第139回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その68~中小中堅製造業の限界集落化 ~働く社員の年齢断層化が進んでいる!~

お預かりする中小中堅製造業の現場の景色を見て最近思うことは、働く社員の年齢層の断層化を感じてしまうことです。高年齢(特に最近進んでいる)層、わずかだが必死で集めた若年層、そして見当たらない中堅層は中抜けの状態です。このままで会社組織は維持できるのでしょうか?

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その68~中小中堅製造業の限界集落化 ~働く社員の年齢断層化が進んでいる!~

これから梅雨が始まるというのに、気温が高い日が続き「シャリ金ホッピー」を選択する日々です。やはり異常気象なのでしょうか? フィンランドの友人から毎年送られてくるワイルドラズベリー味VODKA、グレープフルーツ味VODKAを今か今かと待っています。次回には呑みレポ(?)ができると思います。楽しみィ~~~。

中小中堅製造業の限界集落化が進む原因は何か?

今回のコラムのテーマを後押ししたのは、ある中堅ベンチャー企業が主催するWeb配信セミナーの撮影収録に訪れた時です。今どきのハイタワーオフィスにフリーアドレスで働いているスタッフの皆さんを見た時「若!」という言葉が口をついてしまいました。私の孫? と見紛(まが)う年齢のスタッフばかりでした。
普段お預かりしている製造業とは明らかに景色が異なるのでした。

社員の高齢化が進む製造業側からの言い分として、「60歳定年制だったが、65歳年金支給開始の空白を埋めるために、そして、70歳まで働ける人材確保を目指して、再雇用制度を作り雇用延長をしている」というもの。確かにモノつくり側(生産側)の貴重なノウハウを保持している人材ですから、健康であれば支払い給与以上の効果を期待できると考えます。

しかし、いずれはフェードアウトしていく高年齢層です。残念ながら、何も策を講じなければ製造業の限界集落化に拍車をかける主因でもあるわけです。

中間層欠落の主因は、リーマンショックを始めとする製造業ニッポンを苦しめた経済環境であると考えています。やはり、その当時、体力のない中小中堅製造業の多くは採用そのものを諦めることを選択したのです。従って、その当時の新卒群は体力のある大手会社を目指すことになりました。しかし、全てが採用されるわけもなく、ご存じのように40~50歳代の引きこもりやフリーター(非正規雇用)が多いのは、その当時の就職難民の末路であったと考えています。

そのような厳しい経済環境の中でも早期退職勧告を出して採用枠を確保しつつ、新規採用を継続していた中小中堅製造業の経営者を知っていますが、まさに経営者マターの神髄といえます。「万難を排して新規採用だけは継続する」という経営者の強い意志は、10年後20年後に絶大な経営効果を生み出すと考えています。「新陳代謝の重要性」が経営の軸になっているのです。

その意味で「社員は家族だから解雇できない」などという思考の経営者を持つ製造業は、やはり限界集落化が進んでしまうのです。

一方、少子化という日本社会全体の動向にはどうやってもあらがえません。
現在の大企業と中小企業の有効求人倍率は1:7といわれています。圧倒的な差があるわけです。従って、経営者の姿勢も「若者は来るもの拒まず」で玉石混交の採用状態です。そのため定着率は悪く、特に地方にある工場の採用実態は厳しい状態です。

しかし、そうであっても、モノつくり現場には経験値豊富で貴重なノウハウを所持する高年齢層が存在するわけで、数少ない若年層に対し、いわゆる「匠(たくみ)の移転」を真剣に考え、企画する必要があるのです。「おじいさん、おばあさんが孫に教える」という感じですが、しっかり業務としてプログラム化して、実行するのか否か、これも経営者マターとして直近の判断が迫られていると考えます。何より限界集落化を軽減する大切なプログラムであると考えています。

中小中堅製造業の設計部門はさらに厳しい状態にある

設計部門はモノつくり現場とは少し異なる様相を呈しています。

「蛸壺(たこつぼ)設計」でこの道数十年の設計者には、「ICTによる流用化・標準化設計へのDXを実行しよう!」という私の提案はなかなか届きません。「邪魔はしないから若い連中でやってくれ」という声なき声が聞こえます(若い連中? 見当たらないのですが……)。

そこには「そんなことできるわけない」という意識が存在するからなのでしょう。
NOとは言わないがやってくれないのですから、遅かれ早かれ「抵抗勢力」となってしまいます。

2022年問題という大学進学率の低下が始まり、ただでさえも工学系の新卒が減る中、今後減っても増える見込みがない工学系新卒採用環境が製造業ニッポンの現実ということになります。まさに設計者の三無い問題(設計者が来ない、育てられない、育たない)です。

私はこれまで、これらの問題に対する対応策として、外国人技術者の採用を積極的に推奨していました。

第97回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その31~外国人設計者の採用を真剣に考える

しかし、残念ながらコロナ禍や政変・紛争(ミャンマー、ウクライナなど)の影響は大変大きく、数例にとどまっています。

コロナ禍が落ち着いてきた現状から再度試みるべきか否か……思案に暮れているところです。
どうであっても日本人工学系新卒の絶対値が減少することが明らかなわけですから、今までの発想を大きく超えた若年層設計者の採用方法を考え、選択することは自社の限界集落化の脱却手法として大変重要な経営者マターといえるでしょう。

その環境設定として、設計部門の標準言語は「英語にしよう!」はDXの結果と合わせて特におすすめしています。

以上

次回は7月7日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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