第138回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その67~AI・図面検索を考える「基礎編」 ~AI・図面検索システムは設計成果物の2S・断捨離に有効か?~

流用化・標準化設計プラットフォーム構築時の最大の難関である、設計成果物の2Sに対する支援システムとしてAI・図面検索システムをようやく利用できる環境になってきました。まずは「基礎編」として今までの経緯も含めて説明します。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その67~AI・図面検索を考える「基礎編」 ~AI・図面検索システムは設計成果物の2S・断捨離に有効か?~

新年度を迎えて、ホッピーもキンミヤも値上げです。値が上がったら呑むのを止めるわけではありませんが、値上がり分のわずかでもそれぞれの企業で働く人々に還元されれば良いな……などと考えながら酔っています。

そもそもAI・検索とはどうして誕生したのでしょう?

数十年前から「自動同一形状検査」という要求は存在していました。
その頃は「パターン認識」という呼び方をされ(AIの黎明〈れいめい〉期と呼ぶ考え方もありますが……)、解像度の低いスキャンカメラ(走査線カメラ)と処理速度は今のスマートフォンに劣る能力のPCで行っていました。そしてパターンを定義する「テンプレート」というひな型を用意して、カメラで撮った対象物とテンプレートとの形状境界線を強調比較してGO / NOGOを判定していました。

想像できるように対象物が傾いたり、カメラの倍率がずれたりすればNOGOの連続となり、苦労した記憶があります。それでも根強い期待が存在したのは、人間の視覚や判断能力の時間的限界があったからです。
つまり、疲労しない同一形状検査能力を求めた結果です。

そして、ネットワーク・コンピューターという神経ネットワークへのチャレンジのステージを経て、世の中にAIという新たなトレンドが急速に発展し、結果、「学習」という自己成長能力が出現しました。今、世間を賑(にぎ)わしている「ChatGPT」などはその最前線に存在するのでしょう。

前述したパターン認識はロジック判定ですから、経時的な自己成長は期待できません。せいぜいパターン数を人間が増やして例外処理をさせるのが関の山でした。想像してもらえるように例外処理パターン数が増えれば増えるほど精度は落ちていくことになります。

私が商品としてのAI・同一形状検査システムに出会ったのが3年ほど前です。
AIとしての学習アルゴニズムの詳細は分かりませんが、CCDカメラの高精細度化やPCの高速化、特にe-SPORTSやゲーム市場に刺激され、グラボ(グラフィックボード)用チップの高速化は、図面AI検索システムの成長を促す結果になったと考えています。

そもそも当初のAI検索システムのニーズは図面検索ではなく、例えば……
身近には、お弁当のおかず欠品・過剰の検査から始まって、案外納得させられた工事(特に原子力など、携帯品の有無が人命に関わる)担当者の携帯品・装備検査という検査対象の位置や形状の機械的な定義が難しく、フラクチュエーション(バラツキ)が多いものが対象でした。

パターン認識ではこのような対象には、とても使い物になりません。
まさにAIの学習能力がモノを言うわけでGO / NOGOの閾値(いきち)を自身で適応させていくことができて、GO / NOGOの中間的な「?」、それも「60%?」というグレーゾーンへの答えも出してくれます。この辺りの能力も含めて将来の進化を大変期待されました。

見積作業効率化・高精度化というニーズがAI・図面検索を成長させた?

「これと同じもの、類似したものはどれ?」というニーズは前々から存在していました。
これまでは経験値といいますか、属人的な記憶と勘に頼っていたわけですが……。購買部門の目線から「こんなに似た部品なのに、なんで2倍もコストが違うの!?」とか「A外注からB外注に転注したら価格が半分だった!」とかがありました。

一方、外注の目線からすれば「以前作った部品に似ているけれど、いくらで見積したっけ?」。もっと厳しい例としては、顧客から「A部品とB部品とタップ穴2個違いなのに何でこんなに見積額が違うの?」というクレームです。そう言われても勘と経験で見積している立場としては、論理的な根拠を示すことはできないわけです。

従って、発注する方も、受注する方も過去実績や類似部品見積精度、さらにそれらの高速化が求められたわけです。

そこで注目されたのがAIによる類似形状検索能力でした。先述したテンプレート検索では100/0の世界ですから、この要求には答えられません。画期的な能力として特筆すべきは「グレーゾーンの検索能力」でした。

「今回の部品Bは部品Aに類似度X%です」という検索結果はまさに画期的でした。
良くも悪くも勘と経験で見積してきた外注側、そしてそれを受け入れてきた購買側双方に妥協する根拠を与えてくれることになります。

もちろん、AIですから「学習」するプロセスが必要です。図面として各社が保有する設計成果物は、最終製品や設計プロセスによってさまざまです。このさまざまな傾向をAIが学び取る必要があります。幸いなのは、この学習に人手がかかるわけでなく、AI自身が自動的に(外見上)行ってくれます。対象となる図面(何十万枚……)を記憶媒体やクラウドに上げてAIが学習終了するのを待ちます。

このプロセスを「AIに情報を食わせる」と俗称ですが呼びます。「うまく消化して学んでほしい」という気持ちが感じられますね。

流用化標準化設計プラットフォームの資産層構築の最重要課題である設計成果物の2Sの強力な支援となる!?

私は流用化標準化設計プラットフォームの資産層形成のメインイベントである設計成果物の2Sと断捨離による自社のカタログ作成が最も大切で、それゆえ、人間業として負担の大きい作業であることを述べてきました。

形状類似=機能類似と安易に定義はできませんが、まずは「部品の仲間集め初段フィルター」として、このAIシステムは使えそうです。

特に直近になって、「食わせ方」や「学習傾向のファインチューニング」にあまりユーザーが苦労することなく類似検索が可能になって、そのAIパッケージの種類(メーカー数)も増えてきました。

私がお預かりするコンサルタント先でも採用が始まっています。皆さんの中にも興味をお持ちの方はいると考えていますが、POCと呼ばれるスモールスケールのお試しでは「わが社の数十万枚の図面の2S・断捨離に有効である」とは言い切れません。この辺りが新たなシステムに対する判断の難しさではありますが、「遅かれ早かれ、その検討を迫られる中小中堅製造業である」と考えています。

従って、まだ「強力な支援策である!」と断言できるステージではありませんが、今回は「基礎編」として述べました。近々には経過報告や、少し後になるかもしれませんが結果報告も可能にしたいと考えています。

蛇足になるやもしれませんが、本コラム執筆にはChatGPTを利用していないことをお約束いたします。良し悪しは別として……(笑)

以上

次回は6月5日(月)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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