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第94回 受注・売上・回収、営業にとって一番大切なものは?
「営業の仕事は売上で回収は関係ない」と思っていませんか? 「回収が遅れると何が問題?」と聞いてみますと、多くの営業担当者がよく分かっていません。だから重要性も分からない。営業部では売上については一生懸命に教えて指導していますが、回収についてはほとんど教えていません。今回は営業活動のGoalである回収や支払いサイトについてお話しします。
受注・売上・回収、営業にとって一番大切なものは?
アプローチ、商品紹介、提案、価格や条件を交渉して受注、納品して売上、そしてお金を回収……。
営業活動ではさまざまな仕事が発生します。
ここで、皆さんに問題です。
受注、売上、回収……
この三つの中で営業にとって一番大切なものはどれでしょう?
営業担当者に聞いてみますと
- 「営業の仕事は受注や売上を獲得すること、回収は財務部の仕事だから関係ない」
- 「回収は評価とは関係ない、だから受注と売上が大切」
- 「お金を支払ってもらえば遅れても問題ない、だから未回収案件があったら対応すればよい」
受注や売上ばかりで、回収や支払いサイトを気にしていない営業担当者は実に多い……。
しかし、
- 受注とは、売る(商品を納品する)権利です。
- 売上とは、商品を納品してお金をもらう権利です。
- 回収とは、お金をもらうことです。
つまり、受注や売上の獲得は、回収の権利(お金をもらう権利)を得たということに過ぎません。
回収できなければ、権利である受注や売上に何の意味もありません。
それ以上に営業活動にかかった費用、原材料などの費用を損したことになります。
つまり、皆さんの受注や売上を上げるためだけの仕事は、やらない方が良かったということです。
お金をもらえる(回収できる)から、投資もできますし、皆さんの給料も支払えるのです。
売上が上がっても、回収できなければ給料も支払えません。
一番大切なものは、回収なのです。
回収が遅れたらどうなる?
少し回収や支払いサイトについて考えてみましょう。
皆さんは中小企業の経営者です。
1月に頑張って800万円の売上を上げました。2月末に支払ってもらう予定です。
そして、1月末時点では1,000万円の現金がありました。
2月に入り……
- 2月15日に給与の支払いが、400万円→残600万円
- 2月25日に家賃や光熱費の支払いが、100万円→残500万円
- 同じく、2月25日に原材料の支払いが、300万円→残200万円
- 2月末に、売上の入金(回収)が、800万円→残1,000万円
という予定でしたが、2月末にお客さんが支払ってくれません。
お客さんに問い合わせてみますと
「1月末に納品された商品に不良品が混じっていた。これじゃお金を支払えないよ」
その後、お客さんと交渉し一カ月遅れましたが、3月末に支払ってもらえることになりました。
すると、営業部長は「話がついて良かったな。今月も頑張って売上を上げよう」
ということで、2月末の現金は200万円。
そして3月……
3月15日に400万円の給料
……しかし、現金は200万円しかない。
皆さんが経営者だったらどうしますか?
この問題の解決方法は二つしか方法はありません。
- 一つ目は、給料の支払いを一カ月遅らせる。
- 二つ目は、お金を借りる……借りたら金利が発生する。
3月末に支払ってもらえることになり、営業部長は「話がついて良かった」と言っていますが、入金が遅れるということは会社や社員にとって大きな損害なのです。
自分の給料が一カ月遅れるということになるのですから。
「回収は早く、支払いは遅く」が鉄則
逆にお金を早く支払ってもらえたらどうなるでしょうか?
ちゃんと2月末に支払ってもらうことができ、そして、3月末に支払ってもらう予定の500万円も交渉して2月末に支払ってもらうことができました。
その結果、2月末の現金は、
1,000万円+500万円=残1,500万円
3月分の支払いは
給与400万円、家賃や光熱費100万円、原材料の支払い300万円
……全部支払っても700万円も残っています。
すると……
4月に掲載しようと思っていた広告を3月に掲載することができる。
新入社員を一カ月早く入社させることができる。
つまり、お金を早く使うことができます。
回収は「資金繰りに影響する」と漠然ととらえている人が多いのですが……、
回収が遅くなると、必要なお金を支払えなくなります。または遅れてしまいます。
皆さんが使っている経費や給料もです。
逆に、回収が早くなりますと、お金を早く使うことができます。つまり会社の発展や成長に必要な投資を早くできるようになるのです。
これが、キャッシュフロー(お金の流れ)が良くなるということです。
また、売掛金の貸し倒れリスクは、支払いサイトに大きく影響されます。
売掛金の貸し倒れとは、商品を納品しお金を支払ってもらう権利が発生した後に回収できないこと。
商品を納品してから回収までの期間(支払いサイト)が長くなれば、貸し倒れのリスクも大きくなります。
回収までの期間が長くなると、回収するまでにトラブルが発生する可能性が高くなります。
納品した商品に対するクレーム、顧客との認識の不一致によるトラブル、顧客の業績や経営状態の悪化……。
回収してしまえば、トラブルによる貸し倒れの可能性(お金をもらえない可能性)はなくなります。
ビジネスにおいて「回収は早く、支払いは遅く」は鉄則です。
新規事業の投資や働く環境の整備、経費や給料……。
支払いサイトや回収遅延、未回収で皆さん自身も損しているかもしれません。
営業は、売上を上げるためでなく、お金をもらうために働いているのです。
受注や売上の獲得は、回収の権利(お金をもらう権利)を得たということに過ぎません。
支払いサイトと回収にこだわりましょう。
支払いサイトを交渉する方法は……
「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス
次回は3月15日(月)更新予定です。
今月のクイズ(営業のクイズ)
コミュニケーション
これから食品メーカーの商品企画部長と面談。
何を提案したら良いか分からないと上司に相談したら、まずは経営課題について聞いてくるように指導された。
……どうやって経営課題を聞く?
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- * セントリーディングHP>News>リリース情報 2020年5月18日