第143回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その72~「わが社はBOMできています」しかし、その実態は! ~BOM構築の基本的な考え方への勘違い、誤りが多く存在します~

流用化・標準化設計プラットフォームは稼働していないが、BOMの重要性に気付き、Excelを駆使しながらBOM構築に注力している設計部門にも遭遇します。しかし、そのBOMの実際には大きな勘違い、誤りが存在します。その主因はどこにあるのでしょうか? あらためて考えてみましょう。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その72~「わが社はBOMできています」しかし、その実態は! ~BOM構築の基本的な考え方への勘違い、誤りが多く存在します~

厳しい残暑が異常なほど続きます。その影響で、何と! 近くの酒屋の「シャリ金」在庫が底をついてしまいました。再入荷は不明とのことで、代替品もありません。資材部長の心持ちが分かります。

「BOMは構築しています」という設計部門をお預かりして、その誤りの多さに驚きます

流用化・標準化プラットフォームを構築して、流用化・標準化設計にDXを進めるという意識が最近、高まっていると感じています。

従って、Excelなどを使って「現行品のBOM(E-BOM)を構築してみよう」と数年前から実行している設計部門をお預かりすることがあります。構築したBOMを拝見すると「同一部品のユニット内重複」から始まり、誤りや勘違いが散見されます。

そうであっても、BOM構築の重要性を認識してチャレンジしていること自体は素晴らしいことです。しかし、やはり「BOM構築の基本ルール」は押さえておく必要があります。この基本ルールに対する情報は拙著も含め、多くの書籍がありますので、再読ください。

今回は、設計部門のBOM構築の誤りという断面だけではなく、誤りの原因に下流側の事情が絡んでいる実例を考えてみましょう。
ここに簡単なBOMをシャフトユニットとして図1に示します。

  • * 品目コードは省略します。

部品点数5点の大変シンプルなユニットです。親子関係と部品の必要数が理解できると思います。
さて、ここからが一番多い誤りの実例です。このシャフトユニットが2個必要な場合のBOMの記述としては図2、図3どちらが正しいでしょうか?

  • * 品目コードは省略します。

「あまりばかにするな!」というご指摘も聞こえてきそうではありますが、あえて伺っています。
もちろん、正解は図2ですが、図3のBOMを下流側に渡す、つまり出図している設計部門が実に多いのです。

BOMの誤りはどうして生まれるのでしょうか?

図2と図3の相違はユニットを構成する子部品の数量です。
BOMの大原則は「ユニットを構成する子部品数は、親部品であるユニットの数量に影響されない」ということです。それでは、なぜ、図3のようなBOMができてしまうのでしょうか?

状況として、下流側に(BOMを処理できる)生産管理システムが導入されていない場合に多く起きています。BOMと生産管理システムとの連携においては、「総所要量計算」という「計算をして必要数を導く」原理・原則が存在することが前提となっています。

しかし、生産管理システムを持たない下流側から言わせると、「要は、幾つ部品を取りそろえば(買えば)よいか?」という質問と、正しいBOMから、「だれが計算して総所要量を導き出すのか?」という作業に対する疑義が生じます。

「これだったら、今まで出図されていた部品表の方が楽だ」というクレームじみた下流側の意見を無視できなくなるわけです。

結果、「最初から総所要量が分かるBOMにしよう」と図3のような形態になってしまうのです。
手配数が明記されたBOMというカタチになりますが、このまま放置して、将来、生産管理システムが導入された場合、大変な事態になってしまうことは想像してもらえると思います。

ですから、BOMに手配数を記すことは避けるべきです。設計部門が生成するBOM(E-BOM)のあるべき姿(ルール)は厳守したいものです。

そのBOMを別のExcelに転記して、疑似的な所要量計算を実行して下流側に渡すことを行っている場合もあります。いろいろ留意点はありますが、生産管理システムが導入されるまでの移行策としては一案です。しかし、あくまでも暫定策です。

そして、Excelで構築するE-BOMには今回の誤りや、最新版管理、個人保有、品目コード体系管理、同一部品の重複、確定図面やドキュメントの管理、流用化、標準化……等々、多くの限界がありますので、一刻も早い流用化・標準化設計プラットフォームの導入をお勧めします。

以上

次回は11月6日(月)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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