デジタルトランスフォーメーション推進におけるAIの役割と課題

既存システムの老朽化により、将来的には多大な経済損失が起こると予想されています。「デジタル化により生活を改善する」というコンセプトであり、ビジネスにおいてもさまざまな効率化をもたらすと考えられているのが、一般的には「DX」として知られるデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)という言葉です。上述した経済損失を回避するためには、デジタルトランスフォーメーションへの注力が不可欠だと考えられています。デジタルトランスフォーメーションに活用するテクノロジーとして、IoT、クラウド、ビッグデータなどさまざまなものがありますが、AIもその一つです。この記事では、デジタルトランスフォーメーションにおけるAIの役割や、活用における課題についてご紹介します。

デジタルトランスフォーメーション推進におけるAIの役割

デジタルトランスフォーメーションにおいて重要な役割を担うAI。以下ではAIがどのような役割を担っていくのか、具体的にご紹介します。

人間の作業を一部代行する

AIは今まで人間でしか行えなかった作業の一部を代行できます。これは、AIが画像や音声の認識を行えるためです。こうした要素の認識はこれまで人間しか行えず、機械では判断ができないと考えられていました。

企業のコストのうち大部分を占めるのが人件費です。AIに人間の作業を代行させることにより、人件費を抑えられます。軽減したコストによって生まれた余裕を、投資にまわすことも可能です。業務効率化と投資配分の最適化により、競争力の向上につながります。

人間をより生産性の高い作業に従事させられるのもメリットです。AIの活用によって空いた作業時間で、営業など売り上げの増加につながりやすい業務を行えます。既存ビジネスとは違う事業を立ち上げることにより、自社の新たな価値を創出することも可能です。

データから会社の将来性や成長性を予測する

AIに膨大な過去のデータの分析結果を読み込ませると、目的に応じた予測を一定程度行うことができます。具体的には、事業ごとの成長性やリスクなどを予測することが可能です。

こうした予測は通常人間が行っており、知識や経験を要します。知識や経験を要する作業なため、作業者によってばらつきがあり、精度についても差異が発生してします。しかしAIであれば、人間の処理能力を超える膨大な量のデータ分析ができ、いつでも均質な予測の精度を実現できます。

このことから、より会社経営を安定的に推進させるためには、AIを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)化は欠かせません。

新規ビジネスを立案する

機械学習により、大量のデータから独自のパターンや法則を発見できるもAIの魅力です。AIが発見した購買行動の法則や、売り上げ向上の要因をもとにすれば、新しいビジネスモデルを容易に構築できます。SNSなどの大量のテキストデータから感情分析を行うことで、顧客のニーズを察知することも可能です。

従来は、こうした判断を人間の経験や勘に頼っていたため、確度が不明確な戦略に頼らざるを得ない側面がありました。デジタルトランスフォーメーションにより、データを根拠とした新規ビジネスを立案することができます。

デジタルトランスフォーメーション推進におけるAIの活用事例

デジタルトランスフォーメーションへの取り組みにおいてAIはどのように活用されているのでしょうか?デジタルトランスフォーメーションとAIの関係性については、実際の活用事例を知るとイメージしやすいかもしれません。以下では、デジタルトランスフォーメーションにおけるAIの活用事例を解説します。

配車システム

タクシー会社、運送会社など、配車を行う企業では、既にAIが多く導入されています。過去のデータからAIが需要の多い時間・場所を予測するため、重点的に配車することが可能です。効率の良い経路の組み合わせも検索できます。

チャットボット

チャットボットは、チャットでの返信をAIが代替する機能です。公式サイトの問い合わせページなどに組み込むことで、顧客とのコミュニケーションを一部自動化できます。定型的な質問についてはチャットボットが応答し、解決しなかった場合は人間のオペレーターが対応する仕組みが一般的です。AIのチャットボットを導入することにより、24時間のサポート体制を実現できます。人間のオペレーターが対応する機会が減るため、人件費を抑えられる点もポイントです。

ダイナミックプライシング

ダイナミックプライシングとは、タイミングに応じて商品・サービスの価格が変動することです。価格は、需要と供給のバランスを基に決められます。飛行機の料金や宿泊料金を決める仕組みとして一般的です。このダイナミックプライシングにAIを活用する動きが目立っています。高速の処理により、適切な価格をスピーディーに顧客へ提供可能です。また、販売実績、在庫、他のイベント、天候、SNSから予測されるニーズなど、複雑な条件を組み込むこともできます。

保険金支払い審査

保険金の支払い審査にAIを活用するケースも増えてきています。担当者が判断に迷った場合は、AIに問い合わせることでサポートを受けられます。過去の類似事例やポイントが提示されるため、経験が浅い担当者でも対応が可能です。審査結果にばらつきが生まれないため、属人化を防ぐこともできます。また、契約者にとっては、審査結果通達までの時間が短くなる点もメリットです。既に大手保険会社が審査にAIを活用しており、今後も業界内で普及していく見込みです。

製品の外観検査(目視検査)

生産業・製造業では、品質管理の一環として製品の外観検査が行われています。形状やサイズ、色を確認し、基準に合わないものを除外するのが目的です。また、破損などをチェックする目的もあります。これまで人間が目視検査していましたが、生産性を今以上向上させるのは困難だと考えられていました。AIの進歩により、外観検査の自動化も現実的になってきています。さらに品質のばらつきが減少したほか、他の生産的な作業に人的リソースをまわせるようになりました。

SFA(営業支援システム)

SFA(Sales Force Automation)は「営業支援システム」のことであり、営業活動の一部を自動化できるツールです。顧客管理、スケジュール管理、タスク管理、営業活動のデータ分析などができます。以前から営業活動を効率化するツールとして普及していましたが、近年はAIとのマッチングも注目されています。AIが組み込まれたSFAでは、その段階で実施すべき営業活動をサジェストで確認可能です。営業はノウハウが求められることから、属人化しやすい点が問題でした。AIが組み込まれたSFAを利用することで、営業活動をスピーディーにかつ正確に行えます。

デジタルトランスフォーメーション推進にAIを活用する際の課題

デジタルトランスフォーメーションにおけるAI活用には課題もあります。実際にAIを業務活用する場合は、あらかじめこの課題について知っておくとスムーズです。以下では、代表的な課題をご紹介します。

AI人材の確保・育成に取り組む必要がある

AIの活用には、知見のある人材の確保や育成が不可欠です。一方で、今後はAI関連の人材不足状態が続くことが予想されています。これは、AI市場の成長に伴う需要に供給が追い付かない状況になっているためです。2030年時のAI関連の人材の供給は約12万人で、需要は約24.3万人が見込まれており、深刻な人材不足が予見されています。これは、AI市場の年平均成長率を16.1%とした場合の試算です。業界を問わずAIの重要性が認識され競争の激化が予想されるため、AI関連の人材を早期に確保するか、もしくは育成に取り組む必要があるでしょう。また、採用後の育成までを見据えた、中長期的な人材投資計画が求められます。

AIが持つ問題点に留意する

誤った判断を下すことがある

AIに判断を促す場合は、過信するのは禁物です。分析の条件やデータの偏りなどで、AIの判断にもバイアスが入り込むことは十分に考えられます。例として、顔認識技術などの精度は現状100%ではありません。

個人情報流出のリスクがある

AIの精度を高めるために、多種多様なデータを大量に収集することが考えられます。その収集されるデータの中に、個人情報を含むデータがある場合には、取り扱いに注意が必要です。Webアクセス情報を活用したWeb広告などがこの例に当てはまりますが、顧客の利便性を追求するあまり、個人の情報が企業に盗み見られていると感じることも少なくありません。
AIに活用するデータにどこまでの個人情報を含めるのか、しっかりと事前に調査・検討する必要があります。

デジタルトランスフォーメーションの推進においてAIは重要なキーポイント

デジタルトランスフォーメーションへの取り組みにおけるAIの重要性や活用事例、導入における課題についてご紹介しました。活用において慎重さが求められるものの、デジタルトランスフォーメーションの取り組みの効果を最大化するうえで、AIは極めて重要なテクノロジーといえます。レガシーシステムを活用している場合は、近い将来、デジタルトランスフォーメーションによる業務効率化の必要性に直面することになるでしょう。自社のデジタルトランスフォーメーションを実施するには、業務上でAIを利用できるポイントを見つけることや、AIを活用したITツールで業務の効率化ができないかなど、検討を進めることが重要になります。

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