第160回 コミュニケーションの感性はISPAサイクルで鍛える

営業にとってコミュニケーション力は欠かせない。しかし、論理性は指導や準備で補えても、感性は鍛えられないとあきらめている人が少なくない。お客さんの考えや気持ちを察して説明、反応や表情を感じて質問、感情を考えながら会話……全て必要です。今回は営業にとって大切なコミュニケーションの感性を鍛える方法についてご紹介します。

コミュニケーションの感性はISPAサイクルで鍛える

今日の営業のコミュニケーションの大半はメールやチャット、オンライン。
相手の状況や気持ちを感じにくいコミュニケーションが増え、訪問や電話といった直接的に相手の状況や気持ちを感じることができるコミュニケーションが減っています。そのため、営業社員がコミュニケーションの感性を鍛えにくい、身につけにくい……

営業業務やコミュニケーションの効率化、情報共有のスピードは大切です。では、相手の状況や気持ちを感じて行うコミュニケーションの感性は必要ないのでしょうか?

上司から顧客へ定期的な進捗報告をするように言われて

ある日、Web制作会社の営業担当Aさんが上司のBさんに指導されていました。

上司Bさん
「お客さんには定期的に進捗(しんちょく)を報告しないといけないよ」

営業担当Aさん
「えっ、お客さんから報告するように依頼されてなくてもですか?」

Bさん
「そう、Webサイトの制作はお客さんにとってちゃんと進んでいるか心配になるんだよ」
「だから定期的に進捗を報告してあげないと」

Aさん
「何を報告するんですか?」

Bさん
「順調に進んでいるとか、納期までに間に合うとか」

Aさん
「分かりました」

その翌日、Aさんは、来月末までにWebサイトを納品する予定のリーディング自動車に電話をかけました。
上司Bさんの指導に従って定期的に進捗を報告しようと……

Aさん
「前回のお打ち合わせから2週間たちましたので、進捗報告でお電話したのですが……」

リーディング自動車の担当者
「進捗報告って?」

Aさん
「順調に進んでいますので、来月末までには納品できると思います」

リーディング自動車の担当者
「来月末までに納品できるって、デザインは大丈夫なの?」

Aさん
「前回のお打ち合わせどおり、今月末にお見せできるように進めていますので大丈夫です」

リーディング自動車の担当者
「いや、前回の打ち合わせで当社の要望とずれていて作り直しになったでしょう?」
「うちの部長も怒っていたじゃないですか、ぜんぜん違うって言って」
「のんきに進捗報告している場合じゃなくて、デザインはどうなっているんですか?」

Aさん
「すみません」
「ただ、デザインは今月末のお打ち合わせまでに修正してお見せすることになっていると思うんですが……」

リーディング自動車の担当者
「いや、スケジュールのことを言っているんじゃなくて、デザインがうちの要望どおりにできているか心配しているんです」
「もし、今月末の打ち合わせで、再度作り直しっていうことになったら間に合わないんじゃないの?」

Aさん
「……」

リーディング自動車の担当者
「再来月に新商品をリリースするので、来月末にできあがっていなかったら困るんですよ」

Aさん
「すみません、すぐに確認します」

今度はリーディング自動車の担当者に怒られてしまいました。

ちゃんと打ち合わせどおりに進めているのに……
上司Bさんの指導に従ってちゃんと定期的に進捗を報告しようとしたのに……

なぜ、Aさんは怒られてしまうのでしょうか?

なぜ進捗報告が顧客を怒らせてしまう結果になったのか

Aさんとリーディング自動車の担当者との間で決めていたことは、

  • デザインが要望とずれていたので今月末までに修正する。
  • 今月末の打ち合わせでデザインについて確認する。
  • 今月末にデザインを確認して来月末までに納品する。

そして、上司Bさんから指導されたことは、

  • お客さんには定期的に進捗を報告する。

Aさんは、決めていたこと、指導されたことをきちんと守ろうとしていました。

そのためAさんの報告は、
はじめに「進捗報告でお電話したのですが」
そして「順調に進んでいますので、来月末までには納品できると思います」
さらに「デザインは今月末までに修正してお見せすることになっている」

しかし、お客さんの状況と気持ちは、

  • 前回の打ち合わせでデザインが要望とずれていて不信に思っていて、大丈夫か心配している。
  • 上司である部長がデザインのこだわりが強く怒っていた。
  • 部長がまた怒るとデザインが固まらず、間に合わなくなるかもしれないと不安。
  • 新商品をリリースする日が決まっているので、Webサイトが間に合わないと問題になる。

みなさんがお客さんだったらAさんの報告に対してどのように思いますか?

  • デザインについて心配していることを分かっているのだろうか?
  • 前回の打ち合わせでデザインがずれていたことを真剣に考えているのだろうか?
  • 今月末の打ち合わせでもデザインがずれていて部長が怒るのではないだろうか?
  • 最終的に来月末の納品が間に合わなくなるのでは?

……そして、この会社に任せて大丈夫なのだろうか?

仮に「進捗報告でお電話したのですが」ではなく……
「先日の打ち合わせではデザインがご要望とずれていてすみませんでした」と伝えていたら、お客さんはどう思ったでしょうか?

Aさんがお客さんの不信や心配について分かっている、デザインのずれについて真剣に考えているという印象を持ってくれたかもしれません。

仮に「デザインは今月末までに修正してお見せすることになっている」ではなく……
「制作部とずれを確認して進めている」「次回の打ち合わせで部長さんから修正の指示が入るかもしれないけど、来月中旬までに修正できる」と伝えていたら、お客さんはどう思ったでしょうか?

きちんと修正して進めてくれている、部長がいろいろ修正指示しても間に合わせてもらえると信用してもらえたかもしれません。

顧客の状況や気持ちを想像すること

「先日の打ち合わせではデザインがご要望とずれていてすみませんでした」
「制作部とずれを確認して進めている」「次回の打ち合わせで部長さんから修正の指示が入るかもしれないけど、来月中旬までに修正できる」

このように伝えるために必要なことは……お客さんの状況や気持ちを想像すること。

Aさんは、決めていたこと、指導されたことをきちんと伝えていました。
しかし、決めていたこと、指導されたことを単に伝えているだけで、お客さんの状況や気持ちを想像していませんでした。

  • 前回の打ち合わせでデザインが要望とずれていて不信に思っている、大丈夫か心配している。
  • 上司である部長がデザインのこだわりが強く怒っていた。
  • 部長がまた怒るとデザインが固まらず、間に合わなくなるかもしれないと不安。
  • 新商品をリリースする日が決まっているので、Webサイトが間に合わないと問題になる。

お客さんの状況や気持ちを想像していたら、「進捗報告でお電話したのですが」ではなく、「先日の打ち合わせではデザインがご要望とずれていてすみませんでした」と伝えていたかもしれません。

お客さんに理解してもらうため、受け入れてもらうため、コミュニケーションを円滑に進めるためには、決めていたこと、指導されたことをただ伝えるだけでなく、お客さんの状況や気持ちを感じて、その状況や気持ちに合わせて伝えるという感性が必要です。

では、感性ってどうやって鍛える? 身につける?

感性は一朝一夕で身につくものではなく、長い間の環境や経験によって育まれるものです。継続的な環境や経験で“感じること、刺激を受けること”により鍛えられ、身についていきます。
相手の状況や気持ちを感じ、その状況や気持ちに合わせるコミュニケーションの感性は、繰り返し相手の状況や気持ちを感じること、刺激を受けることにより鍛えられ、身につくのです。

コミュニケーションの感性を鍛えるISPA(イスパ)サイクル

Imagine(想像)→Select(選択)→Perceive(推察)→Adjust(修正)

  1. Imagine(想像):相手の状況や気持ちを想像する
  2. Select(選択):内容、手段、表現、タイミングとシーンを選択する
  3. Perceive(推察):選択した行動や発言に対する反応(言葉や表情)から裏側にある心理を推察する
  4. Adjust(修正):裏側にある心理に対し、選択を修正する

コミュニケーションの感性はISPAサイクルを継続的に回し、数多く経験することで鍛えることができます。

コミュニケーション力は営業力の基盤

多くの会社の営業現場を見ていると、自分の会社の都合で説明することや質問することばかりで、相手の状況や気持ちを想像させる指導、相手の状況や気持ちに合わせた話し方や聞き方の指導が少なくなっているように感じます。そして、コミュニケーションの感性は変わらないし変えられないとあきらめている会社も少なくありません。

みなさんの会社ではいかがでしょうか?

いくら時代や環境が変わっても、営業はコミュニケーションで成り立つ仕事であり、お客さんの状況や気持ちに影響される仕事です。自分の会社の都合で何かを説明するかだけでなく、お客さんの状況や気持ちに合わせて何を、どのように説明するかによって成果の変わる仕事です。

コミュニケーション力は営業力の基盤……コミュニケーションの感性をISPAサイクルで鍛えましょう。

ISPAサイクルでコミュニケーションの感性を鍛える方法……詳しくは、

「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は11月16日(月)更新予定です。

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教育・指導

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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