第84回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~20~設計成果物の2Sの具体例を考える その2:仲間集めの定義を考える

設計成果物の2Sについての具体事例紹介の2回目。品目名称の英文化によって表記のゆらぎを解決したT社でしたが、次の難関は製品・部品の大・中・小分類という仕分け作業、つまり仲間集めです。どのような判断やルール化をもって解決したのでしょうか? T社の事例を紹介します。

第84回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~20~設計成果物の2Sの具体例を考える その2:仲間集めの定義を考える

今秋初の「金宮」お湯割りです。控えに回ったキンキンに冷えたジョッキと白ホッピーは横で次の出番を待っています。

仲間集めの粒度=属性情報の粒度

仲間を集めて、その仲間の機能情報である属性情報を付与することで仲間、つまり類似製品・部品の2Sが完成します。
そして、その属性情報をキーにして検索することで設計情報の共有を図っていくわけですが、では、どの程度の粒度管理をするのか? という難しい判断が迫られます。「ググればビンゴ!」という百発百中検索を狙うのか? 「欲しいモノの候補が判れば良し」とするのか? もちろんおのおのトレードオフが存在することは想像できると思いますが、T社の2S担当の判断は(図1)のとおりの潔いものでした。

「属性の粒度を細かくすれば検索候補精度は上がるが、属性情報入力は不可避となり、入力負担から現実的な運用にはならない。できるだけ属性情報数を減らす方向性を採用し、そのことによる類似検索候補の増加はあるが、図面や別途ルールとして決めた形式情報によって最終的に絞り込む」という判断です。

ここには絶対解は無く、程度や方針の選択です。しかし、設計プラットフォームの在り方の基礎を定める重要な判断であることは間違いありません。従って、この辺りの手を抜くと将来にわたり禍根を残すことになりかねません。

T社は設計者全員を何度も集めてこの属性情報の粒度や定義をすり合わせたようですが、設計者間のコンセンサスを得ることの難しさを感じたようです。逆を言えば、「これほど認識の異なる設計者同士が同じ製品の設計をしていたのか……」という驚きの方が大きかったと思います。

蛸壺設計の結果ではあるのですが、一気に認識をそろえてコンセンサスを図ることは現実的ではなく、「少しずつ、すり合わせて行くことによって、将来に向けて管理粒度を細かくしていく」という方針を選択したのだろうと考えています。

私としても、何十年も蛸壺設計の状態であった設計者間の認識を一気に揃える困難さを現実的に捉え、属性情報と図面や形式情報による判断との併用による絞り込みはバランスの取れた方向性の選択判断だと思います。

簡単な部品は属性情報不要

基礎部品としての代表格であるメカ系の締結部品やエレキ系のケーブル等、設計常識として設計者間に認識されているモノはわざわざ属性情報が必要なのだろうか? とT社の2S担当K氏は考えました。それでも

  • BOLT
  • SCREW
  • STUD

等の今更の定義(このような基礎部品の定義が案外設計者間で認識が合っていない)を行ったうえで(図2)英文表記に変更した名称にそれらの規格・仕様を織り込んでしまい、属性情報を省いてしまうという案です。(図3)

BOM上でも規格が見えているので便利かもしれません。(図4)
応用展開としては汎用ベアリングや汎用O-リング等々が想定されます。

また、WIRE、CABLE等のJIS規格やUL規格で明確になっているモノも同様に名称に規格・仕様を織り込んでしまう選択をしました。線材系部品で厄介な線長も標準長規格を定め「長は短を兼ねる」という考えで標準化を進めました。(図5)
このようにミクロなコストに囚われ過ぎずマクロなコストを追求していくコンセプトは賛成です。

全体として属性情報の省力化方法としては良案だと思いますし、これから2Sに取り組まねばならない方々には大いに参考になると考えます。

2S担当K氏の悩みを共有する

当初K氏は検索精度高めること、欲しいモノが一発で見つかる、つまり「ググればビンゴ!」を狙っていたと思います。属性情報の粒度管理を細かくして、欲しいモノが確実に検索できるようにしたいと考えていました。

しかし、設計者同士の検討会を重ねるにつれ、その認識の多様性に驚き、と同時に手を焼き、落としどころに悩むことに。その結果としての上記の判断であったと思います。

「何十年もの蛸壺設計がもたらした状況に対して、正面から抗うことだけが決して良い結果を生むのではない」と気づかれ、「できるところから少しずつ属性情報を整備していこう」という妥協案は良い判断だと思います。

そして「実現が難しい理想案より、実現できる妥協案」によって「属性情報整備の継続」を図り、逐次属性情報を整えていくという考えに至りました。
「一度決めた属性情報を減らすことより、できるだけ少ない属性情報から始めて、どうしても必要性を感じた場合に増やして、再整理していく方が賢明である」との気づき。この考えには私も同意しますし、K氏の知見の広がりを強く感じさせられる判断でした。

以上

次回は12月7日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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