第148回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その77~実践ソリューションフェア(JSF)特番 AI類似図面検索システムの成長とは

流用化・標準化設計プラットフォーム構築で最も負荷が掛かる過程として、過去図面の2Sと断捨離があります。その過程にAI類似図面検索の支援を受けられるか否かはプラットフォーム構築の成否と品質を決定します。その支援システムとしてのAI類似図面検索システムの世代交代を述べてみます。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その77~実践ソリューションフェア(JSF)特番 AI類似図面検索システムの成長とは

小型の保温水筒に「濃い目のキンミヤお湯割り」を入れて、近くの梅園に行ってみました。開花には早いかなと思って行きましたが、思いの外、春の訪れは早いようで七分咲き。良い香りを放っていました。
~梅は咲いたか、桜はまだかいな~とキンミヤが誘います。

流用化・標準化設計プラットフォーム構築への最大の難関とは

今回は、当社最大の催事である実践ソリューションフェア2024で目にした「AI+DX」というトレンドを軸に、流用化・標準化設計プラットフォーム構築に関わるお話をしたいと思います。

流用化・標準化設計プラットフォーム構築への最大の難関は、過去設計成果物の2S(整理整頓)と類似図面の断捨離です。例えば、20万枚の図面を10万枚に2S・断捨離を目指すとした場合、「いったい誰が、どうやって?」となります。

2S・断捨離のプロセスについては本コラムにおいても何度も述べていますので、概要だけを述べますが……

  1. 過去図面の大分類
  2. 小分類
  3. 類似図面の断捨離
  4. 新品目コード・図番の付与
  5. 属性情報の付与

という過程を踏みます。

まさに「言うは易し、行うは難し」です。設計者数人で担当者を決めて、約1.5年を掛けて実行した会社が存在することも事実ですが、それは残念ながら「まれな例」なのです。

設計者の三無い(来ない、育てられない、育たない)を抱える中小中堅製造業の場合、せっかく流用化・標準化設計プラットフォーム構築をDXの目標として行動を起こしても、この過程で心が折れてしまうということになります。

そこで、数年前からこの2S・断捨離過程の「支援システム」としてAIによる類似図面検索システムに着目していました。
少なくとも最初の大分類だけでも自動的に分類してくれれば、やる気の維持には役立ってくれるのでは???
という期待を持っていました。

AIによる類似図面検索システムの進化

ここ数年でどのような進化をして来たのか、まとめてみましょう。

第一世代
2Dで描写された図面の線をPCのグラボ(グラフィックボード)上のメモリーに展開して、あくまで線描された「形」としてAIエンジンに学習させます。ここで困ったことに、三角法で書かれている2D図面ですが、設計者の癖によって類似図面であっても「正面図」の取り方が異なり、図面同士の線描で比較すると印象が大きく異なる図面となってしまいます。

従って、線描の形だけをAI学習蓄積しても、設計者の三角法の癖で類似図面認識、つまり比較が難しいという欠点を抱えていました。
あくまで線描形状の比較による結果だと考えています。例えば、Aさんが書いた類似図面の検索には、同じAさんが書いた図面だけ好結果を残すという結果も分かり、総じて作図癖に弱いというのが欠点でした。

第二世代
2D図面の線描認識をAIに学習させるという基本的なアルゴニズムは同じですが、新たに寸法を読み取り、「大きさ」の認識をAIが学習することができるようになりました。線描+寸法の認識ということです。表題欄の読み取りも属性情報として有用です。
これにより「ピン・コロ・シャフト」の分類が可能になりました。大きさの類似・非類似は可能になりましたが、相変わらず作図の癖による類似検索ミスは問題でした。

第三世代
今回のJSFに出展されると聞いて、期待していたシステムです。ブースを訪問してじっくりと流用化・標準化設計プラットフォーム構築と2S・断捨離の関係を私が説明したうえで、新システムの説明を受けました。

実際のパフォーマンスを確認したわけではありませんから、以下は受け売りとなりますが……
世代の進化として、特筆すべきは2Dの図面からAIが立体を認識学習することです。設計者の作図癖があっても、人間(他の設計者)がその図面(部品)を認識できるのはまさに3Dという「空間認識能力」のたまものです。

AIが空間認識能力を学習

新システムにはその空間認識能力をAIに持たせたというのです。
もちろん、同時に寸法情報も併せて3D認識するとのことで、結果、2Dの図面から空間認識した3D部品をAIが学習していくとのことです。

一刻も早くPoC(Proof of Concept:概念実証。顧客ごとに実際のサンプルを用意して具体的に検証してみること)の機会を得たいと思いますが、AIの成長の速度に驚くばかりです。若干の懸念はシステムの価格にあります。でも、過去図面の2S+断捨離に派遣技術者を雇用したと考えれば……
この辺りはPoC結果との相談となりますが、AIが空間認識能力を得たという期待感あふれる世代アップグレードと感じました。
乞うご期待!

以上

次回は4月5日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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