デジタルトランスフォーメーションにおける人材不足の現状と解消法

経済産業省は、ITシステムの課題によって生じる多大な経済損失「2025年の崖」を予見しています。その要因として指摘されているのは、レガシーシステムの老朽化・ブラックボックス化ですが、もう一つの要因とされているのが、IT人材の枯渇です。経済産業省の「2025年の崖」に関するレポートには、この経済損失を乗り越えるための取り組みとして「デジタルトランスフォーメーション」という言葉が登場しています。一般的には「DX」という呼称で知られるこの取り組みを推進するためには、適切な人材が必要です。こちらでは、デジタルトランスフォーメーションにおける人材不足の現状と解消法について解説します。

デジタルトランスフォーメーションにおける人材不足の理由

デジタルトランスフォーメーションで人材不足が起きている状況に対して、幾つかの理由が指摘されています。以下では、デジタルトランスフォーメーションの人材不足の代表的な理由をご紹介します。

労働人口が減少している

まずは、業界を問わず、国内のビジネス全体で労働人口が減少していることが理由として挙げられます。特に大きいのが、少子高齢化の影響です。これにより、デジタルトランスフォーメーションの推進を担う、AIやIoTなどの先端技術に強い「先端IT人材」の絶対数が少なくなっています。若年層ではない従来型のIT人材が先端IT人材に転換できるまでには一定の時間がかかるのです。さらに、古い既存システム(レガシーシステム)のプログラムがわかる世代が次々と退職しています。レガシーシステムは老朽化・ブラックボックス化しており、知識がある人材を欠いた状態では、新システムの移行が困難です。

DXに必要な人材需要の伸びに、供給が追いつかない

上述した人材不足に対し、需要の伸びは止まりません。このことにより、人材の需給に大きなギャップが生まれています。2030年に最大約79万人まで人材不足が拡大すると試算されている状況です。IT人材は需要に基づき微増していますが、それでも人材不足のギャップは埋められません。特にAI関連において、深刻な人材不足の可能性が想定されています。AI市場の年平均成長率を16.1%とした場合、2030年には最大14.5万人の人材不足が起こる見込みです。

非IT企業にIT人材が少なく、育成も怠ってきた

日本では、7割以上のエンジニアがベンダー企業に在籍しています。これまで多くの企業がシステム開発をベンダー企業に丸投げしてきており、社内でIT人材を育成してきませんでした。そのため、デジタルトランスフォーメーションに対応できる人材が非IT企業にいないケースがあります。このことから、システムを内製化できず、ベンダー企業への依存状態が続き、人材不足が解消されにくいのです。

デジタルトランスフォーメーションの推進に求められる人材の例

デジタルトランスフォーメーションを推進するためには、プロジェクトに応じて適切な人材を確保する必要があります。以下では、デジタルトランスフォーメーションに必要な人材の代表例をご紹介します。

DXのマネジメント・企画・設計を行う人材

プロデューサー

プロデューサーは、デジタルトランスフォーメーションにおいてリーダー的役割を担う存在です。全社的なデジタル化への転換を主導します。CDO(最高デジタル責任者)などもこちらに含まれます。

事業全体を把握し、必要に応じて投資や資金配分などの意思決定を行うのが、プロデューサーの役割です。そのため、マネジメントスキルが求められます。それ以外にも、組織をけん引するリーダーシップや、外部環境の変化を把握して将来を見通す力が必要です。経営者やIT部門責任者などの経験があると、デジタルトランスフォーメーションのプロデューサーとして役立ちます。

ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーは、デジタルビジネスの企画立案、および推進を行う存在です。アイデアを具現化し、顧客に提供できるサービスや製品の仕組みを構築します。市場や顧客のニーズを読み解き、新しいビジネスモデルを着想し、企画実現に向けて関係者と調整して実現に動くのが、具体的な役割です。

市場・顧客を分析し、価値のあるビジネス・サービスを創出する発想力・着想力が求められます。デジタルトランスフォーメーション実現のための調整役を担うことも多いため、会議を円滑に進め、現場の相互理解を促進するためのファシリテーションスキルも必要です。新規事業計画担当者やプロダクトマネージャーの経験があると、ビジネスデザイナーとして有利に働きます。

アーキテクト(設計者)

デジタルトランスフォーメーションに関する社内システム設計を担うのがアーキテクト(設計者)です。ビジネスのコンセプトを、ソリューションとなるシステムとして再構成します。

アーキテクチャ設計や知的資産管理などの技術的スキルと、コミュニケーション力、交渉力などの一般的スキルの両方が必要です。ITアーキテクトのスキルがあると良いでしょう。「システムアーキテクト試験」に合格していれば、基本的なスキルは持ち合わせていると考えられます。

実装を担当する人材

データサイエンティスト

データサイエンティストは、データを扱う専門家の立場として解析を行います。具体的には、収集したビッグデータからビジネスに役立つ情報を引き出すのが役割です。IT全般の知識だけではなく、統計学の知識やスキルが求められます。データベースエンジニアのスキルがあると役立ちます。

UXデザイナー

デジタルビジネスに関するシステムのUXデザインを検討するのが、UXデザイナーです。Webデザイナーとはほぼ同じ役割を担います。

求められるスキルとして、インターネット概論、ワールドワイドウェブ法務、Webデザイン技術などが挙げられます。ウェブデザイン技能検定が、要求されるスキルレベルの基準となります。

エンジニア、プログラマー

エンジニア、プログラマーは、デジタルシステムの実装やインフラ構築などを実際に行う人材です。一般的なITエンジニアとほぼ同職であり、デジタルトランスフォーメーションでも最も現場に近い職種といえます。

経済産業省が策定しているIT人材に求められるスキル体系「ITSS」のなかでは、ITスペシャリスト、アプリケーションスペシャリストのスキルがあると、エンジニア、プログラマーとしての活躍が期待できます。

デジタルトランスフォーメーションにおける人材不足を解決するには?

上述した人材不足の問題を解決するためには、どのような解決策を講じるべきなのでしょうか? 具体的な解決策を以下で解説します。

アウトソーシングを活用する

第一の方法がアウトソーシングです。社外の高い専門性を持ったプロ(エンジニア、プログラマーなど)を活用すれば、社内にデジタルトランスフォーメーションの知見がなくても、素早く取り組みを開始できます。デジタルトランスフォーメーションに費やせる時間が限られている場合に有効な方法です。

人材育成のための研修やセミナーを実施する

自社にデジタルトランスフォーメーションに対応できる人材を確保することも重要です。必要なスキルの習得機会を会社が手配すれば、人材を育成することができます。IT人材を育成するための研修やセミナーを実施し、自社にデジタル変革に対応可能な人材を拡充しましょう。研修・教育を実施することを見越し、中長期的に採用戦略を練るのが望ましいといえます。

不要なコストを削減して、専門知識を持った人材の採用費に充てる

人材の確保にはコストがかかります。また、専門知識を持ったIT人材の採用市場は競争が激しいため、採用のためには多額の予算を確保しなければなりません。限られた予算のなかで採用に充てる割合を増やすためには、他の部分でのコスト削減が必要です。

近年は、ITツール導入による効率化や自動化で、一部の業務を自動化することが可能になっています。RPAやチャットボットなどが代表的なツールです。こうしたツールによってリソースの活用を最適化すれば、IT知識を持った人材により多くのコストを投じることができるようになります。

デジタルトランスフォーメーションを推進するためには適切な人材が必要

デジタルトランスフォーメーションは、単なるツール・テクノロジーを利用した業務効率化ではありません。推進するためには、デジタルトランスフォーメーションのコンセプト・必要性をしっかりと理解した適切な人材が求められます。一方で、あらゆる業界で人材不足の問題が叫ばれるなか、IT人材を確保するのは簡単ではありません。今回ご紹介したような解決策を用意し、デジタルトランスフォーメーションに対応できる人的リソースを自社に蓄えることをおすすめします。

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