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RPAを導入するメリットと成功事例、運用までの五つのステップ
事務処理などの業務効率化に対して大きな効果があると期待され、近年、導入を検討する企業が増えているのが「RPA(Robotic Process Automation)」です。RPAを活用すれば従来の作業者を人からロボットに代替可能であり、働き方改革やDXにおいても有効な手段として考えられています。そこで今回は、RPAの概要と導入するメリットなど、事例を挙げながら紹介します。
目次
RPAとは
RPAの基礎知識を紹介します。しばしば混同されがちなAIとの違いについても解説します。
RPAとは
RPA(Robotic Process Automation)は、日本語で「ロボットによる業務の自動化」を意味します。PC上の定型業務やルーティンワークをソフトウェアロボットが行ってくれる、自動化システムの一種といえるでしょう。RPAが得意な作業は以下のような業務があります。
- データのダウンロードやアップロード
- グラフや表の作成
- メールの一斉送信
- データの転記
- データの集計
- 請求書や伝票の作成と印刷
RPAとAIの違い
RPAと同じく、作業の効率化や自動化、人の作業者の代替として認知されているのが、人工知能「AI(Artificial Intelligence)」です。ただ、RPAとAIには明確な違いがあるので注意が必要です。
AIはビッグデータを判断指標にして、画像認識、音声認識、言語処理といった業務を遂行するシステムです。シンプルな作業の自動化が目的のRPAと比べると、複雑な作業領域を担うことが大きな違いといえるでしょう。また、RPAは人の手で作業の手順やルールを都度、更新して最適化するのが一般的ですが、AIはディープラーニングと呼ばれる仕組みによってAI自身が学習することが可能になっています。
目的や作業領域が異なるRPAとAIですが、将来はそれぞれの機能を融合することも可能だと考えられています。もし実現すればRPAでは代替できなかった「人による判断」もAIに置き換えられるため、業務範囲の幅が広がるとして期待されています。
RPAのメリットと導入事例
RPAを導入することでどのようなメリットが活かせるのでしょうか。導入事例とともに代表的な利点を紹介します。
RPAのメリット
RPAは24時間365日稼働できるのが大きなメリットです。特に中小企業は人材不足が深刻な問題となっているうえ、働き方改革関連法の施行によって原則、月40時間を超える残業もできない状況となっています。RPAを導入すればロボットが夜間に作業を行い、翌朝に従業員がスムーズに次の工程に取り掛かれる業務プロセスの構築も可能です。
このような業務そのものの効率化によって生まれた時間や人員などのリソースを間接業務から、利益を生み出すコア業務などに割り振ることができれば、売上や利益の向上にもつながるでしょう。さらにRPAを導入することで、作業の属人化が防げるので担当者の退職の度に業務が遅延するリスクが低減し、ヒューマンエラーの発生防止も期待できます。また作業の質の均一化も図れます。
RPA導入事例
大塚商会は、サポートセンターの業務効率化を図るためにRPAを導入しました。RPAはプログラミングの知識がなくても開発できるため、現場の従業員を対象に効率化に関するアイデアの社内コンテストを実施し、合計100種類以上のRPAを開発しています。その結果、顧客向けのFAQの更新に必要な分析作業などの自動化に成功。2017年末時点で年間の人件費の8,000万円に相当する業務をRPAが行っています 。このような自社で蓄積したノウハウをもとに、さまざまな企業にRPA活用のご提案をしています。その一例を以下で紹介します。
交通費精算チェック業務の自動化(経理部門・総務部門)
従業員から提出される交通費精算所の金額チェックをRPAを導入することで自動化しました。従来は人が行っていた交通費の照らし合わせやデータ修正、印刷、上長への提出などといった業務の自動化することで、業務の効率化に加え、ヒューマンエラーのリスク軽減に成功しました。
入札情報のチェック業務の自動化(営業部門)
土木建設業界では公共事業を請け負うために、入札情報をWebサイトで都度確認する作業が必要不可欠です。大塚商会が支援した企業は、営業部門にRPAを導入することであらかじめ指定した複数サイトをロボットが自動的に巡回して、最新の入札情報をチェックできるようになりました。さらに入札結果も集計したうえでダウンロードもしてくれるので、より容易に共有できるようになりました。
受注処理の自動化(事務部門)
個別対応が必要なケースがある受注処理も、大塚商会がRPAの導入支援を行った企業は効率化を実現しています。具体的にはWebの受注サイトから注文情報をダウンロードして、「人の判断の有無」の必要性に応じて振り分ける業務をRPAが自動化しました。その結果、受注処理時間の削減のほか、チェック項目の確認漏れなど、ミスの抑止も実現しています。
RPAの導入手順
RPAをただ導入するだけでなく、運用後も見据えて各現場の環境に適したものを選ぶ必要があります。一般的なRPAの導入手順と合わせて解説します。
RPAの導入手順
1.RPAを導入する業務の選定
まずはRPAによって自動化する業務をピックアップしましょう。それぞれの業務の工数を可視化してルール変更や作業手順が少ない業務から優先的に取り組むことをおすすめします。また、以下のようなRPAと相性がよい作業も事前に調べておき、自社の業務と照らし合わせて確認することをおすすめします。
- ダブルチェックが必要な業務
- コピー&ペーストなど、同じ作業を繰り返す業務
- 日常的で頻度の高い業務
2.運用ルールの整備
RPAにはトラブル対応やルールの策定と更新などの業務が必ず発生します。正しく運用し続けるためのガイドラインを作成して運用体制を構築し、部署や担当ごとに権限や責任の所在を明らかにすることが重要です。
3.開発・導入
RPAを導入して開発する方法は、ベンダーのシステムを導入して開発まで依頼する、もしくは大塚商会のように自社で開発するかの2択となります。自社にロボット開発やトラブル時に迅速に対応できる体制や人材がいるのであれば、自社開発を視野に入れるべきでしょう。一方、自社にナレッジがない状況で自社開発してしまうと、エラーの発生頻度が増加してRPAのメリットを十分に活かせなくなる可能性が高まります。ベンダーの利用と自社開発のメリット・デメリットと自社の状況を総合的に比較して、導入方法を選択しましょう。
4.テスト・検証
ベンダーと自社開発のどちらを選択しても、導入・開発後は必ず業務に適用する前にテストを行います。誤動作や見落としている動作などをチェックしましょう。
5.運用開始
運用開始後も業務効率化や生産性向上に対して効果が示されているかチェックし、改善点があれば更新する必要があります。メンテナンスや更新作業もベンダーに依頼する場合は、継続的に、かつコミュニケーションが円滑なサポートを行ってくれる業者を選ぶ必要性が高まります。
適切にRPAを導入して業務効率化を実現しましょう
RPAの基礎知識と導入成功事例などについて解説しました。RPAを適切に導入できれば、作業効率の向上に大きな効果が期待できます。ただ、定型業務といっても企業や現場、個人レベルでやり方が異なります。業務プロセスそのものの共有や見直しからスタートしなければならないケースもあるため、RPAの導入を検討する際は大塚商会のような専門知識が豊富な外部の支援を受けることも有効な手段といえるでしょう。
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