デジタルトランスフォーメーションを推進するメリット・デメリット

デジタルトランスフォーメーションという言葉をご存じでしょうか。IT技術を活用したデジタル変革によって業務プロセスの改善、生産性向上を目指す取り組みであり、経済産業省がガイドラインを設けたことでも話題となっています。世界中で注目されている一方、現段階ではデジタルトランスフォーメーションについて具体的に理解している方はまだ少ないかもしれません。

なぜ、近年になりデジタルトランスフォーメーションの重要性が叫ばれるようになってきたのでしょうか? この記事では、定義や必須と認識されるようになった背景、日本での推進の現状から、メリット・デメリット、成功させるために知っておきたいポイントまでを解説します。

デジタルトランスフォーメーションの基礎知識

デジタルトランスフォーメーションにはクラウドやIoT、ビッグデータなどのさまざまなテクノロジーが関連しています。全てを理解しようとすると混乱してしまいやすいため、まずは基本的な情報から押さえていきましょう。以下では、デジタルトランスフォーメーションの基礎知識について解説します。

そもそもデジタルトランスフォーメーションとは?

まずは、デジタルトランスフォーメーションの基本的な理解を身に付けましょう。

デジタルトランスフォーメーションとは、企業がITを活用して、組織やビジネスモデルを変革し競争力を向上させることです。一般的には、「DX」の略称で呼ばれています。経済産業省は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」をデジタルトランスフォーメーションの定義としています。元々は2004年にエリック・ストルターマン教授が提唱した概念です。彼はスウェーデンのウメオ大学の教授であり、デジタルトランスフォーメーションに関する論文を幾つか発表しています。

日本国内のデジタルトランスフォーメーションの現状

必要性や重要性が注目されている一方、現状では、多くの企業がデジタルトランスフォーメーションに未着手の状態と認識しています。2020年10月時点で、デジタルトランスフォーメーションに対して「部門横断的に推進」「持続的に実施」と自己診断している企業はわずか約5%にとどまっているようです。

経済産業省は、2025年までにデジタルトランスフォーメーションが推進されない場合、日本企業の国際的な競争力が落ち、2025年~2030年で最大12兆円の経済損失が生まれると試算しています。この問題は「2025年の崖」と呼ばれており、デジタルトランスフォーメーションの推進が急がれている最大の理由です。

2025年までにDXを推進できれば、実質GDPを130兆円押し上げる可能性があると考えられています。日本では、業界を問わず、デジタルトランスフォーメーションをどのように浸透させていくかが課題です。

デジタルトランスフォーメーションのメリット

デジタルトランスフォーメーションは取り組んでいる企業にさまざまなメリットをもたらします。適切に実施すれば、競争力や事業の安定性を向上させることも可能です。以下ではデジタルトランスフォーメーションのメリットについてご紹介します。

生産性向上につながる

デジタルトランスフォーメーションによる代表的な恩恵は、生産性向上につながる点です。

一部の業務をRPAなどで自動化することで、業務を効率化できます。RPAは人間の代わりに仕事の一部をこなすツールです。活用することによって空いた作業時間を、優先度の高い業務や売り上げにつながりやすい業務に充てられます。ヒューマンエラーの防止にも有効的です。

また、データ分析により、見込み客や既存顧客に対して効率的にアプローチができます。MAやCRM、SFAなど、蓄積されたデータを営業支援に活用できるツールは豊富です。勘や経験などの属人性を排除でき、成果の出る方法を発見・共有しやすい点が魅力といえます。

市場の変化に即応できる

魅力的な商品を提供するためにはニーズを読む必要がありますが、消費者の消費行動は一定ではありません。近年は、デジタル技術により、消費者行動の変遷スピードが速くなっているほか、複雑化している傾向も見られます。そうした市場の変化をキャッチアップし、即応できるようになるのもデジタルトランスフォーメーションのメリットです。

収集した顧客のデータからニーズの変化を読み取ることができます。AIやIoT、ビッグデータ解析の技術を用いれば、効率的にニーズの把握が可能です。リアルタイムで顧客のニーズを分析できる点も大きな魅力といえます。

顧客のニーズに合った新しいビジネスモデルを開発しやすい点もメリットとして挙げられます。新たな自社の価値を顧客にアピールすることもできるため、顧客満足度の向上につながるでしょう。

自然災害などの有事に対応しやすい

大型災害、新型コロナウイルス感染症のまん延など、近年はオフィスに集まることが困難になる事態も珍しくありません。事業を滞りなく継続させるためには、こうした有事への対応が求められます。

デジタルトランスフォーメーションは、こうした有事に備えるBCP(事業継続計画)対策としても利用可能です。BCPとは、緊急事態の際、企業が事業を継続もしくは早期の復旧を目指すための計画を意味します。例として、リアル店舗が利用できなくなった場合のECサイト拡充や、業務フローのデジタル化によるテレワーク体制実現は、BCPのための代表的なデジタルトランスフォーメーションの取り組みといえます。

デジタルトランスフォーメーションのデメリット

上述したメリットの一方で、デジタルトランスフォーメーションにはデメリットもあります。メリットだけに注目すると、デジタルトランスフォーメーションに失敗してしまうことも考えられるため、あらかじめ以下のようなデメリットについても知っておきましょう。

コストがかかり、効果がすぐ出ないことがある

デジタルトランスフォーメーションの推進のためには、ツール・システムなどの導入が不可欠です。そのため、ある程度の初期費用を負担する必要があります。

また、一般的にデジタルトランスフォーメーションの効果は短期間では出ません。収益で初期費用を回収するまでに時間がかかります。想定していたような効果が出ないからといってすぐに取り組みをやめてしまうと、結果としてコストが無駄になってしまうのです。

デジタルトランスフォーメーションを実施する際は、くれぐれも即効性を期待しないようにしましょう。最適なツール・システムを導入し、社員が操作に習熟して初めて、コストを回収できるようになってきます。リソースを有効活用できれば、新たな企業価値の創出により、コストから転じて収益を出すことも可能です。

既存システムからの移行が難しい

新システムを導入するためには、既存のシステムからの移行が必要です。既存システムは老朽化やブラックボックス化が進んでいるため、簡単には移行できません。こうした既存システムはレガシーシステムとも呼ばれており、継続利用していると多大な経済損失を生み出す要因の一つとしても指摘されています。

また、レガシーシステムに対応できる技術者が退職などにより減少しています。レガシーシステムに関しては運用・保守にコストがかかり、新規システム導入の費用を捻出しにくい点も問題です。

メリットのあるデジタルトランスフォーメーションを成功させるポイント

デジタルトランスフォーメーションは、無計画に実施しても成功は困難です。成功させるためにはポイントがあるため、意識しておきましょう。以下では、経済産業省が発表しているガイドラインを基に、デジタルトランスフォーメーション成功のための代表的なポイントをご紹介します。

経営層が主導する

デジタルトランスフォーメーションは企業の組織変革を伴います。そのため、事業部ごとの改革では効果が十分に現れません。また、部分的な導入では部署間の利害関係に左右されるリスクも懸念されます。

このことから、デジタルトランスフォーメーションでは経営層による主導が必要です。経営層がコミットメントすることで、社員全員が意識変革しやすくなります。また、効果を出すには時間とコストがかかる中長期のプロジェクトとなるため、効果を算出して適切な投資判断のもと、プロジェクトを推進する必要があります。

全社のデータを共有できるシステムを構築する

デジタルトランスフォーメーションでは、全社的な情報共有が求められます。ワークフローの改善や仕組みづくり、取り組みだけで十分な共有を実現することは困難なため、データ共有できるシステムの構築が不可欠です。

社内のすべてがネットワークでつながり、互いにデータを確認できるようになるシステムが求められます。適切なシステムを構築すれば、リアルタイムで情報を全社共有できるようになるでしょう。

また、システムをうまく活用すれば、内部に潜在している問題が可視化され、経営者が素早い経営判断を下せるようになります。経営判断のスピードは競合に対する大きなアドバンテージとなり、企業の競争力向上にもつながるでしょう。

DXを推進できる人材を確保・育成する

デジタルトランスフォーメーションの重要性やレガシーシステムを使い続けるリスクは多くの企業が認識しています。そのため、AIやIoTなど先端技術に知見のあるIT人材は今後さらに不足する見込みです。このことも、上述した「2025年の崖」が引き起こされる要因の一つとして指摘されています。デジタルトランスフォーメーションにはツールだけではなく、適切な知見を持った人的リソースも求められるため、人材の確保についても優先的に考える必要があります。

IT人材を新たに採用できない場合は、人材育成計画を立てることでも対応可能です。研修やセミナーなど、資格取得のサポートなどを行いましょう。評価制度を設けるなど、IT人材として活躍するモチベーションを与えることも大切です。

CIOなど経営層にもIT人材を採用すると良いと考えられています。トップの主導の下、組織のしがらみなどに縛られずに推進できるため、スムーズなデジタルトランスフォーメーションの浸透が期待できます。

メリット・デメリットの双方を把握してデジタルトランスフォーメーションの実現を

デジタルトランスフォーメーションの基本的な情報から、メリット・デメリット、成功のためのポイントまでを網羅的にご紹介しました。まずは初歩的な部分からデジタルトランスフォーメーションを理解していきましょう。上述したようなメリットから注目され、推進が急がれているデジタルトランスフォーメーションですが、同時にデメリットがあるのも事実です。実施する際には、メリットだけではなくデメリットについても把握しておきましょう。また、デジタルトランスフォーメーションに成功するためには、今回ご紹介したポイントを意識することも大切です。来る「2025年の崖」を乗り越え、企業として乗り越えるためには必須の取り組みといえます。決して「自社にはまだ早い」と安易に考えず、従来の業務を見直し、現場にITで最適化できる余地がないか検討してみましょう。

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