第141回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その70~開発・試作専用品目コード体系という考え方 ~品目コード体系の「無駄遣い」を防ぐために~

流用化標準化設計にふさわしい品目コード体系を新たに設定し、その有効桁数もできるだけ短縮して効率化を図ります。有限資産である品目コードの無駄遣いを防ぎたいという意識に対してどのような手段があるのでしょうか?

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その70~開発・試作専用品目コード体系という考え方 ~品目コード体系の「無駄遣い」を防ぐために~

梅雨明けの報道もない中、酷暑や大雨と極端な天候が続きます。私自身は酷暑に参っていますが、とうとうホッピーのおきてである三冷「冷ホッピー、冷キンミヤ、冷ジョッキ」を犯し、氷を入れて四冷にしてしまいました。冷たいけれども、だんだん薄まる白ホッピーに負けまいと早飲みで対応しています(笑)

有限資源となった品目コード体系を無駄遣いしないために

品目コード体系の「無駄遣い」とは、どのような時に発生するのでしょうか?

「設計部門を二階建てにする」というコンセプトは何度も述べていますが、今回のコラムの主旨である、無駄遣いの発生源を認識するために下図を添付します。

品目コード体系の無駄遣いの原因は、2階からアウトプットされる設計成果物にあるのです。ここを「例外出図」と呼んでいます。私はこの部分の設計成果物は、あえてBOMとしての体裁を整えての出図は難しいと考えています。

特に試作開発、開発個別設計の場合、できるだけ流用化設計は試みるものの、限られた設計時間で「やってみなければ分からない」というリスクを抱えて、多くの新規の自社設計部品、購入部品、ソフトウェア(モジュール)が発生します。

当然、これらは品目コードを新たに消費することになります。手配表(買い物リスト)にせよ、五月雨出図にせよ、ドンドン新規コードが発行されるわけです。

さらに組立ステージになれば、不具合解消のための設変(設計変更)が追われるように繰り返され、新規コードが消費されていきます。このこと自体は責められるべきではないのですが(新規開発チャレンジ)、残念ながら、新規に採番されたコードが最終的にどの程度「生き残るか?」ということなのです。

「いずれの新品目コードも開発・試作完成まで分かりません」というのが本音でしょう。それはそうでしょう、やったことのない新たなチャレンジをしているわけですから……。

結果、「ボツった」部品の数だけ品目コードが「欠番」となるわけです。この欠番数が年間、数十点であれば無視もできますが、数百~数万となれば何らかの方策を考える必要があります。

開発・試作専用品目コード体系

考え方として、生き残るか否か分からない品目コードに対して、「使い捨て品目コード」というコンセプトの導入です。正規品目コードは使わずに開発・試作専用品目コード体系を設定するというやり方です。

前回のコラムで、保守事業を支えるための品目コード体系の話をしましたが、同様に

に対して、以下のコード体系を新設します。

ここには、自社設計や購入品という仕分けは存在しません。モノとして存在する全ての総称として付番されます。

特徴としては年度(西暦)が畳み込まれている点です。例えば、「3年経過したら全て消去する」というルールを作っておけば、「ごみコード」が蓄積されることもありません。ただし、そのためには大変重要な設計ルールを必要とします。

上図にもありますが、
「試作完成した時に、最終形設計成果物を必ず正規品目コード体系によってBOM構築する」
ということです。

「やれやれ何とか開発・試作品は完成した!」
「ご苦労さまでした」と言いたいのですが、その達成感に酔いしれている暇はなく、買い物リスト、緊急手配リスト、メカ系・エレキ系の赤修正図面、パッチだらけのソフトウェア等々、全てに開発・試作専用品目コードが付番されているわけで、それらを正規品目コードに置換して「最終完成品と一致したBOM構築」を完成させる必要があるのです。

設計者として「なんだか仕事が増える感じだな?」という声も聞こえてきそうですが、これを実行しないと「同じものを2度作れる製造業にはなれません」と申し上げています。

設計者が繁忙にかまけて、「そのうち設変しよう」と放置した結果、開発・試作製品の再受注があると生産現場が前回同様、いや、それ以上大混乱することになります。結果、開発・試作時に発生した経費の上塗りをすることになり、経営的視点から見ても無駄な経費を積み上げてしまいます。

その意味で、

  • 最終形製品と設計成果物の一致
  • 正規コードによるBOM構築

は必須なのです。何より「同じものが2度作れる製造業になれる」のですから。

これら設計部門の2階における設計ルールが確立・理解されれば、正規品目コードの無駄遣いを防ぐための「開発・試作専用コード体系」がうまく機能することになります。

以上

次回は9月1日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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