるのかを考えてみました。

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「管理職になりたくない」の気持ちは変えられるのかという話

各種調査によれば、「管理職以上に昇進したいとは思わない」という人が増えているといいます。その理由としては、「業務量が増えて長時間労働になる」「責任が重くなる」「部下を管理・指導する自信がない」などが挙げられています。
結局は「大変そうな割にメリットが少ない」など、仕事内容の負担が割に合わないと思われている訳です。

また、特に女性の場合では、「普通に働きたい」「家族との時間が大事」と考える人の割合が高く、将来の管理職が期待される「総合職」ではなく、あえて「一般職」を選ぶ人が増えているという話もあります。
2025年6月に改正された「女性活躍推進法」では、中堅中小企業においても男女間の賃金差異と合わせて「女性管理職比率」の情報公表が義務化されるなど、これを促進しようとする施策が進められていますが、実際の当事者たちの心理はこれに逆行しているところが見受けられます。
女性管理職の場合、仕事とプライベートとのバランスが取れた事例モデルがまだまだ少なく、「バリキャリ(バリバリ働くキャリアウーマン)でないと務まらない」などと見えてしまうことも多いのでしょう。

管理職は敬遠されがちだが、実際に担うと印象が変わることもある

私が実際にいろいろな会社を見ていて感じるのは、「楽しそうに仕事をしている管理職」「やりがいを感じていそうな管理職」を見かける機会が意外に少ないことです。労働時間が長く、仕事量は多く、上司と部下との間に挟まり、みんな何となく疲れた顔をしています。「仕事はそもそも楽しくないもの」という人もいますが、せめてもう少し楽しそうな様子があっても良いのにと思うことがあります。部下たちはそんな管理職に対して同情的であり、仕事の中では協力的でもありますが、その姿を見ていて同じ立場になりたいとはなかなか思えないのでしょう。
この状況を変える方法があるのかを考えてみると、一番良いのは「管理職がみんなやりがいを持って楽しく働いている姿を見せること」となりますが、これはあまり現実的とは思えません。

ある調査データですが、上司などに説得されて「やむなく管理職になった人」は、男女合わせて2割から3割ほどいるそうです。そして、管理職としてリーダーの立場になった後に「リーダーになって良かったと思う人」は7割前後と思いのほか高率だったそうです。
リーダーであれば仕事に関する自分の裁量が増えるため、実際になってみると「意外に悪くない」と感じているようです。ここからすれば、「試しにやらせてみる」「嫌がっても経験させてみる」というのは一つの方法になりそうです。

私自身の個人的な経験として、出世欲などは全くありませんでしたが、社歴を重ねる中で徐々に責任が増え、管理職を任されるようになりました。特に拒絶する理由もなかったため、自分なりに役割をこなしていくうちに自分の裁量で決められることが増えていくのは、組織の中で仕事をするうえでは悪いことではないと思うようになりました。

また、なりたくない理由としてもう一つ考えられるのは、組織の形や運営方法に関することです。特に最近の若い世代は、お互いの関係があまり階層化されていないフラットな集団の中で過ごしてきており、良くも悪くも合議制などの形で、できるだけみんなの合意のもとに物事を進めようとします。

リーダー的な存在はいるものの1人で前面に立つというよりは、みんなの意見のまとめ役であったり調整役であったりします。チームの中心的な存在の1人ではありますが、リーダーシップの形は人それぞれであり、責任や負担を一手に引き受けるようなものではありません。

自分たちが経験してきたリーダー像と合致する管理職であれば、「やりたくない」という気持ちは少し薄まるのではないでしょうか。
実際の現場の取り組みとしても、組織階層をフラットにして上下関係を緩やかにしたり、一方的な指示命令を排除したり、組織の意思決定に社員を参加させたりする組織運営を行う会社が出てきています。こうした考え方を取り入れることも一つの方法かもしれません。

どうすれば管理職を「やりたくない」という気持ちは薄まるのか

私がいろいろな会社の管理職の仕事ぶりを見ていて、正直いって自分もあまりやりたいと思えないことが多々あります。負担の割に権限がなかったり、一方的に責任を負わせたり、サポートなしの丸投げが多かったりする様子を見かけることがあります。「残業代を払わなくてよいから使い倒す」という発想の会社が今でもあります。

私の周りには経営者や会社役員、自営業者など、自分で組織を回している人たちが大勢いますが、ほとんどの人が仕事を介した夢や希望、やりたいことを明確に語ります。苦労がはっきり見える半面、同じようにしてみたい、まねしたいと思うこともたくさんあります。
企業の中の管理職も部下にとってそんな存在になることが一番なのかもしれませんが、今の環境のままでは少し難しそうに感じます。大きすぎる負担を減らし、責任に見合った裁量や権限をきちんと与えるなど、少しでも環境を変えていくことが必要ではないでしょうか。

次回は7月28日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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