デジタルトランスフォーメーションの戦略の必要性と立案時のポイント

経済産業省がガイドラインを作成し、各企業に推進を呼びかけているデジタルトランスフォーメーション(DX)。既存システムのブラックボックス化・老朽化、デジタルテクノロジーに対応できる人材の枯渇などによって引き起こされる「2025年の崖」という大規模な経済損失を乗り越えるために必須とされている取り組みですが、成功させるためには戦略が求められます。この記事では、デジタルトランスフォーメーション戦略の重要性、打ち立て方などについてご紹介します。

デジタルトランスフォーメーションの戦略が企業に必要な理由

多くの企業がデジタルトランスフォーメーションを戦略として実施しています。以下では、世界中の企業がデジタルトランスフォーメーションに注力している理由を解説します。

競争優位性の確保に役立つ

第一の理由が、競合に対して優位性を確保するために役立つことです。

新型コロナウイルスの影響で、企業活動のデジタル化が急速に進展しています。デジタルトランスフォーメーション導入に後れを取ると、既に先を行く競合とのシェア争いに追いつけず、市場からの撤退の危機につながりかねません。適切なツールやシステムを導入し、使いこなしている企業とそうではない企業との間には、明らかな生産性の差が生まれます。

また、デジタルトランスフォーメーションの推進によって、リアル以外にデジタルでも顧客と良好な関係を築くことが可能になり、売り上げの向上につながります。オンラインでもリアルと同様の顧客体験ができるようになれば、顧客ロイヤルティの向上も実現可能です。このように、デジタルトランスフォーメーションによって顧客ニーズに合ったビジネスモデルを創出し、時代の流れに合ったサービスを提供できるようになります。

経済産業省によると、2025年までに日本がデジタルトランスフォーメーションを推進できれば、2030年に実質GDPを130兆円以上押し上げる効果があるとされています。一方、推進ができなければ2025~2030年の5年間で最大12兆円の経済損失が起こると算出しています。実現しないままでは世界に後れを取り、企業の国際競争力が低下していくことが予見されているため、今後はデジタルトランスフォーメーションに対する意識・取り組みが企業の明暗を分けるといえるでしょう。

【出典】『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』(経済産業省・PDF)

生産性の向上につながる

デジタルトランスフォーメーションを進めていくと、業務の中で問題が起きている箇所、非効率な箇所が可視化されます。これはシステムやツールによって、業務のデータを共有するためです。数字やグラフ、基準値に達した場合のアラートなど、分かりやすい形で業務の実態を把握できます。

また、デジタルトランスフォーメーションを実現すれば、コストの削減も可能です。非効率な業務が是正されるため、残業の解消につながります。また定型的な業務を自動化することにより、人件費削減もできるようになります。自動処理のためのテクノロジーとしては、AIやRPAなどが代表的です。

なおデジタルトランスフォーメーションに伴い、既存システム(レガシーシステム)からの移行をすることになります。さまざまなシステムが移行先の候補となりますが、クラウドシステムは従来のシステムよりもコストを削減しやすいと考えられています。クラウドシステムは開発、運用、メンテナンスをサービス提供事業者が担当するため、専用の人手が必要ありません。クラウドシステムを使い、一部の作業をデジタルトランスフォーメーションで自動化することで、空いた時間を売り上げ貢献度の高い業務に充てられます。

デジタルトランスフォーメーションの戦略立案時のポイント

ただやみくもにデジタルトランスフォーメーションを実施しても、成功は期待できません。デジタルトランスフォーメーションの戦略を立案する際に意識したいポイントをご紹介します。

デジタルトランスフォーメーション推進の目的を明確にする

デジタルトランスフォーメーションを成功させるためには、全社的な協力が求められます。目標や効果を自社の全体が理解していなければ、浸透させるのは困難です。現在の自社の状況を分析するとともに、何のためにデジタルトランスフォーメーションが必要なのか、デジタルトランスフォーメーションによって何を実現したいのかを明確化することが重要です。また、大規模な戦略を部署ごとに実行できるよう細かく分解していくことも大切です。

顧客視点で考える

非効率な業務の是正・生産性の向上だけではなく、新たな企業価値を生み出してこそ本当の意味でのデジタルトランスフォーメーションといえます。そのため、デジタルトランスフォーメーションによって顧客にどのような付加価値を生み出すかを逆算して戦略を立てることが重要です。例として、業務効率化でコストを削減すれば、顧客に安価で商品・サービスを提供できるようになります。

こうした顧客視点の戦略を打ち立てる際は、バリューチェーン分析というフレームワークを用いると効率的です。バリューチェーン分析とは、商品・サービスが顧客に提供されるまでのプロセスを「モノの連鎖」ではなく「価値の連鎖(バリューチェーン)」と捉え、他社との価値比較を行う分析手法です。付加価値を生み出す過程を洗い出して、自社の強みを分析できます。

デジタルトランスフォーメーションの戦略実行に成功している企業の特長

デジタルトランスフォーメーション戦略を実施し、成功している企業には幾つかの特徴が見受けられます。代表的な特長をご紹介します。

経営層が深くコミットしている

上述したとおり、デジタルトランスフォーメーションは全社的に取り組むことが理想です。局所的に実施しても、他部署との連携が取りづらいケースがあります。デジタルトランスフォーメーション戦略を実行し、成功している企業の多くは、経営陣が率先して業務のデジタル変革にコミットしています。トップから全社にデジタルトランスフォーメーションの目的やメリットを強く訴えることで、適切に従業員に共有され、部分最適に陥りづらくなるでしょう。

段階的にデジタルトランスフォーメーションを推進している

最終的には全社でデジタルトランスフォーメーションを実現する必要があります。しかし多くの企業にとって、一気にコストをかけて大規模にシステムやツールを刷新するのは現実的ではありません。デジタルトランスフォーメーション戦略に成功している企業は多くの場合、重点的に対策したい部門から徐々にデジタルトランスフォーメーションを推進しています。これは少ない投資からでも、デジタルトランスフォーメーションによる効率化の効果を最大限に生かすためです。

また、こうしてスモールスタートした際の使用感、課題は知見・ノウハウとして蓄積しておきましょう。将来的に全社へ浸透させる際に役立つデータとなります。具体的なマニュアルを構築しておくのもおすすめです。

新規ビジネスモデルの創出に取り組んでいる

デジタルトランスフォーメーションの推進によって最終的に目指す姿は、新しいビジネスモデルの創出です。実際に、多くの企業が顧客に提供する新たな価値をデジタルトランスフォーメーションによって見いだし、競争力を強化しています。デジタルトランスフォーメーションによって新規ビジネスの開発に必要な顧客ニーズの分析を、より詳細に行うことが大切です。新しいビジネスを迅速に開始し、顧客のニーズに合わせて柔軟にサービス内容を改善・調整していく必要があります。

デジタルトランスフォーメーションの成功には戦略が不可欠

デジタルトランスフォーメーションを成功させるためには、ツール・システムといったデジタル技術の活用だけにとどまらず、明確な戦略を用意して推進していくことが大切です。戦略を立案する際には、今回ご紹介したように、目的を明確にすることと、顧客視点を意識するとよいでしょう。最終的には、デジタルトランスフォーメーションでユーザーに新しい価値を提供するビジョンを描き、それを基に戦略を策定しましょう。

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