第178回 最新医療行政情報 その1~シン・地域医療構想~
2040年を計画の想定年にあらためた新たな地域医療構想の策定が進められています。“シン”地域医療構想において想定される連携・再編・集約化を見据え、医療機関に求められる役割や、自院が進むべき方向性、経営に必要な視点を解説します。
最新医療行政情報 その1~シン・地域医療構想~
最近の世の中の変化のスピードは、以前に比べて速くなったと感じます。変化の激しい時代で生き残るためには、変化に対応することが重要です。特に医療業界は「診療報酬点数」という公的な価格で自分たちが提供するサービスに対し、自分たちで値段を付けられません。守られているとも捉えられますが、経営に対し大きな影響力が外部に存在することにもなります。外部環境はどの業界でも経営に影響を及ぼします。その中でも、医療業界は特にその影響が大きいといえます。そこで、医療業界に影響の大きいトピックを取り上げていきたいと考えています。まずは、新しい「地域医療構想」についてです。
「地域医療構想」は2014年の医療法改正で制度化された、地域における医療と介護の総合的な確保を推進するための医療計画の一部です。少子高齢化、特に2025年問題(団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者に達することで生じる諸問題)を想定して作成されました。その前提となった2025年を過ぎた現在、2040年ごろ(高齢者人口がピークとなる時期)を計画の想定年にあらため、新しい地域医療構想の策定が進められています。
2040年に向けた医療提供体制
背景
- 我が国においては、今後、人口構造や疾病構造の変化に伴い、医療の需要が量的、質的に大きく変化することが見込まれている。特に、団塊の世代が後期高齢者となる2025年以降、2040年に向けて、高齢者人口の増加に伴い、高齢者救急や在宅医療の需要が増加する一方、急性期医療の需要が多くの地域で減少することが見込まれる。
- 生産年齢人口の減少に伴い、医療機関における医師や看護職員等の担い手の確保がますます困難となることが想定される。
- このため、地域において必要な医療提供体制を将来にわたり確保していく観点から、2040年頃の医療需要を見据えつつ、医療機関の役割分担や連携のあり方を整理し、地域全体として適切な医療提供体制を構築することを目的として、地域医療構想を推進する必要がある。
出典:「地域医療構想策定ガイドライン」(厚生労働省・PDF)より一部抜粋(一部省略)
最初に考えなければいけないことが、高齢化により人口構成に変化があり、疾病構造にも同様に変化があるということ。このために医療提供体制にも変化が求められるということです。具体的には、人口が少ない地域では医療機関の数を見直し、高齢者の特性に合わせた病床機能をもつ体制にしていく方向性が示されています。また、高齢者に合わせて在宅医療の確保にも言及しています。医療提供体制の変化を具体的に考えると、単純に数を減らすというものではなく、複数の機関が連携する、複数の機関が再編・集約するということで、結果的に数が減るということになります。
連携・再編・集約という三つのキーワードが出てきます。同じような機能をもっている医療機関は「集約」の対象となる可能性がありますので、自院の存在価値を高めるには、医療の質の向上や特徴的な医療を提供するなど独自性をもつことが今後重要な戦略となります。
医療機関の連携・再編・集約化について
- 今後、2040年に向けて、人口の少ない地域においては、生産年齢人口の減少に加え、高齢者人口も減少し、医療需要が減少するとともに医療の担い手の不足が見込まれる。
- 大都市型の地域においては、医療需要の総量としては大きく減少はしないが、手術等の集学的な医療は相対的に減少し、高齢者救急等の包括期の医療需要や慢性期の需要が相対的に増加していくなど、医療需要の質が変化していく。こうした中で、大都市型の地域における医療提供体制が非効率であることは、当該地域での医師の働き方等へ影響するだけでなく、医療従事者が都市部を志向する傾向であること等により、結果として医師の偏在を助長する懸念があること等も踏まえると、それぞれの地域ごとに当該状況に応じた医療機関の連携・再編・集約化の取組が求められる。
- 急性期医療については、構想区域ごとに、緊急性の高い疾患や頻度の高い疾患等に対応できる体制の確保が必要となる。がん手術やその他の高度な外科手術については、症例数が多い医療機関ほど、医療の質が高いことが一般的に知られており、こうした高度な手術等については、地域の医療資源に応じて、構想区域よりも広域な単位で集約して実施することを検討する必要がある。
- 医療資源が潤沢ではない地域であって、複数の医療機関で同じ診療科の手術をそれぞれ小規模で実施しているなど、小規模で全身麻酔手術を実施する医療機関が多く存在している地域においては、外科医師の確保や育成、麻酔科医等の周術期に関係するその他の職種の確保という観点を踏まえながら、体制について検討する必要がある。
- 救急医療の役割分担については、増加する高齢者救急への対応等のため、急性期拠点機能を担う医療機関以外でも救急対応を確保する必要がある。高齢者救急に係る「傷病者の搬送及び傷病者の受入れの実施に関する基準」の検討に当たっては、地域の実情に応じて下り搬送や上り搬送の活用等についても、メディカルコントロール協議会等において、地域医療構想の考え方も踏まえて検討することが求められる。
- 医療機関機能の連携・再編・集約化について、例えば急性期拠点機能や急性期病床の集約化だけではなく、救急車の受入や手術の実施を行う医療機関の集約化や役割分担、夜間に緊急手術を行う医療機関の集約化等も取組として検討が必要である。
出典:「地域医療構想策定ガイドライン」(厚生労働省・PDF)より一部抜粋(一部省略)
以上のような背景があり、地域医療構想が見直されることになります。地域医療構想は医療法の枠になりますので、法的拘束力を伴います。そのため、多くの医療機関に影響を及ぼすことが想定されます。
まずは、自院の地域での役割、強みや弱み、周りの医療機関や介護施設などをあらためて整理しておくとよいでしょう。
皆さんはどう思いますか?
次回は11月11日(水)更新予定です。
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