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第140回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その69~保守部品に対する品目コード体系はどのように考えるべきか? ~生産用部品の品目コード体系と相関させるべきか否か!~
これまで、保守部品事業が儲(もう)かっていない中小中堅製造業を多く預かってきました。その主因は生産用、保守用の区別なく管理され、保守部品は営業部門が「勝手に発注」したり、在庫から「勝手に横取り」したりという野放図状態でした。
設計部門BOM改善コンサルの現場から~その69~保守部品に対する品目コード体系はどのように考えるべきか? ~生産用部品の品目コード体系と相関させるべきか否か!~
届きました! フィンランドの友人からラズベリーVODKA、グレープフルーツVODKA。いずれも80Proofの根性入り。まずはかき氷を作って、グレープフルーツ味のVODKAを惜しげもなくかけまわします。甘味料が入っていないのに、ほのかな甘さとフルーティーなアロマが梅雨時のジメジメ感を吹き飛ばしてくれます。「しばらくこれだな! ホッピー+シャリキン、すまん」
「製造業は二毛作」を忘れてしまっている
何度も述べていますが、製造業は二毛作であるべきです。
- 一毛作目
- 製品の販売利益
- 二毛作目
- 保守部品の販売利益
一毛作目の利益に躍起となる経営者も、保守部品対応には営業部門に放置プレーが多く、「儲かっていますか?」という質問に「あまり儲かっていません」とのあいまいな回答ばかりです。
調べてみると、その実態は、赤字がほとんどです。せっかく製品販売で儲けた利益を保守部品販売につぎ込んでいる実態です。儲からないシーケンスはこのような感じです……
- 顧客から担当営業に保守部品の問い合わせがある
- 営業は年式やバージョンの確認のために、設計部門に「この部品どの部品? 価格は? 納期は?」と問い合わせる
- 多忙な設計部門はそれでも一生懸命探し、確認して回答する
- その情報を基に、営業は購買部門に発注する(当然発注単価は生産用と同一)
- 顧客から即納を迫られると、営業は在庫倉庫に行って「あった、あった」とばかりに生産用にひも付け済みの部品を横取りする。結果、生産現場では部品紛失の憂き目を見て、混乱する。
しかし、残念ながらこの営業の行為は、CSの一環などと話をすり替えられて全社効率を落としていくのです。
保守部品事業のプロフィットセンター化を目指す!
儲からない理由の多くは「保守部品対応は営業部門分掌である」として、顧客との距離感を理由に野放図に(好き勝手に)やらせていた結果です。
これも何度も述べていますが、生産と保守との間には大きな隔たりがあり、
- 生産
- 足し算。部品を足して製品にする
- 保守
- 引き算と足し算。不具合を起こしている部品を外して、新たな部品を取り付ける(脱・着)
この違いを見てもプロフィットセンター化を目指すためには、何が必要十分条件か理解してもらえるでしょう。特に不具合を起こしている部品の取り外しや新たな部品の取り付けに関しては、顧客の保守部門の目線で考慮すべきです。
例えば、「この部分は単品部品の交換は難しいから、アセンブリー交換にしよう。そのための作業マニュアルや治具も作成して付属させよう」などの顧客の保守要員が「この会社の保守部品キットはよく考えてくれている」という印象が本来のCSにつながると考えます。
顧客保守部門のミッションは設備の稼働を維持することですから、そのために保守しやすい部品は「高価」でも言い値で買ってくれます。特に設備が稼働すればするほどストレスが掛かる、例えば、高温度熱炉系や土木系などはIoTの進化も伴って事前保全保守アドバイスも可能になっています。
このような良好な関係が構築できれば、顧客の保守部門責任者から「来年度の保守部品予算はどのくらい確保しておけばよいかな?」と、ぬれ手で粟(あわ)とまでは言わないまでも二毛作たる兆しが見えてきます。そのような付加価値を上手に提供して、しっかりとプロフィットセンター化を目指すべきです。
当然そのためには、生産用部品との差別化は必須です。そもそも生産用に10個まとめて製作したものと、保守用に納期特急で1個製作したものと原価が同じはずがありません。
プロフィットセンター化への第一歩は保守部品品目コード体系の構築
これも何度か紹介していますが、当社が推奨している標準的な品目コードの基本体系は以下のようなものです。
今回は、図番は省略して、あくまで品目コードにスポットライトを当てましょう。
生産用部品のコード体系として大分類ヘッダーが欲しい場合
が典型的な例です。
さてここで大きな論議が巻き起こります。保守部品用コード体系はどうするのか? です。
大別して、
- 生産用部品と目視上で関連付けたい。営業部門とのコミュニケーションもその方が誤解は少ない。
- プロフィットセンター化してS-BOMも構築していくのだから、生産用と目視上で関連付ける必要はない。顧客には保守用品目コード体系にのっとったパーツリストを渡せばよい。さらに別途、保守部品在庫を管理して保守部品の原価管理につなげたい。
に二分されます。
(1)の言い分は、今まで営業部門からの都度問い合わせにかなり疲弊している感じがありました。「何でもかんでも設計部門に問い合わせてくる営業部門」という状態を少しでも改善したいということだと考えています。
(2)はプロフィットセンター化をしっかりしたイメージでととらえていると感じます。しばらくは戸惑いもあるかもしれませんが、時間が解決してくれるでしょう。もちろん、流用化標準化設計プラットフォームで管理するわけですから、生産用部品とのひも付けは属性情報として必須であることは理解してもらえるでしょう。生産管理システム側も同様です。
(2)を選択した場合は、腹をくくって保守部品用専用品目コード体系を作れば良いわけです。図面は生産用を流用しても良いですし、コピー&ペーストして別図番管理しても良いでしょう。生産用部品と保守用部品と外見は全く同じでも原価も在庫も異なる管理とすることになります。プロフィットセンター化を目指すわけですから当然、保守部品定価リストは高価になるはずです。
悩みはここからです。
「(2)の選択は頭で理解できるし、そうあるべきだ……。しかし、一足飛びにそこまでいくと全社的な混乱が起きないか心配だ」というもの。確かにコンサルタント的な視点から無視するわけにはいきません。
そこで移行策として以下のような品目コード体系を提案しました。
生産用の桁数が1桁増えますが、品目コードの管理体系として、可変長はいろいろな弊害をもたらすため、このようにしました。
ただし、生産用部品のREVが上がった時に保守的観点からREVが上がる前の部品を維持したいという場合があります。その場合の取り扱いは、別品番新規取得で維持管理するなどのルールは必要です。
S-BOMの構築は、これら保守用部品品目コード体系が決まってようやく可能になります。経営的に保守事業のプロフィットセンター化を目指すという基本姿勢がない限り、S-BOMを構築しても意味がありません。「保守ビジネスで儲ける!」という二毛作経営に踏み出すか否かです。
最後に「大分類ヘッダーにアルファベットが必要?」という意見が出ました。その根拠は「確かに手入力は減っていくだろうがそれでも、ここしばらくはその機会はある」というもの。
全て数字にすれば、「テンキー(Ten key)ボード」で入力できるという意見です(フルキーボード不要)。
なるほど……
という感じでしょうか。なかなか名案だと思いました。
「保守業務のプロフィットセンター化を目指すことを真剣に考える」とは品目コード体系の確立から始まるということを再度認識してください。
以上
次回は8月4日(金)の更新予定です。
書籍ご案内
当コラムをまとめた書籍『中小企業だからこそできる BOMで会社の利益体質を改善しよう!』とその第二弾としての新刊『BOMで実践!設計部門改革バイブル 中小・中堅製造業の生き残る道』を日刊工業新聞社から出版しています。
BOM構築によって中小企業が強い企業に生まれ変わる具体策とコツをご提案しています。
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