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第118回 営業の成長に大切な夢……憧れと不満が夢を持たせる
多くの会社で課題解決型営業や戦略営業、組織的な営業へと変革が求められています。この変革には個人の自主的な成長が不可欠です。しかし、現実は慣れた今までのやり方ばかりで変わらない。与えられたミッションばかりで受け身的。今回は営業社員の成長にとって大切な将来の夢についてご紹介します。
第118回 営業の成長に大切な夢……憧れと不満が夢を持たせる
今日の営業はビジネスにおける総合的な仕事。
コミュニケーション、人間関係、提案書や資料の作成、プレゼンテーション、交渉、情報収集、課題、ニーズの検討、提案や企画の検討、戦略の立案、計画策定や管理、関係者の調整……。
そして、個人の力で行動し成果を上げる仕事。
個人の総合的な力で成果を上げる仕事であり、個人の成長で変革や発展を実現する仕事です。
しかし、成長しない、変わらない……。
みなさんの会社ではいかがでしょうか?
営業の成長には夢が必要
営業で自主的な行動と成長を促すためには夢が必要です。
目指すものが売上目標や評価ばかりだと将来ではなく今にこだわる……今の状況、今のやり方、今の力。
しかし、営業は今でなく将来にこだわると可能性が広がる仕事なのです。
営業というビジネスにおける総合的な仕事をがんばり、総合的な力を身につけると、将来いろんなことができる。
この将来の可能性が、営業をがんばり成長させるための価値になります。
将来の可能性に向けてがんばるためには、将来に実現したい夢が必要です。
みなさんの会社では夢を考えさせていますか?
この質問をすると、こう答える会社が多い。
「年に1回、キャリアプランを考えさせています」
「10年後、5年後の自分の姿と達成するための計画を作らせています」
しかし、キャリアプランを作らせても、夢を持って前向きに取り組んでいる人は少ない。
実際に営業社員が夢を持って、前向きにがんばっているか確認してみてください。
よくあるキャリア相談のシーン
営業担当者Aさんが上司Bさんにキャリアプランの相談をしていました。
営業担当者Aさん
「営業活動で忙しいのに……」
「これ、何を書けばいいんですか?」
上司Bさん
「10年後にどうなっていたいかを考えるんだよ」
「そして10年後から逆算して、5年後について考えて書けばいいんだよ」
Aさん
「10年後とか考えていないし」
Bさん
「やりたいこととかないの? 考えてみろよ」
Aさん
「うちの会社でのことじゃないとだめですよね?」
「家を買いたいとか」
Bさん
「仕事と関係ないじゃん」
「関係ないとうちの会社でのキャリアプランにならないじゃん」
Aさん
「そもそも10年後にこの会社にいるか分からないですし」
「そうしたら売上目標を達成することとかになりますよ」
Bさん
「それじゃだめだよな、キャリアプランにならない」
「後輩を指導できる立場になりたいとか、マネジメントをしたいとか」
Aさん
「……」
Bさん
「人事部に提出しないといけないんだから、何か書けよ」
Aさん
「そうしたらマネジメントはやりたくないので、後輩を指導できる立場になりたいって書いておきます」
「提出しないといけないからと無理やり考えたキャリアプラン」
「マネジメントはやりたくないので後輩を指導」
とても夢になるとは思えないし、がんばって成長するとも思えない……。
夢につながるきっかけは小さい憧れと不満
実は、AさんとBさんの会話の中に夢につながるきっかけが1カ所あったのです。
どこでしょう? 探してみてください。
夢は他人に与えられるものでも、強制されるものでも、無理やり考えて生まれるものでもありません。
何かのきっかけから生まれる自由で自発的で自然発生的なものです。
このきっかけになるものが漠然とした小さい憧れと不満。
普段の生活や仕事の中には、小さい憧れや不満がたくさんあります。
普段の生活や仕事の中には、夢のきっかけになるものがたくさんあるのです。
しかし、現実は単なる憧れや不満で終わり夢につながらない……。
Aさんの会話に「家を買いたい」という言葉がありました。
これはAさんにとって漠然とした小さい憧れでした。
この漠然とした小さい憧れは強制されたのではなく、自然と自発的に出てきた言葉です。
この漠然とした小さい憧れが夢のきっかけ。
「家を買いたい」という漠然とした小さい憧れを具体化していくと夢に変わっていきます。
「どのような家?」「どのような生活?」「どうしたら実現できる?」「どのような力があれば実現できる?」
上司のBさんは「仕事と関係ないじゃん」とAさんの夢のきっかけになる漠然とした小さい憧れを流してしまいました。
この漠然とした小さい憧れを大切にし、こだわらせていたら夢へと変わっていったかもしれません。
そして、もう一つのきっかけになるものが現状に対する不満。
不満の裏には変化、発展への思いが隠されています。
例えば「うちの営業部は誰も企画力について教えてくれない」という不満は、「企画力について教える営業部に変わってほしい」「企画力を身につけたい」と現状を変えたい、発展させたいという思いが隠されています。
この不満の裏にある変化、発展への思いも夢のきっかけになるものです。
現状の不満に対し「周りが悪い」「会社が悪い」で終わらせず、「自分だったら」と自責、自分事に切り替えさせることで夢へと変わっていくのです。
しかし、現実は……
今の売上、今のしがらみ、与えられたミッションや仕事ばかりで、漠然とした小さい憧れにこだわらせていない。
また、現状の不満に対しても、解消することやなだめることばかりでこだわらせていない。
そして、形式的、強制的にキャリアプランを考えさせている……。
今日の営業はビジネスにおける総合的な仕事。
この総合的な仕事をがんばっていれば、さまざまな力が身につきます。
- 部下を指導する力も組織をまとめる力も
- マーケティングやプロモーションの力も
- 戦略や計画を考える力も
- 新たなビジネスを企画し運営する力も
- 起業する力も経営する力も
そして、営業は苦労が多く簡単には成果に結びつかない仕事。
また、成長とは短期的なものではなく長期的なものです。
- さまざまな力を身につけることができる仕事
- 苦労が多く簡単には成果に結びつかない仕事
この二つの特性を持つ仕事に対し、長期的なものである成長に向け努力させるために必要なことは?
今の成果でも評価でもなく、また形式的、強制的に10年後、5年後を考えさせることでもありません。
今、がんばっていれば将来に実現できるかもしれないという夢です。
この将来に実現できるかもしれない夢に向かって努力させることで、コミュニケーション力や提案力、戦略力が身につくのです。
そして、この身につけた力が売上を上げるのです。
また、夢によって意識が前向きになることで、積極的なチャレンジを促し、営業を変革させることができるのです。
多くの会社で営業の変革が必要になっています。
そして、営業は個人の意識や力に左右される仕事です。
個人の前向きな意識や成長した力によって、営業の変革や発展も進み、また売上も上がる仕事です。
戦略や戦術、計画や管理、働く環境なども重要ですが、営業で最も大切なものは個人の成長です。
営業社員が前向きにがんばり、成長し、力をつけるために「夢」にこだわりましょう。
そして、漠然とした小さい憧れや不満を大切にしましょう。
夢を持つための「夢発生の7つの要件」は……
次回は3月20日(月)更新予定です。
今月のクイズ(営業のクイズ)
提案
あなたはモバイルシステムの営業です。
お客さんの食品メーカーを訪問したら、今後のためにと提案の依頼をもらいました。
……どんな提案書を作る?
お知らせ
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課題解決型営業、戦略営業に関するセミナーを開催しています。
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2月20日(月)「新規開拓営業セミナー」【Web】
新規開拓、アプローチ、潜在ニーズ発掘、新規商談・提案・案件獲得、計画・体制
3月3日(金)「営業戦略セミナー」【Web】
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3月8日(水)「営業マネジメントセミナー」【Web】
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