第156回 経営課題の会話が盛り上がれば自然と課題は聞き出せる
潜在課題に対する営業を進めている営業組織が増えています。潜在課題を聞き出すためにヒアリングシナリオを考えて顧客を訪問。しかし、シナリオどおりに進めようとしても課題を聞き出せない。聞き出すためのシナリオも必要ですが、最も大切なことは会話を盛り上げること。今回は会話を盛り上げながら課題を聞き出す方法をご紹介します。
経営課題の会話が盛り上がれば自然と課題は聞き出せる
お客さんの中にはさまざまな課題があります。
- 既に予算をとって解決しようとしている課題(顕在課題)
- 優先順位が低いため検討していない課題(優先順位が低い課題)
- 課題があることはなんとなく分かっているけど、明確でないため検討していない課題(明確でない課題)
- 課題があることに気付いていない課題(気付いていない課題)
「優先順位が低い課題」も「明確でない課題」も「気付いていない課題」も、今は検討していないけれど、検討する可能性のある潜在課題です。
なんとか潜在課題を聞き出して新規案件を獲得したい。
しかし、お客さんが検討していない潜在課題を聞き出すことは難しい。
だって、お客さん自身が気付いていないのですから……
経営課題を聞き出すためのシナリオを考えて訪問したが……
広告会社セントエージェントの営業担当Aさんが、設備機器メーカーのリーディング技研を訪問しました。
アポイントを獲得するときに聞いたお客さんの情報は、
- 新製品の販売で新規取引先の獲得を進めようとプロモーションに力を入れている
- ホームページや展示会で紹介し、販売代理店の提案を促進していくため今のところ問題ない
Aさんは訪問前にリーディング技研のホームページで新製品を見て考えました。
- 新製品は今まで人が対応していた加工や組み立て作業を自動で行える生産設備
- 高機能で複雑なため、販売代理店がエンドユーザーに説明するのは難しいという課題があるのでは
- 販売代理店の説明をサポートするために新製品のWebサイトが必要なのでは
そして、上司から「潜在課題は直接聞くのではなく、経営課題の会話の中で誘導して聞き出すんだよ」とアドバイスされたことを思い出し、誘導のためのシナリオを考えました。
はじめに、新製品の販売で新規取引先を獲得するっていう経営課題の会話から、販売代理店の提案を促進する方向へ誘導しよう。そして、販売代理店がエンドユーザーに説明するのは難しいという課題を聞き出そう。
そして、Aさんはリーディング技研を訪問しました。
Aさん
「御社では新製品の販売で新規取引先の獲得を進めているみたいですね」
お客さん
「そうなんです、製造業では生産設備の自動化を進めていて需要が拡大していますので」
「工場の人手不足が深刻になっているみたいで」
Aさん
「そうなんですか」
「販売代理店の提案を促進しているようですが、ご状況はいかがですか?」
お客さん
「まだスタートして3カ月、これからですよ」
Aさん
「そうですか」
「今までと違って高機能で複雑な製品ですので、販売代理店がエンドユーザーに説明するのは難しいのではと思ったのですが」
お客さん
「販売促進部と営業部とが連携してパンフレットと製品説明資料を作成していますので、問題ないです」
Aさん
「そうなんですね」
「販売代理店が説明しやすいように、新製品のWebサイトも作った方が良いと思うんですけど」
お客さん
「まずは、パンフレットと製品説明資料で説明できるように進めていますので」
Aさん
「そうですか、でもWebサイトもあった方が……」
お客さん
「必要ないです」
Aさんは、「販売代理店がエンドユーザーに説明するのは難しい」「新製品のWebサイトが必要」という潜在課題を聞き出すことができませんでした。あらかじめ考えたという課題を聞き出すことができず、「必要ない」と断られてしまいました。
しかし、リーディング技研では3カ月後に新製品のWebサイトを作っていました。
リーディング技研の販売促進部、営業部で話し合った結果、
- ソフトウェアの説明に加え、費用対効果の提案も必要になる
- 販売代理店は製品紹介営業ばかりで費用対効果の提案はできない
- 販売代理店の提案をサポートするための費用対効果の事例や製品説明のWebサイトが必要
「販売代理店がエンドユーザーに説明するのは難しい」という潜在課題があったのです。
なぜ、Aさんは潜在課題を聞き出せなかったのでしょうか?
経営課題や現場の状況を想像して考えを深めてもらうこと
Aさんは、上司のアドバイスどおりに経営課題の会話から誘導して課題を聞き出そうとしていました。
「新製品の販売で新規取引先の獲得を進めているみたいですね」
「販売代理店の提案を促進しているようですが、ご状況はいかがですか?」
「販売代理店がエンドユーザーに説明するのは難しいのではと思ったのですが」
「新製品のWebサイトも作った方が良いと思うんですけど」
ただ、Aさんは誘導しようとするばかりでお客さんの話に乗っていません。
お客さんの「需要が拡大しているんですよ」「工場の人手不足が深刻になっているみたいで」に対して……
「そうなんですか」の一言で終えて、誘導するために質問「販売代理店の提案を促進しているようですが、ご状況はいかがですか?」
お客さんの「まだスタートして3カ月、これからですよ」に対して……
「そうですか」の一言で終えて、誘導するために質問「販売代理店がエンドユーザーに説明するのは難しいのではと思ったのですが」
潜在課題とは、優先順位が低い課題、明確でない課題、気付いていない課題です。
この潜在課題を聞き出すためには、お客さんに考えてもらうことが必要です。
お客さんに経営課題(新製品の販売戦略など)や現場の状況(販売代理店の状況)について想像して、考えを深めてもらうことで……
- 優先順位が低いとされている課題の重要性に気付き、優先度が高いと理解してもらう
- 明確ではない課題を具体化し、明確に理解してもらう
- これまで気付かれていなかった課題に気付いて、理解してもらう
そのために必要なことは、経営課題や現場の状況など、それぞれに対してじっくり会話すること、会話を盛り上げること。
Aさんは、会話を盛り上げることよりも、経営課題から現場の状況(販売代理店の状況)、課題(販売代理店がエンドユーザーに説明するのは難しい)と誘導することばかり考えて会話を進めていたのです。
そのため、お客さんはAさんの質問に答えるだけになり、想像したり、考えたりすることがなかったのです。
その結果、お客さんは気付いていない課題に気付くことができず、Aさんはお客さんから潜在課題を聞き出すことができなかったのです。
課題の背景の会話が盛り上がれば、自然と聞き出すことができる
“会話は盛り上がれば具体化し、自然と落ちていく”
会話は盛り上がると自然と具体的な会話に落ちていくものです。
経営課題の会話が盛り上がれば、経営課題に対する具体的な現場の状況の会話へ落ちていく。
現場の状況の会話が盛り上がれば、現場の状況に対する具体的な課題の会話へ落ちていく。
課題を聞き出すときに最も大切なことは誘導することよりも、課題の背景(課題や現場の状況)の会話を盛り上げることです。
背景の会話が盛り上がれば、誘導しようとしなくても、自然と課題の会話に落ちていき聞き出すことができるのです。
多くの営業現場を見ていると、お客さんの課題を聞き出すときに下の二つのパターンが見受けられます。
- 「何か課題はありますか?」「……のような課題はありませんか?」と直接的に質問して課題を聞き出そうとする人
- シナリオを考えて、聞き出すこと、誘導することばかり一生懸命になり、その結果、最も大切な会話を盛り上げることが欠けてしまう人
お客さんの潜在課題を聞き出すためには、無理に誘導しようとせず、無理に課題を聞き出そうとせずに、経営課題の会話を盛り上げましょう。潜在課題を聞き出すためには、聞き出すためのシナリオは必要です。しかし、最も大切なことは、お客さんと経営課題の会話を楽しむことです。
経営課題を楽しもうとすると盛り上がり、自然と課題を聞き出すことができるのです。
経営課題の会話を盛り上げて課題を聞き出す方法……詳しくは、
「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス
次回は7月21日(火)更新予定です。
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