第83回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その19~ 設計成果物の2Sの具体例を考える その1:品名という属性情報

PDMとの総称を持った流用化・標準化設計プラットフォーム構築の最も大切な作業として、設計成果物の2S(整理整頓)については、これまで何度も述べてきました。同時に一番難儀を余儀なくされている作業でもあります。従って、実施の方法論に対して一番問い合わせや質問が多い作業でもあります。今回から数回に分けて、コンサルタントとしてお預かりしている会社の好事例を具体的に紹介します。皆さんの気づきになれば幸いです。

設計成果物の2Sの具体例を考える その1:品名という属性情報

酷暑も終わり、ようやく過ごしやすい季節となりました。最近気になるトレンドは「金宮」をホッピーではなくノンアル・ビールで割るのが流行っていること。邪道だ! と思いつつも、試してみました。アレレ旨いぞ!……
金宮+ホッピーは本道と言われる固定概念だったのかもしれない。邪道の言い分を少し呑みながら考えてみようと思います。

謝辞

今回から始める2Sの具体例の考察にあたって、中部地方に有るT社の好事例を紹介することが許されました。
同社はいわゆる、生産設備用自動機器の設計製造の中堅企業です。流用化・標準化に向かってBOM構築を軸に全社改革を進行中です。PJ(プロジェクト)ホルダーのF社長、PJリーダーのI氏、2SをPJの中心でけん引しているK氏には心より感謝いたします。

2Sのはじめの一歩は属性情報の決定。いの一番は「品目名称」

属性情報の存在価値は、人間に対する「モノ」の認識や仕様の理解を行うための情報としてあります。要はこの「モノ」、その多くは「部品・アセンブリー・製品」は一体どのようなモノなのか? を知らしめる「文字情報」です。
この情報はITに対しては全く意味を持ちません。あくまで人間に対する情報です。
となれば、まず欲しくなるのはモノの名前・呼称です。品目名称とか品名とかで呼ばれる属性情報です。

今までは、モノを生み出した(設計した)設計者がその知見に基づいて命名していました。しかし、その知見が曲者で設計者同士の統一はなされておらず、結果、命名権は野放図状態であったわけです。好き勝手に命名でき、その結果、品名から欲しいものを探す・検索するという行為に大きな障害をもたらすわけです。

簡単な例を挙げてみましょう。三つのグループを考えて

  1. 箱・ケース・ボックス・ハコ・器
  2. モーター・モータ・モートル・電動機・駆動機
  3. シャフト・軸・ピン・コロ・丸筒

人間にとってはそれぞれの呼称グループ内では曖昧ではあるものの「なんとなく同じ」という感触はありますが、IT的には全く異なる「情報表現」として存在するわけで、いわゆる検索情報としては全て不一致となるわけです。IT検索の基本ルールとしての「完全一致」からは遠くおよばないことになります。
この辺りのコンサルを進めていくにつれ、日本語って厄介だなという雰囲気がPJ内でも存在するようになりました。

日本語というITに対するハンディキャップ言語

モノをなんと呼ぶかという命名の問題の前に、もっと基本的で本質的な問題が横たわっています。上記の例を見て、すでにその意味を理解されていると思いますが、日本語という言語体系には「ひらがな」「カタカナ」「漢字」と3種類の表記方法がありそれらの混成の順列組み合わせを考えると、まさに天文学的な数字になるでしょう。
さらに濁音や長音(伸ばす)表記も含めた表記の「ゆらぎ」を考えると呆然とします。

一方、英語圏はたった26文字の順列組み合わせです。「-er,-or」という様な慣用の差異はあるとしても日本語表記と英語表記との完全一致という視点で見れば、どちらが優れているかは自明です。そもそも日本語という言語体系にはIT(データベース)的には本質的なハンディキャップが存在するわけです。皆さんが毎日使っているPCでさえ「日本語フロントエンド」という変換システムが無ければ始まらないのです。
T社のPJはこの点に踏み込みました。「命名ルールの前に、この本質的問題を乗り越えないと意味がない」と……。

日本語表記と戦うことはやめよう!

T社のPJで発表された2S担当K氏の資料を添付します。

結論として、日本語表記をやめて英語表記に全面転換を提案しました。PJ内の「えっ!」という雰囲気が無かったかと言えば噓になりますが、K氏の説得力のある説明を聞いてPJの総意としていくことができたのです。

上記にはJISが引用されています。

  • JISでは一般的なモノの表記ルールは一応存在する
  • JISも専門的なモノの表記ルール化は無理であると認めている

これらから、日本語表記による「ゆらぎ」は防げないと結論付け、英語表記への全面転換に踏み切ったのです。

英語表記の2大メリットとして

  1. 「スペルが正しければ呼称は完全一致する」=「命名ルールを定めれば品名の呼称は統一できる」
  2. 将来予定されている海外展開に備える

上記にはその「命名ルール」の基本となる実例が既に挙げられています。この命名ルールを辞書化して「この辞書で英文呼称を選択し、付与する」という基本です。

改革を進めるということは、こういうことだ! と思わせる好例です。このような大転換は何十年に一度しかできません。(一生できそうもない会社も見ていますが……)
PJリーダーのI氏は30年後を見据えた改革を目指しています。つまり30年後も疲弊しないルールとは何か? をPJ全体で追求しています。
コンサルタントとして同社をお預かりしている私自身も大変良い刺激を受けています。

次回は類似部品・アセンブリー・製品の集約統合、つまり「似た者同士の仲間集め」に必須な類似ルール=「仲間のルール」に対する同社の考え方を紹介します。

以上

次回は11月2日(金)の更新予定です。

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書籍

当コラムをまとめた書籍『中小企業だからこそできる BOMで会社の利益体質を改善しよう!』を日刊工業新聞社から出版しています。
BOM構築によって中小企業が強い企業に生まれ変わる具体策とコツをご提案しています。

Nikkan book Store(日刊工業新聞社)
中小企業だからこそできるBOMで会社の利益体質を改善しよう!(日刊工業新聞社Webサイト)

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製品原価の80%は設計段階で決定されます。「生産革新 Bom-jin」は生産管理とのデータ連携を重視し、設計技術部門の図面・技術情報などの設計資産を「品目台帳」で管理。部門内の設計ルールを統一し、標準化と流用化を実現します。また、生産管理システム「生産革新 Raijin SMILE V」と連携し、生産部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減・納期短縮・生産効率の向上を実現します。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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