デジタルトランスフォーメーションにおけるクラウドの役割とメリット

経済産業省は、業務のデジタル化による業務効率の向上・新たな企業価値の創出を行う取り組みとして、デジタルトランスフォーメーションを推奨しています。「DX」という略称も一般的です。デジタルトランスフォーメーションには、業務を効率化するツールが求められます。従来はシステムを内製化する必要があると考えられていましたが、現在はクラウドサービスを利用するケースも少なくありません。この記事では、デジタルトランスフォーメーションにおけるクラウドサービスについてご紹介します。

デジタルトランスフォーメーション推進におけるクラウドの役割

デジタルトランスフォーメーションにおいて、クラウドは重要なテクノロジーです。まずは、クラウドの基本的な定義や、デジタルトランスフォーメーションにおいて求められている役割についてご紹介します。

そもそもクラウドとは?

クラウドとは、データやソフトウェア、システムなどをPC内に保有して使うのではなく、ネットワーク経由でサービスとして利用する仕組みを意味します。従来のパッケージ型のシステム、ソフトウェアとは異なり、PCの記憶領域を占有しない点が特徴です。また買い切り型ではなく、多くの場合、月額を支払って利用する課金方式であるという点でも違いがあります。ストレージ、メールアプリケーション、顧客管理システム、コンテンツ管理システムといったクラウドサービスが代表的です。

クラウドはパブリッククラウドとプライベートクラウドに大別できます。パブリッククラウドは、申し込みをすれば全てのユーザーが利用できるオープンなクラウドです。サービスによっては、企業だけではなく個人でも利用できます。多くの事業者が、ビジネス・個人利用向けにさまざまなサービスを提供しています。

対して、プライベートクラウドは、企業が自社のためのネットワークで構築する専用のクラウドです。自社で設計するため、任意でカスタマイズができます。また、外部には公開されないクローズドなビジネス環境のため、セキュリティも担保されています。

クラウドに求められる役割

クラウドには、簡単な業務効率化ツールとしてだけではなく、手軽に導入できる新しい基幹業務システムとしての役割が求められています。これは、将来に予見されている「2025年の崖」という問題が理由です。「2025年の崖」とは、老朽化やブラックボックス化が進んだ既存システム(レガシーシステム)を使い続けることによって生じる(可能性がある)、多大な経済損失です。経済産業省は、2025~2030年の5年間で最大12兆円の経済損失が起こるリスクがあると試算しています。

企業が「2025年の崖」を乗り越えるためには、大規模なビジネスモデルの変革が必要です。経済産業省は企業に向けて、IoT、AIなどさまざまなデジタル技術を活用することを呼びかけるガイドラインを発表しています。クラウドもそうした技術の一つです。

【出典】『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』(経済産業省・PDF)

デジタルトランスフォーメーション推進時にクラウドを活用するメリット

デジタルトランスフォーメーションを推進する際に、クラウドを活用するとどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なメリットをご紹介します。

導入コストがかかりにくい

クラウドの代表的なメリットといえるのがコストです。クラウドのシステムを利用すれば、自社内にシステムを構築する必要はありません。この点から、システム活用における初期費用を削減できます。

一般的にクラウドサービスの事業者は月額の課金方式を設定しています。オプションやサーバーの増減などで、コストの最適化が可能です。初期費用については無料のケースが多いです。

また、運用における労働コストの削減効果も注目されています。クラウドサービスでは、保守、点検、メンテナンスなどの作業は導入企業ではなく、サービス提供元が行うことが一般的になっています。また自動的にアップデートされるため、常に最新の状態を維持できます。

どこからでもアクセスできる

上述したとおり、クラウドはインターネット経由で各種サービスを利用する仕組みです。つまり、インターネットが利用できる環境であれば、どこからでも利用できます。サービスによっては、対応している端末の種類も豊富です。

社員が私物の端末を利用する「BYOD(Bring Your Own Device)」は、クラウドサービスとの親和性が高い取り組みです。使い慣れた端末を利用することにより、業務効率の向上が期待できます。

とりわけリモートワークでは、クラウドサービスが有効活用されています。オフィスに出社せず、自宅からクラウドサービスを利用することも可能です。ビジネスチャットツールなどは緊急時の連絡にも使用できます。

デジタルトランスフォーメーション推進にクラウドを活用する際の課題

クラウドのテクノロジーはデジタルトランスフォーメーションにおいて有益です。一方で活用する際には、知っておきたい課題もあります。企業の状況や目的によっては他の方法を選ぶ必要もあるため、あらかじめクラウドの課題について知っておきましょう。

セキュリティのリスクがある

クラウドはその性質上、IDとパスワードを使用し、インターネットでアクセスできる場所にデータがあります。そのため、ID・パスワードの流出によるセキュリティのリスクは否定できません。

サービスを提供している事業者のセキュリティ対策に加え、クラウドシステム利用における運用も事前に確認が必要です。ID・パスワードの運用方法や、システムからタイムアウトするまでの時間、特定の端末からしかアクセスさせないなどの運用におけるセキュリティ対策が必要になります。
また、上述した「インターネットがあればどこでも利用できる」という点にも留意しなければなりません。外部で作業をするということは、企業のデータを外部に持ち出すということです。作業中のPC画面を後ろからのぞかれるリスクも踏まえた、社内のセキュリティやコンプライアンスを管理する必要があります。

基本的に自由なカスタマイズは難しい

クラウドサービスは、導入してすぐ業務で活用できるように設計されています。オプションを追加することで、簡単な調整はできますが、基本的にカスタマイズの自由度は高くありません。一方、自社で開発する場合、費用はかかりますが自由にカスタマイズすることが可能です。このことから、仕様のこだわりが多い場合は、オンプレミス型のシステムを開発する必要があります。

デジタルトランスフォーメーション推進におけるクラウドサービスの活用事例

クラウドサービスは既にデジタルトランスフォーメーションの中で導入されています。よく使用される以下では、具体的なITツールをご紹介します。

ワークフローシステム

ワークフローシステムとは、申請書、稟議(りんぎ)書、報告書などの書類をデジタル化し、決裁処理を行うシステムのことです。決められた作業手順に従うことで承認手続きのスピードを上げることができます。ヒューマンエラーを防ぎやすくなるのもメリットです。

CRM

CRM(Customer Relationship Management)とは「顧客管理」のことです。一般的には、顧客管理の業務を自動化・効率化するためのツールを指します。顧客名や対応履歴などの情報管理が基本的な機能です。このほか、消費行動・購買傾向の分析、メール配信、セミナー・イベントのスケジューリングといった機能が組み込まれています。デジタルトランスフォーメーションにおいては導入例が多い代表的なツールです。

Web会議

対面の会議や電話での打ち合わせに代替する手段として、Web会議ツールが利用されています。音声だけではなく、ビデオ通話もできるため、顔を見てコミュニケーションを取ることも可能です。社内の簡単なコミュニケーションにも利用されています。新型コロナウイルスのまん延によりテレワークが一般的になった2020年以降、非常に身近になったといえるデジタルトランスフォーメーションのツールの一つです。

ストレージ

外部のサーバーにデータを保存するクラウドのストレージも広く利用されています。PC内のローカルのストレージと遜色ない感覚で利用可能です。複数人での共有もできるため、社内で一つのクラウドストレージを使用することもあります。テレワークでは業務効率に貢献するデジタルトランスフォーメーションのツールです。データ消失のトラブルに備えたバックアップ機能が搭載されているほか、かねてより懸念されていたセキュリティも近年は問題ないレベルまで向上しています。

クラウドサービスで手軽にデジタルトランスフォーメーションを実現

デジタルトランスフォーメーションの実現には、ITに知見のある人材とシステムやアプリケーションが必要です。システムやアプリケーションに関しては内製化することもできますが、コストがかかります。手軽に導入したい場合は、クラウドサービスを利用するのがおすすめです。オンプレミス型と比較して拡張性は劣りますが、ビジネスユースの機能がコンパクトにまとまっています。レガシーシステムからの移行が難しい場合もありますが、将来の「2025年の崖」に対応するため、効率的なシステムへの切り替えを検討してはいかがでしょうか。

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