第142回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その71~旧図面番号はどのように取り扱うべきか? ~新品目コード体系は決まったが数十万枚存在する旧図番の取り扱い方は?~

新たな品目コード体系が設定されれば、自動的にそのモノを指し示す図面の管理番号、つまり図番も自動的に生成されるが、現在まで流通していた旧図番はどのようにすればよいのか? ……悩み深い問題です。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その71~旧図面番号はどのように取り扱うべきか? ~新品目コード体系は決まったが数十万枚存在する旧図番の取り扱い方は?~

猛暑日記録を更新している毎日です。4冷ホッピーとシャリキンホッピーと「今日はどちらにしようか?」なんて優柔不断な性格丸出しで、冷蔵庫を開けてたたずんでいます。そして、とうとうピーピーと冷蔵庫に「早く決めん(閉めん)かい!」と怒られています。

まずは新品目コード体系や新図番体系をどの製品から使うのか

大きく分けて4通りが考えられます。もちろん、流用化標準化設計プラットフォームを使って、BOM構築を伴った設計への移行が前提となります。

1. 新規設計製品から採用

社歴が浅い場合はこの手段はアリです。もちろん、旧図面の流用もあるでしょうが、CADでコピー・アンド・ペーストして新たな図番で起こし直します。現在、流れている製品もそれほど品種が多くないでしょうから、新品目コード、図番を採番して順次BOM構築を進めることになります。

2. カタログに掲載されている、もしくは現行需要のある(動いている)製品から採用

社歴の長い製造業は必然的に製品品種が多いわけですから、前項(1項)を選択すると設計部門は楽ですが、全社的な効率改善にはなかなか結びつきません。そのための妥協策として、現在の稼ぎ頭となっている製品群から置換していくという考え方です。下流側の混乱をできるだけ抑えて、かつ全社効率もできるだけ早く高めたいという考え方です。

おのずと旧図番は時間の経過と共に消えてゆくことになります。しかし、妥協策であることを念頭に置くべきです。

3. 創業以降とはいわないが、保守部品の関与も含めて数十年のスパンで一気に採用

この決断の主軸はトップダウンです。当然、設計部門は「そのような置換、BOM構築に関わる余剰時間はありません。現業設計に差し障りが出ます」とあらがいます。しかし、「このような機会は二度とない」という強いトップダウンの背景があります。非常に潔い決断ではありますが、設計部門の実情を鑑みて何らかの工夫が必要です。「言うは易し、行うは難し」ということです。

4. 現行の図番を品目コードとして継承する(そのまま使う)

この場合、新規設計の場合はもちろん、品目コードも図番も設計プラットフォームから新体系で自動発番されることになります。従って、新・旧品目コード、図番が混在する結果になります。この手法を私が推奨することはありませんが、経営層も含めて、この選択を許す場合のみです。何よりDXという改革に距離を置くことになります。そして、必須条件もあります(後述します)。

どの方法を採用するのか? そしてその必須条件とは?

皆さん(会社)の実情に合わせた選択はどれになるでしょう? いわゆるDXそのものを実行するわけで、改革の機会として逃すわけにはいきません。従って、「つらくとも将来性を考えて」という視点は重要です。まさに先憂後楽ということです。

1項 「新規設計製品から採用」の場合

これはハッピーケースといえるでしょう。会社自体も若くベンチャー企業に多く見られるケースです。過去図面の新図番化もそれほど負担なく、同時に下流側に生産管理システムを新規導入すれば、あとはいかにこれらのシステムを使って全社効率を高めるか? という視点に焦点を絞っていけばよいことになります。
経営層の志向もDXに同調しており、設計プラットフォームとその基本情報であるBOMの重要性に早く気づきがあったということでしょう。

2項 「カタログに掲載されている、もしくは現行需要のある(動いている)製品から採用」の場合

これは「妥協策」として存在するでしょう。現業の繁忙感を見据えての判断です。しかし、重要なポイントは「下流側の混乱を最小限にするための方策」です。下流側のモノの認識は現行図番(旧図番)ですから、「ある日突然、新品目コード、新図番に変えました」とするわけにはいかないのです。

もちろん、BOMという新たな生産情報に対する慣れや訓練は必須ですが、移行策として旧図番、新図番の併記も必須です。その意味で、設計プラットフォームからアウトプットされる設計情報(基本属性情報)にも旧図番と新図番との互換情報がうまく下流側の生産管理システムに伝わるべきです。

3項 「創業以降とはいわないが、保守部品の関与も含めて数十年のスパンで一気に採用」の場合

数万枚から数十万枚の図番に対し、新規図番が付与されることになります。もちろん2S(整理整頓)や断捨離プロセスを経た図面が対象となりますが、それでも数万枚をゆうに超えるでしょう。

お預かりしたある会社の場合、トップ層は新品番・図番付与業務化して、新たに派遣技術者を雇用して専任化しました。設計プラットフォームのマスターに図面を確認しながら情報登録(基本属性情報)して、新図番を図面に記入して設計プラットフォームに登録する作業です。

時には「多品一葉図面」を「一品一葉」図面に仕立て直して登録します。派遣技術者の図面読解力がモノをいいますが、「まだ、類似図面散見されます」という相乗効果もありました。社員設計者同士の刺激にもなったでしょう。この手法は前項(2項)にも使えると思いますが、経営層の認識が必要です。

「経費というのはこういうことのために使う」という経営層の自信を垣間見ることができました。設計情報としての品目属性はさすがに設計者が入力すべきですが、設計プラットフォームのマスターの基本属性情報がほぼ完成している状態は設計者の「心と体」を軽くします。

4項 「現行の図番を品目コードとして継承する(そのまま使う)」の場合

これは図番を品目コード代替とする考え方で理論的には可能ですが、以下の必須条件を満足させる必要があります。

  • 図番の重複がない(重複が案外多い。図番台帳の人的管理の結果)
  • 一品一葉図面(バリアント図面解消や多品一葉図面の分離)

重ねて、意味あり可変長の図番も多く、結果、発番ルールを設計プラットフォームに委ねることはできませんから、全て「手入力」になります。「手入力の危うさ」は言うまでもありません。

他に厄介なテーマとして、基本的に図面を必要としない「購入品」の扱いはどのようにするのか……等々。現状維持というソフトランディングを選択した結果、DXとしての効果を希薄にしてしまう可能性があります。

いずれにせよ、流用化・標準化設計プラットフォームを構築して、設計部門からの成果物を全社効率改善につなげることを経営方針として決定したわけです。従って、この段階であまり安易な手段を選択してしまうことはできるだけ避けるべきと考えています。

その意味で、当事者である設計部門に選択を迫るべきではありません。多忙な現実を抱えながらの設計部門です。経営層がしっかり寄り添って「より良い選択が可能な条件とは何か? 何が必要か?」を共に考えるべきだと思っています。

以上

次回は10月6日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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