第146回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その75~小規模製造業の設計部門をどのように支えていくべきか? ~設計者が数人の設計部門、そのDXの考え方~

少子化+経済環境も手伝って、小規模製造業における設計部門の将来の見通しは決して明るくありません。それでも生き残りをかけて全社効率を高めるべく経営者は奮闘しています。しかし、DXという手段を導入しても期待した効果は得られず、相談が増えている現実があります。どのように支援すべきか! 難題です。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その75~小規模製造業の設計部門をどのように支えていくべきか? ~設計者が数人の設計部門、そのDXの考え方~

謹賀新年

本コラムも12回目のお正月を迎えることになりました。干支(えと)を一回りしたことになります。
長いご愛読を感謝すると共に、問題・課題が尽きない製造業ニッポンの将来を新たな年を迎えてあらためて考えています。

皆さんも良いお正月を迎えられたことと思います。
しかし、お正月は結構ですなー。
朝からホッピーだろうがキンミヤだろうが、何に(誰に)遠慮することなく心行くまで飲めます(笑)。

小規模製造業の設計部門の実情

新年早々、「もう少し明るく、気持ちが軽くなる話題を」と考えたのですが、いくら酩酊(めいてい)しても頭から離れてくれないテーマがあります。

中堅製造業の設計部門のDXによる高効率化は、流用化・標準化設計プラットフォームの構築という具体的な目標と結びついて、ようやくビジョン化ができてきたと感じています。

一方、それよりも規模が小さい小規模製造業の設計部門に同様の提案が可能か否か……悩むところです。

小規模製造業のDXがなかなか稼働しない原因を探ってみましょう。

1. 圧倒的な工数不足

現業を止めてでもシステム稼働すべきという経営者はいません。「うまく両方やってほしい」と言われても……
おのずとリーダー的な人材がブラック残業を重ねて、システムを構築していきます。このことは良くも悪くもリーダー的人材の独断と偏見がそのシステムを形作ることとなり、本来求められる「設計成果物の共有」という期待効果をそいでいくことになります。

2. 設計者の流動化による「技量」低下

全国的に設計者不足は継続していますから、流動化しやすい労働環境が続きます。自社に対するロイヤリティとか愛着とかはあまり期待できません。もちろん、年収という手段はありますが、経営者は設計者同士の「和」を崩すことを恐れて、バランスを取りたいというような心持ちから、積極的な差別化を恐れます。もう一方の悩みとして、小規模製造業の固定費を圧迫する現実とも折り合いを付けなければなりません。

いわゆる転職を考えている設計者は自己実現を求めており、おのずと「技量」の高い設計者から離職していく傾向となります。つまり「技量」の低い設計者が残されていくのです。
これは、設計部門幹部、経営者共に頭の痛い問題です。

3. 結局リーダー的人材が退職してしまう

結果、構築しかけのシステムは中途半端な状態で残されて、次に任命された担当者が「見よう見まね」で構築にチャレンジはするものの、独断と偏見で構築されていますから実際は「やぶの中」となってしまいます。最終的には結局「振り出しに戻る」という悲しい結果になってしまいます。

このようなことを繰り返し、数年が経過して、「賽(さい)の河原」状態で再び当社に相談が舞い込みます。もちろん、お預かりした経緯からご相談に乗り、現状認識からあらためて始めることになるのですが、妙案などありません。

小規模製造業は、経営者マインド次第にならざるを得ない

上述した問題が一掃されるならいざ知らず、問題を解決する「魔法の粉」はないのです。
それでも、経営者の姿勢はこの厳しい状況を好転させるキーポイントになります。小規模製造業はやはり経営者の「経営姿勢次第だな」とあらためて感じてしまいます。

どのように経営姿勢の場合分けができるのか述べてみますと……

1. 社長からの言い訳(?)としては「システム稼働をさせられない現在の設計者に責任転嫁はできません。うまく稼働させられるようなご指導をお願いします」というものです。これはまさに「答えを教えてください」、つまり「魔法の粉」を振りかけてください。という意思そのものです。

「谷口さんはコンサルタントなのですから『魔法の粉』は持っているでしょう?」「隠さず振りかけてください」と言わんばかりです。私としては「そのような『魔法の粉』があれば、私が一番ほしい」という声を押し殺すのが精いっぱいです。

私はこう述べます「私は御社に就職するわけではなく、いずれは去っていくのです。ですからシステムを最終的に稼働させるのは皆さんなのです!」と語気を強めても訴えています。しかし。それは現存する設計者にはプレッシャーと感じ取られ、「萎縮させたくない」という経営姿勢につながってしまいます。
緩い、甘い環境で繰り返しても、再び訪れる結果は同じでしょう。

2. 極端にいえば「私1人になってもシステムを稼働させてみせる!」という強い意志を持つ経営者の存在です。
先述した設計者の流動化に対しても、技量が高く必要な人材にはメリハリの利いたインセンティブ(主に年収)を与えて、かつ、設計者同士のあつれきを恐れません。結局は「技量が低い設計者が退社することを恐れない」ということです。
ただし、設計者同士というのはこの技量に対する自己評価はしっかりとわきまえているものです。従って、待遇格差に対しても理解をする場合が多いと考えています。

小規模製造業の場合、「少数精鋭」という1人当たりの付加価値の向上以外、生き残りは図れませんので、そこに注力する経営者(マインド)の有無が、おのずと結果を決めてしまうと思います。
たとえ小規模であっても、業種業態の特異性さえ維持していればニーズは存在するわけですから、身の丈に合ったシステムの選択と、それに伴うDXを遂行することが「山椒(さんしょう)は小粒でもピリリと辛い」という小規模製造業に変革していくと考えています。

中堅製造業のDXイメージが固まりつつある今、本年からは小規模製造業のDXの在り方に注力したいという気持ちです。
新年を迎えての抱負として、テーマにしたいと思っています。

以上

次回は2月2日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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