第158回 販売代理店への提案は商品の強みや実績よりも相乗効果とメリットを具体的に

販売代理店を獲得するため、また積極的に商品を紹介してもらうために、多くの営業担当者が一生懸命に資料を作成して提案。その提案資料を見ると、商品の強みや実績のアピールばかり……。販売代理店への提案では、販売代理店の視点による相乗効果とメリットが大切。今回は販売代理店への提案を成功させる方法についてご紹介します。

販売代理店への提案は商品の強みや実績よりも相乗効果とメリットを具体的に

より多くのお客さんに提案して売上を上げるために、販売代理店への営業を進めている……

しかし、
多くの会社に訪問しても、なかなか販売代理店になってもらえない。
やっと販売代理店になってもらっても、なかなか提案してくれない、売ってくれない。

自分の会社の営業担当者に提案してもらう、売ってもらうのと異なり、他の会社や他の会社の人に提案してもらう、売ってもらうという販売代理店営業は難しいものです。

提案書を作成して販売代理店に訪問したが

業務用カメラメーカーのセントテクノロジーでは、新商品の高性能カメラをリリースしました。
競合商品と比べて性能も優れているし価格も安いので、多くのお客さんに提案して売上を上げたい。
そこで、販売代理店の開拓を進めていました。

ある日、営業担当Aさんがシステム会社のリーディングシステムに訪問することになりました。
リーディングシステムはシステム開発で製造業と取引しているため、高性能カメラを紹介してもらえるかもしれない……と期待して訪問前に提案書を作成。

Aさんが作成した提案書

1~2ページ:会社の紹介
  • 会社概要、組織体制、業務用カメラ専業で設立20年
3ページ:会社の実績
  • 大手企業中心に1,000社に納入、納入企業の一覧
4ページ:カメラの市場背景
  • 自動化やAIの広がりと共に製造業で高性能カメラの需要が拡大している
5~8ページ:新商品の高性能カメラの技術と性能
  • 高性能カメラのセンサーや光学レンズの仕組みや技術
  • この仕組みや技術により解像度や感度などの性能が優れている
9~10ページ:競合商品との比較
  • 主要な競合メーカー3社の商品との比較表
  • 競合商品よりも性能が高くて価格が安い
11ページ:新商品の導入事例
  • 製造業での不良品の画像検知、建設業界での外壁や橋梁(きょうりょう)の異常検知の導入実績とその事例
12ページ:販売価格と販売したときの手数料
  • 高性能カメラの販売単価、販売時の手数料率と販売台数別の手数料金額

そして、リーディングシステムを訪問して提案しました。

Aさんは一通り提案書を説明した後……
「製造業の品質管理ニーズで売れると思うんです」
「いかがですか?」

リーディングシステムの営業部長
「そうですね、うちも製造業中心に営業しているんですが、画像検知に興味を持つお客さんは多いですよ」

Aさん
「製造業のお客さんが多いんですか」
「うちの新商品は製造業で実績がありますので、売れると思います。ぜひご検討ください」

リーディングシステムの営業部長
「営業部で話してみるよ」

2週間後にリーディングシステムの営業部長に電話すると……

Aさん
「営業部でのご検討はいかがでした?」

リーディングシステムの営業部長
「製造業でニーズがあるとは思うんだけど、今は工場向け自動化システムの提案を進めているので……」
「生産設備の振動や温度で異常を自動で検知するシステムを提案しているんです」

Aさん
「そうなんですか……」
「でも、自動化システムの提案を進めているんでしたら、高性能カメラは売りやすいと思うんですが」

リーディングシステムの営業部長
「うちの営業にとって高性能カメラの紹介は難しいんですよ」
「カメラの知識をつけないといけないけど、自動化システムの知識をつけるのも大変なんです」
「自動化システムの提案も技術部と打ち合わせしながらじゃないと作れないのに、カメラの知識をつけて提案するって……」

Aさん
「そうですか……」

Aさんは、リーディングシステムに販売代理店になってもらうことができませんでした。

自社の視点ではなく、販売店の視点で考える

なぜ、リーディングシステムは高性能カメラの販売代理店にならなかったのでしょうか?

画像検知に興味を持つお客さんが多いのに……
自動化システムの提案を進めているならカメラも売りやすいのに……

リーディングシステムの営業部では、工場向け自動化システムの提案に取り組んでいました。

  • 自動化システムを紹介するために多くのお客さんを訪問
  • 紹介したお客さんに自動化システムのニーズをヒアリング
  • ニーズを聞けたお客さんには技術部と一緒に提案書を作成して提案
  • 提案後は、受注を獲得しようと価格や条件を交渉

このリーディングシステムに対してAさんの提案は……

  • 製造業で高性能カメラの需要が拡大していること
  • セントテクノロジーの高性能カメラの技術や性能、競合他社のカメラとの比較
    ……この二つからセントテクノロジーの高性能カメラは製造業で売れることをアピール
  • 製造業や建設業界の導入事例
    ……業界別の事例から具体的に高性能カメラが売れることをアピール
  • 販売価格と販売したときの手数料
    高性能カメラの販売手数料で儲(もう)かることをアピール

つまり、Aさんが提案でアピールしたことは、セントテクノロジーの高性能カメラが製造業で売れること、儲かること。しかし、リーディングシステムの営業部が取り組んでいることは自動化システムの提案です。

いくら「うちの高性能カメラは売れる、儲かる」と言われても……
自動化システムの売上目標を持たされ、多くのお客さんを訪問し、自動化システムを紹介し、ニーズを聞き、提案し、交渉しているときに高性能カメラの知識や説明方法を理解して、一生懸命に売ろうとするでしょうか?

販売代理店への提案は、自分の会社の視点で考えるのではなく、販売代理店の視点で考えなければなりません。

自分の会社の視点
自分の会社の商品は素晴らしい、売れる、売ってもらいたい、売ってくれたら手数料を支払う。
全部、主語は自分の会社か商品です。

高性能カメラは売れる……主語は高性能カメラ。
セントテクノロジーは売ってもらいたい……主語はセントテクノロジー。

販売代理店の視点
販売代理店の売上や事業拡大、営業活動にとって何が必要か? 自分の会社の商品を提案すると、販売代理店の売上や事業拡大、営業活動にとって何が良いのか?……全部、主語を販売代理店で考えるもの。

リーディングシステムは自動化システムの案件を獲得するために差別化できる商品が必要……主語はリーディングシステム。
リーディングシステムは高性能カメラを売ることで、画像データと連携する自動化システムの案件も獲得できる……主語はリーディングシステム。

販売代理店への提案は、販売代理店の視点で、自分の会社の商品を売ることにより販売代理店が得られる相乗効果やメリットを考えることが大切です。

提案は販売代理店の視点で相乗効果やメリットを考える

販売代理店への提案では、自分の会社の視点で提案している営業担当者が多く見受けられます。
みなさんはいかがでしょうか?

商品の仕組みや性能、競合商品と比較した優位性を一生懸命に説明しアピール。
「この商品は素晴らしいです、売れます」

そして、相乗効果やメリットは表面的、または漠然としか説明していない。
「製造業は需要が拡大しているので売れる、販売手数料で儲かる」
「当社の高性能カメラは御社の自動化システムと相性が良い」

販売代理店にとっての相乗効果やメリットは表面的または漠然とではなく、具体的に考えて提案しましょう。

「儲かる、相性が良い」でなく……
「高性能カメラを受注することで、画像データと連携する自動化システムの案件を獲得できる」
「設備の異常検知だけでなく、需要が拡大している品質管理の異常検知で自動化システムの売上を拡大できる」

販売代理店がみなさんの会社の商品を提案する理由は、商品の優秀さだけではありません。みなさんの商品を売ると儲かるから、という単純な理由ではありません。販売代理店には、進めている戦略や計画があり、事業や商品、営業活動に何らかの課題があり、その戦略や計画、課題に対する相乗効果やメリットがあるからです。

販売代理店への提案は、販売代理店の視点で相乗効果やメリットを具体的に考えましょう。

販売代理店への提案内容……詳しくは、
「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は9月24日(木)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
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