第127回 運送会社は何台まで増やすのが正解なのか

運送会社は何台まで増やすべきか。目指すべきは台数の多さではなく、自社の強みを生かした経営体制の構築です。DXを活用し、運送会社の成長を支える管理体制と仕組みづくり、目指すべき将来の姿について解説します。

運送会社は何台まで増やすのが正解なのか

運送会社を経営していると、「いつかは50台にしたい」「100台規模の会社を目指したい」と考えることがあるのではないでしょうか。トラックの台数は、会社の規模を表す分かりやすい数字です。取引先から見ても、保有台数が多い会社には一定の輸送能力があるという印象を持ちやすいでしょう。

しかし、運送会社は何台まで増やすのが正解なのでしょうか。
20台の会社が50台になれば、経営は楽になるのでしょうか。50台の会社が100台になれば、さらに強い会社になるのでしょうか。実は、運送会社の成長を考えるうえで重要なのは、トラックを何台持つかということだけではありません。
今回は、会社の規模と経営体制との関係について考えてみたいと思います。

20台の会社と50台以上の会社とでは、経営のやり方が違う

例えば、トラックが20台の運送会社を考えてみましょう。
社長が主要な荷主との取引を担当し、配車担当者と毎日の運行状況を確認する。ドライバーの顔と名前はもちろん、それぞれの得意な仕事や家庭の事情まで把握している。
このような経営ができるのは、中小運送会社の強みでもあります。社長と現場との距離が近いため、何か問題があればすぐに対応できます。荷主から急な依頼があっても、社長の判断で柔軟に動けることもあるでしょう。
ところが、トラックが30台、40台、50台と増えてくると同じやり方では対応しきれなくなってきます。

ドライバーが増えれば、労務管理や教育にかかる仕事も増えます。荷主が増えれば、運行条件や請求方法も複雑になります。配車担当者が複数になれば、担当者同士の調整も必要です。
20台のときには社長の頭の中で把握できていたことが、50台になると難しくなります。つまり、会社の規模が変われば、経営のやり方も変えていく必要があるのです。

トラックを増やす前に管理する力を増やせているか

会社を大きくするには、トラックとドライバーが必要です。しかし、それだけではありません。車両が増えれば、点検や整備の管理、運転日報の確認、労働時間の把握、請求書の作成など、さまざまな管理業務も増えていきます。
例えば、20台のときには事務員2人で対応できていた仕事が、40台になると4人必要になるかもしれません。さらに50台、60台と増えたとき、そのたびに管理する人を増やさなければならないとしたら会社の成長には大きな負担が伴います。

もちろん、管理業務を担う人材を増やすこと自体は悪いことではありません。問題は、仕事の進め方を変えないまま、人を増やすことだけで対応しようとすることです。
トラックを増やす計画は立てていても、それを支える事務所や管理部門をどう成長させるかまで考えている会社は、意外と少ないのではないでしょうか。

50台を超える会社に必要なのは「社長が全部知らなくても回る仕組み」

会社が大きくなると、社長1人で全てを判断することは難しくなります。
配車担当者が3人いる会社を想像してください。それぞれが担当する車両や荷主の状況を把握していても、ほかの担当者の仕事までは十分に分からないことがあります。急な欠車が発生したとき、別の担当者が管理する車両に余裕があるのか。新しい仕事を受けるとき、どの営業所なら対応できるのか。こうしたことを毎回社長に確認していては、社長の仕事は増える一方です。

ここで必要になるのが、担当者が違っても会社全体の状況を把握できる仕組みです。配車計画、車両の稼働状況、ドライバーの勤務状況などが共通のシステムで確認できれば、担当者同士で判断できることが増えていきます。
社長も日々の細かな確認から少しずつ離れ、営業や人材育成、新しい取引先の開拓などに時間を使えるようになります。DXの価値は、事務作業を減らすことだけではありません。会社が大きくなっても、特定の人に仕事が集中しない経営体制をつくることにもあるのです。

100台の会社が50台の会社より強いとは限らない

では、会社は大きければ大きいほどよいのでしょうか。
必ずしもそうとはいえません。例えば、特定の地域や輸送分野を得意とする30台の会社があったとします。長年の取引先との信頼関係があり、ドライバーの教育も行き届いている。社長と社員との距離も近く、急な問題にも柔軟に対応できる。このような会社には、大規模な運送会社とは違う強みがあります。一方、100台規模になると、大口の輸送案件を受けやすくなる反面、管理職の育成、営業所間の調整、設備投資など、経営者が考えるべきことも多くなります。

大きな会社には大きな会社の強みがあり、小さな会社には小さな会社の強みがあります。大切なのは、台数を増やすこと自体を目標にしないことです。
どのような荷主と取引したいのか。どの地域で事業を展開したいのか。社員にどのような働き方をしてもらいたいのか。そうした経営方針によって、目指すべき会社の規模は変わってきます。

DXは会社を大きくするためだけのものではない

ここで、もう一つ考えておきたいことがあります。DXというと、会社を大きくするために導入するものだと思われがちです。しかし、DXの役割はそれにとどまりません。
例えば、30台の会社が今後も30台規模を維持しながら、安定した経営を続けたいと考えたとします。その場合でも、運行管理や請求業務をシステム化する意味は十分にあります。担当者が休んでも仕事を引き継げる。ベテラン社員が退職しても、これまでの業務を継続できる。事務作業に追われていた社員が、荷主への対応やドライバーの支援に時間を使えるようになる。

こうした変化は、会社の規模に関係なく重要です。また、将来50台、100台を目指す会社であれば、まだ20台、30台のうちから業務の進め方を整えておくことで、増車したときの混乱を抑えやすくなります。
DXは会社を大きくするための道具であると同時に、今の規模でも無理なく経営を続けるための仕組みでもあるのです。

社長が決めるべきなのは「何台にするか」より「どんな会社にするか」

運送会社の経営者にとって、保有台数は一つの目標になります。しかし、50台にすることも、100台にすることも、それ自体が経営の目的ではありません。大切なのは、どのような会社をつくりたいのかということです。
地域の荷主から長く信頼される会社を目指すのか。特定の輸送分野で高い専門性を持つ会社を目指すのか。それとも、複数の営業所を展開し、広い地域の輸送を支える会社を目指すのか。
目指す姿が違えば、必要な車両台数も、人材も、管理体制も変わってきます。そして、どのような規模を目指す場合でも、社長や一部の社員の頑張りだけに頼らない仕組みが必要です。
会社の成長に合わせて、仕事の進め方も成長させる。そのための手段の一つが、DXなのではないでしょうか。

まとめ

運送会社は、何台まで増やすのが正解なのか。その答えは、会社によって違います。20台でも強い会社はありますし、100台になって初めて実現できる事業もあります。ただし、会社の規模が大きくなるほど、これまでと同じ経営方法では対応できなくなる場面が増えていきます。
車両を増やすことだけでなく、管理体制や人材育成、業務の仕組みづくりも同時に進めることが重要です。
これからの運送会社に求められるのは、単にトラックを増やす経営ではなく、自社に合った規模で、無理なく事業を続けられる会社づくりです。

著者より

社長へのワンポイント

今後3年間で、自社のトラックを何台にしたいか考えてみてください。
そして、その台数になったとき、現在の配車担当者や事務員、管理職の体制で対応できるかを想像してみましょう。
もし難しいと感じるなら、増車の前に見直すべき業務があるかもしれません。会社を大きくする準備は、トラックを購入する前から始まっています。

次回は11月13日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

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