デジタルトランスフォーメーションの推進に必要な組織を作るには?

経済産業省はガイドラインやレポートを発表し、デジタルトランスフォーメーションの推進を呼びかけています。デジタルトランスフォーメーションは、クラウド、AI、IoTといったデジタル時代の新技術を活用することによって、生活を改善していく、という概念です。一般的には、「DX」という呼称が普及しています。企業の既存事業にもイノベーションが期待できると考えられています。デジタルトランスフォーメーションの推進においては、システムやツールの導入だけではなく、組織づくりが求められます。この記事では、デジタルトランスフォーメーションにおいて、どのような組織が必要になるか、組織体制の種類、また、組織づくりの注意点などについてご紹介します。

デジタルトランスフォーメーションの推進に向けてどのような組織を作るべき?

どのような組織であれば、デジタルトランスフォーメーションの成功が期待できるのでしょうか。以下では、デジタルトランスフォーメーションを推進する組織に求められる要素をご紹介します。

部署の垣根を越えてプロジェクトを進められる組織

デジタルトランスフォーメーションを成功させるには、全社的に取り組む必要があります。これは部署ごとにデジタルトランスフォーメーションに取り組むと、部分最適にしかならない恐れがあるためです。

実際に、長年企業で使用されてきた既存システム(レガシーシステム)は、業務に応じたカスタマイズの繰り返しによりブラックボックス化し、部分最適の状態に陥っています。これは、システムのカスタマイズに限らず、個々で運用されるExcelやAccessも同様です。また近年、ビジネスにおけるソリューションとして活用されてきたクラウドサービスも、実際には部署・業務ごとに導入するケースが多く、情報のシームレスな共有を妨げているケースも少なくありません。デジタルトランスフォーメーションを推進するうえでは、こうした垣根があることを意識し、多くの部署と連携し、全体最適化できるようプロジェクトを推進できる組織が求められます。

柔軟性のある組織

デジタルトランスフォーメーションを推進する中で、望ましい組織形態が変わるケースがあります。人員配置の見直しが必要になることも少なくありません。そのため、現状の組織形態に捉われず、柔軟に変化できる組織が求められます。

デジタルトランスフォーメーションに対してのノウハウを有する組織

デジタルトランスフォーメーションを進めるには、技術的な知識が必要です。そのため、組織にデジタルテクノロジーに知見のある人材の確保が望ましいでしょう。

社内でデジタルトランスフォーメーションに対して知見のある人がいれば、プロジェクトリーダーに任命し、けん引するよう指示します。社内にふさわしい人材がいなければ、外部からアドバイザーを呼ぶことも検討する必要があります。

デジタルトランスフォーメーションを推進し、社内に浸透させるには、全社的にリテラシーを高めることも重要です。研修などを通して社員のリテラシーを向上させましょう。

人材の確保と育成は、経済産業省もデジタルトランスフォーメーションを実現するためのキーポイントとして提唱しています。特に、採用についてはデジタルトランスフォーメーションを重要視している企業の間で競争が激化する見込みです。競合に優秀な人材を奪われないように、迅速に行動を開始するのが賢明です。

デジタルトランスフォーメーションを推進する組織の主な種類

デジタルトランスフォーメーションを推進する組織は幾つかの種類に分けられます。代表的な種類である「IT部門拡張型」「事業部門拡張型」「専門組織設置型」をご紹介します。

IT部門拡張型

自社に既設されているIT部門を拡張してデジタルトランスフォーメーション担当部門にすることで、「IT部門拡張型」の組織を構築できます。IT部門の人材は、一般的にデジタルビジネスに関する情報に敏感です。デジタルトランスフォーメーションに対しても知見のある人材が多い傾向があるため、信頼感のある組織となります。

ただし、ITについてのスペシャリストではあるものの、現場の理解が浅いケースは少なくありません。システムが使いにくい設計にならないよう、現場を理解するメンバーを異動させることも検討しましょう。

事業部門拡張型

自社の事業部門を拡張してデジタルトランスフォーメーションの推進を行うタイプの組織です。IT部門には、プロジェクト推進の支援を担当させます。

事業部門は自社の商品やサービスを創出するスペシャリストですが、デジタルに関する知見は十分ではないケースがあります。そのため、IT部門のサポートが必要です。IT部門と事業部門のスムーズな連携が重要となるため、折衝を担当する人材を置くとよいでしょう。

専門組織設置型

デジタルトランスフォーメーション推進のために各部門から人材を集めて新たに専任組織を設置するタイプの組織です。社内からだけではなく、ベンダーやコンサルティング会社から人材を集め、組織を構築することがあります。多様な人材を集められる体制のため、革新的なアイデアが期待できます。

ただし、異なる領域のメンバーを集めて新しく作る部門のため、組織のまとまりが弱くなりがちです。チームビルディングやマネジメントに対応する人材もあわせて配置する必要性があります。

デジタルトランスフォーメーションを成功させるポイント

デジタルトランスフォーメーションを成功させるためには、意識すべきポイントがあります。代表的なポイントをご紹介します。

経営層と緊密に連携する

デジタルトランスフォーメーションを成功させるためには、経営層との密な連携が求められます。デジタルトランスフォーメーションによってどのような価値を生み出したいか、経営層との認識の擦り合わせが必要です。明確なビジョンを共有していない場合、プロジェクトの方向性がぶれる可能性があります。

社内全体の意識改革のためには、経営層が主導していく必要があります。デジタルトランスフォーメーションは組織や企業文化・風土の変革にも関わるため、トップから現場の社員に向けて必要性を呼びかけていくことが求められます。

現状を把握し課題を洗い出す

経済産業省の定める「DX推進指標」を基に、自社の現状分析を行う必要があります。これは、自社の段階を認識し、どのような施策を行うべきかを決めるためです。経済産業省が発表している資料では、ビジョン、トップのコミットメント、マインドセットから具体的な取り組みに至るまで、それぞれの項目の成熟度が段階的に確認できます。自社の現状を把握したうえで、デジタルトランスフォーメーション推進に向けた課題を洗い出すことが大切です。

【出典】「DX推進指標」(経済産業省・PDF)

目標を定める

デジタルトランスフォーメーションの推進においては、目標を定めることが大切です。ただ漠然と目標を設けるだけではなく、数値目標などを具体的に定めることをおすすめします。その目標から逆算し、達成のために何をいつまでにすべきか決め、計画を立てましょう。

デジタルトランスフォーメーションのプロジェクトは長期間に及ぶ可能性があります。そのため、定期的に目標達成の進捗(しんちょく)を確認する必要があります。進捗が遅延している場合は、原因を突き止めて対策を打ちましょう。

デジタルトランスフォーメーションを推進する際にありがちな失敗例

企業の性質や風土、意識によってはデジタルトランスフォーメーションの推進に失敗してしまうことがあります。代表的な失敗例について知っておきましょう。

新しいシステムの導入のみで満足する

デジタルトランスフォーメーションの実現のために、新しいシステムやツールを導入することになります。しかし、導入しただけで満足してしまうケースが少なくありません。新しいシステムを使いこなせなければ、業務効率化を実現することは難しくなります。そのままではコストの無駄になるため、ただ導入するだけではなく、きちんと使いこなすことが重要です。

将来的にシステムを使いこなすため、また無駄なシステム導入を防ぐためには、まず業務の棚卸しが必要です。業務をリスト化し、システムによって効率化できる余地があるか、また、どのようなシステムが求められるのか吟味します。そのうえで、各システムが自社に合うか比較検討して決めましょう。

経営陣と連携して進められていない

経営陣がデジタルトランスフォーメーションに理解を示し、全社に推進を呼びかけている状態は理想です。しかし、実際には現場から経営陣にデジタルトランスフォーメーションの魅力を伝え、理解を得なければならないケースもあります。

経営陣から理解や協力を得られない場合、プロジェクトが進まなくなる恐れがあります。デジタルトランスフォーメーションを進めようとしても、経営陣が過去の成功体験から反対するケースなどは代表例です。伝統的な手法にこだわっている場合や、既存事業を大きく変えたくない経営者は、デジタルトランスフォーメーションに対して消極的になるケースも少なくありません。経営陣が現場に丸投げしてフォローしないこともあります。

目的が明確化されていない

デジタルトランスフォーメーションの目的が明確でない場合、誤った方向にプロジェクトが進む恐れがあります。プロジェクトが目的をかなえられるような設計になっておらず、デジタルトランスフォーメーションを導入したとしても課題が解決しません。デジタルトランスフォーメーションはあくまでデジタル技術によって業務の効率化・新たな企業価値の創出を実現する取り組みです。デジタルトランスフォーメーションを行うことが目的にならないように注意しましょう。

デジタルトランスフォーメーション推進に適した組織づくりを意識する

デジタルトランスフォーメーションへの取り組みに際して意識していただきたい組織づくりについて解説しました。デジタルトランスフォーメーションにはツール・システムが必要になりますが、実際に推進していくのは他ならぬ人材です。適切な人材を集め、組織を構築しなければなりません。どのような組織を構成するかだけではなく、その組織でどのように目的と意識を定めるか、経営層との連携をいかに強化するか、といった点も重要です。適切な組織でデジタルトランスフォーメーションを推進しなければ失敗してしまう可能性があります。今回ご紹介したような情報を基に、デジタルトランスフォーメーションを実現に近づけられる組織を作りましょう。

関連記事

DXについての提案依頼・お悩み相談

DXについて「なにから始めればよいのか?」「自社に適したDXの進め方とは?」など、ふわっとしたご相談も承ります。お気軽にご相談ください。

DXについて相談したい

DXソリューション総合カタログ 無料進呈

マルチベンダーとしての総合力を持つ大塚商会は、豊富なITツールを活用し、企業のDX推進を支援しています。大塚商会がご提案するDX関連のITソリューション群や、いちはやくDXを実現した企業事例をご紹介するカタログを無料でお届けします。

コンテンツ(全57ページのボリュームで、じっくりご紹介!)

STEP1:社内インフラ、基幹系・情報系システムの整備
STEP2:システム連携による業務プロセスのデジタル化、運用環境・インフラ整備・業務改善状況のチェック
STEP3:真のDX実現・企業変革成功事例

カタログを請求する

ページID:00210525