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第159回 相談関係では質問で聞くのではなく、会話で話をさせる

課題解決型営業は悩みを言ってもらい、アドバイスを受け入れてもらう営業。頼られる、相談される関係が必要です。しかし、現実のお客さんとの関係は頼られるというより、要求される、使われる関係になりがちです。今回は、相談関係に必要な会話で話をさせる方法についてご紹介します。

相談関係では質問で聞くのではなく、会話で話をさせる

お客さんのことは、お客さんに聞いて教えてもらう。
そのため、お客さんに“質問”して教えてもらおうとしている営業の人が多く見受けられます。

しかし、
課題解決型営業とは、お客さんに悩みを言ってもらい、アドバイスを受け入れてもらう営業。
お客さんに頼られる立場、お客さんから相談される関係が必要です。

依頼され、要求される関係ではなく、頼られ、相談される関係……
はたして、お客さんに質問して教えてもらおうという営業で、頼られ、相談される関係は作れるのでしょうか?

20代・営業経験者を採用したいというメーカーを訪ねて

ある日、人材紹介会社セントスタッフの営業担当Aさんが設備機器メーカーのリーディング製作所を訪問しました。

訪問してお客さんの要望を聞いてみると、

  • 20代の営業経験者を3人採用したい。
  • 製品の技術的な要件は技術部が同行して対応するので設備機器業界未経験者で良い。
  • マネージャー自身が30代前半なので、20代の若手が欲しい。

そして、営業担当Aさんは、
「若手の営業社員を採用したい理由をお聞かせいただけますか?」

お客さん
「20代の営業社員を採用したんですが、辞めちゃったんです」
「昨年、5人採用したんだけど、3人辞めて残っているのは2人だけ」

営業担当Aさん
「そうなんですか、大変ですね」
「辞めてしまった理由を聞いてもいいですか?」

お客さん
「マネージャーが新入社員の面倒を見られないみたいで……」
「うちの会社は営業社員が少ないから、マネージャーも営業活動で忙しいんですよ」

営業担当Aさん
「そうなんですか、他の会社も面倒を見てもらえないという理由で辞めてしまう若手が多いんですよ」
「他に辞めてしまった理由はありますか?」

お客さん
「うちの営業部は人間関係も悪くないですし、入社して1年もたたないで辞めてしまいましたので、面倒を見られなかったことぐらいだと思います」

営業担当Aさん
「そうですか……」
「そうしたら20代よりも30代で業界経験があって自分で対応できる人材の方がいいと思うんですが、いかがでしょうか?」

お客さん
「営業部は20代がいいって言っているので……」
「だから採用したらちゃんと営業部に面倒を見てもらわないと」

営業担当Aさん
「そうですか」
「マネージャーは忙しそうですけど、面倒を見られそうですか?」

お客さん
「いや、分かりません」
「でも、見てもらわないと困るんです」

営業担当Aさん
「分かりました、20代の営業経験者を探してご紹介させていただきます」

なぜアドバイスを受け入れてもらえなかったのか

Aさんはお客さんの状況や課題を聞いてアドバイスしていたのに、受け入れてもらえませんでした。

お客さんが「マネージャーが新入社員の面倒を見られない」と言ったから、「30代で業界経験があって自分で対応できる人材の方がいい」とアドバイスしたのに……
20代の若手を採用しても、また辞めてしまうかもしれないのに……

なぜ、Aさんはアドバイスを受け入れてもらえなかったのでしょうか?
Aさんは、20代の営業社員を採用したいという要望だけでなく、その原因や背景まで聞いてアドバイスしようとしていました。

Aさんが聞けた原因と背景は、
要望の原因として「20代の営業社員を採用したんですが辞めちゃった」
その背景として「マネージャーが新入社員の面倒を見られない」「マネージャーも営業活動で忙しい」

マネージャーが新入社員の面倒を見られないのであれば、「30代で業界経験があって自分で対応できる人材の方がいい」というアドバイスは正しいはず。
……しかし、受け入れてもらえませんでした。

仮にAさんが営業部に関してもっとさまざまな情報を聞いて、アドバイスしていたらどうだったでしょう?

「20代の営業社員を採用したんですが辞めてしまった」「マネージャーが新入社員の面倒を見られない」「マネージャーも営業活動で忙しい」の他に……

  • 技術部と一緒に提案書を作ったり、社内調整をしたりすることも多い。
  • 営業がお願いしても技術部は人数が少ないので対応できないと言われることが多く、説得しないといけないシーンが多い。
  • 技術部の説得や社内調整は、新入社員にとって難しい。
  • マネージャーが間に入ってあげないといけないけど、マネージャーが会社にいないことが多い。

ここまで把握していたら……
「技術部を説得しないといけないシーンが多い」「マネージャーが間に入ってあげないといけないけど、マネージャーが会社にいない」「新入社員にとって難しい」というお客さんに対して、
「30代で業界経験があって自分で対応できる人材の方がいい」というアドバイスができたかもしれません。

セントスタッフのAさんのアドバイスは、
「マネージャーが新入社員の面倒を見られない」「マネージャーも営業活動で忙しい」というお客さんに対して、
「30代で業界経験があって自分で対応できる人材の方がいい」

「技術部を説得しないといけないシーンが多い」「マネージャーが間に入ってあげないといけないけど、マネージャーが会社にいない」「新入社員にとって難しい」というお客さんに対して、「30代で業界経験があって自分で対応できる人材の方がいい」

みなさんは、どちらのアドバイスの方が真剣に考えよう、考えないといけないと思いますか?

さまざまな情報を得るためにはどうすればよいのか

なぜ、Aさんは営業部に関してもっとさまざまな情報を聞けなかったのでしょうか?

答えは“聞き方”です。

セントスタッフのAさんは、質問という手段で聞いていました。
「辞めてしまった理由を聞いてもいいですか?」「他に辞めてしまった理由ってありますか?」

しかし、質問という手段は、相手に意図を感じさせ、話(回答)の範囲を限定させてしまいます。
「辞めてしまった理由を聞いてもいいですか?」という聞き方(=質問)は、相手に辞めてしまった理由の範囲内で返答しようと感じられてしまいます。そのため、お客さんは辞めてしまった理由の範囲内で「マネージャーが新入社員の面倒を見られない」「マネージャーも営業活動で忙しい」と答えました。

そして、辞めてしまった理由と思っていない、または辞めてしまった理由と関係ないと思っていることは答えてくれませんでした。
「技術部を説得しないといけないシーンが多い」「マネージャーが間に入ってあげないといけないけど、マネージャーが会社にいない」「新入社員にとって難しい」……

質問とは異なり、自分の考えやネタを使った会話という手段は、範囲を限定させず、考えやネタに関係することを自由に話そうとさせることができます。
例えば、「他に辞めてしまった理由ってありますか?」と質問するのではなく、「御社の営業は技術部と一緒に提案書を作ったり、社内調整をしたりすることも多いですよね」というネタを振ったらどうでしょう?

「提案書を一緒に作るだけでなく、技術部を説得しないといけないシーンが多い」と話してくれるかもしれません。
「提案書の作成には時間がかかって大変」と話してくるかもしれません。
「技術部以外にも企画部との調整が多い」と話してくるかもしれません。
「提案書を作成するだけでなく、顧客への提案も技術部と同行している」と話してくるかもしれません。

お客さんと一緒に課題を考え、解決策を受け入れてもらう

自分の考えやネタを使った会話という手段は、範囲を限定せずに相手にさまざまな情報について話をしてもらい、聞き出すことができます。一見、要望と関係ないと思われる背景、相手が重要だと思っていたり興味があったりすること……
すると、要望の背景、相手が重要だと思っていたり興味があったりすることを踏まえてアドバイスすることができ、受け入れてもらいやすくなるのです。

相談にのるということは、要求されて答えること、依頼されて対応することではありません。相手と一緒に悩み(課題)を考えて、悩みに対してアドバイス(解決策)を考え伝え、受け入れてもらうことです。
お客さんと一緒にお客さんの悩み(課題)を考え、アドバイス(解決策)を受け入れてもらうために、“質問”ではなく“会話”でお客さんのさまざまな情報を聞き出しましょう。質問して教えてもらうのではなく、自分の考えやネタを振ってお客さんに話をしてもらいましょう。

多くの営業現場を見ていると、お客さんのことはお客さんに教えてもらうという意識から“質問”という手段に頼っている人が多く見受けられます。しかし、相談にのるときには、お客さんの要望だけでなく、課題や原因、その背景、また課題に関係すること……さまざまな情報が必要です。
お客さんに話をしてもらうことができる自分の考えやネタを準備して訪問し、質問ではなく会話で聞き出しましょう。

相談関係を作る方法と聞き出す力を身につける方法……詳しくは、

「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は10月19日(月)更新予定です。

今月のクイズ(営業のクイズ)

クロージング

あなたはシステム会社の営業部長です。上期は技術部に協力してもらえなかったので提案が少なかった。
このままだと下期も提案が進まない……どうする?

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
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