第123回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その53~ 半導体部品・高機能樹脂部品逼迫の原因を探る~中小中堅自動機器製造業を悩まし続ける問題の発生メカニズムとは?~

コロナ禍が始まって以来、半導体・高機能樹脂関連部品の入手難が継続しています。受注はあるが生産できないつらい状況が企業経営をむしばんでいます。お預かりする自動機器製造業のプロジェクトメンバーと部品逼迫(ひっぱく)の原因を深掘りしてみました。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その53~ 半導体部品・高機能樹脂部品逼迫の原因を探る~中小中堅自動機器製造業を悩まし続ける問題の発生メカニズムとは?~

オミクロン株感染が止まりません。症状が軽い傾向とはいえ、2類相当の感染症である以上10日以上の隔離を要請されます。これは製造業としてのエッセンシャルワーカーを束縛し、ますます生産工数の不足を招きます。今年の冬はしっかり寒く、金宮お湯割りが主役ですが、「感染を止めるが経済を止めない」という禅問答(?)になかなか酔えない夜を過ごしています。

逼迫している二大基礎部品は半導体と高機能樹脂

昔から半導体部品は「産業の米」と呼ばれていました。トランジスタと米粒とが似たイメージでそう呼ばれていたのかもしれません。さらにくしくも半導体は農業産品に似ていて決まった規格・仕様を狙い撃ちして生産することはなかなか難しく、ある程度広い範囲でざっくり生産して、完成した製品を後で選別するという性を背負っていました。

お米で例えると、コシヒカリという種類は作るが土壌や天候によって特等米から三等米まで分布してしまうのと同じイメージです。半導体も狙った規格に収まる「歩留まり」はテクノロジーの進化で良くはなっていますが、今でもバラつきがあるということです。

一方、高機能樹脂のトップスリーはフッ素、ポリイミド、ポリアミドでしょう。一見、半導体逼迫と高機能樹脂逼迫に強い相関関係が存在するとは感じませんが、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な因果関係にあることは後で理解してもらえると思います。

まずは、そもそもの半導体逼迫の主原因をあるプロジェクトメンバーとブレストしてみました。
以下がトップ4でした。

  • EV(HV・PHVも含む)(注)への急激なシフト動向(パワー半導体も含む全ての半導体に急峻<きゅうしゅん>な需要拡大が起きた)
  • デファクト化していた自動車制御ECU(Electronic Control Unit、あるいはEngine Control Unit)用CPUチップの生産ラインが火災でダウンした
  • 納期異常に対し、過敏反応した製造業各社の資材部門が過剰発注を繰り返した(とりあえず買っておこう)
  • 半導体生産のエッセンシャルワーカーがコロナ禍で束縛された(ラインストップ)
  • (注) EV:Electric Vehicle(電気自動車)
      HV:Hybrid Vehicle(ハイブリッド自動車)
      PHV:Plug-in Hybrid Vehicle(プラグインハイブリッド自動車 → 外部電源からの充電が可能なHV)

しかし、今、盛んに叫ばれているエッセンシャルワーカーの束縛による生産ラインストップですが、「半導体製造の場合、それほど影響があるのか?」という疑問がメンバー間で語られました。

そもそも半導体製造プロセスにおける環境汚染のトップは「人間」です。いわゆる、「コンタミ」(コンタミネーションの略称。異物混入の意味)と呼ばれる半導体製造の雰囲気を汚染するのは人間そのものであり、最近の多くの半導体製造プロセスラインには人間はほとんど介在しません。ゆえに、自動車の生産ラインのようなイメージはなく、影響はゼロではないにしろ、主因ではなさそうです。

従って、半導体製造業におけるコロナ禍の影響は案外小さいのではないか? という結論に至りました。
やはり、主因は「自動車関連の急速なEVシフトによる供給量の絶対的不足である」と合意したわけです。
これは「半導体の生産設備の増設以外解消できない」という結論です。その証しとして、先進国各国の対応は新聞紙上を賑(にぎ)わしているように「国家プロジェクトとしての半導体生産設備投資」に多額の金額を準備しています。日本も台湾の半導体メーカーを誘致するために上げ膳据え膳の対応ぶりです。

多額の投資もされているし、半導体逼迫で頭を悩ますのはもう少しの我慢か……?
と一瞬納得しかけたのですが……、

「箱としての半導体工場はでき上がっているが、魂となる半導体製造設備そのものの設置はできているのか? 現に我が社で生産しているこの半導体生産設備に関与する自動機は半年遅れでまだ納品できていないし、他社の設備製造業も同じ状況では?」
「やはりそうかー」という気付きでした。

結論めいた主因は「急峻な需要に対して生産設備の供給が追い付いていない」ということになりそうです。しかし、そうなるとメンバーの頭上に多くの????が漂います。

「でも、我々の製品が生産できないのは半導体部品や高機能樹脂が手に入らないことが原因ですよね?」
「これってどっかでループしていない?」「だよねーーー!!」

半導体生産設備製造業に半導体と高機能樹脂が逼迫してうまく生産できていないから、それら生産設備を使って生産している半導体製造業のアウトプットは増えないというループ構図が見えてきます。

「レトロな半導体がボトルネックかもしれない」という気付き

EVなどトレンドを形成している製品群用途の半導体はナノ密度や立体構成などの最新テクノロジーを駆使したものばかりです。そのテクノロジーを実現し、生み出すのがマザーマシンとしての生産設備群なのですが、その設備群が使用している半導体をエレキ屋さんたちと解析してみました。

全体を制御するPLC、そして通信、I/Oインターフェイス役として周辺を固める組み込み型CPUボードなどなど、素子レベルに立ち返って調べてみました。

驚いたことに、それら素子の発表年度は新しいものでも10年、古いものでは30年以上前と私がエンジニアをやっていた頃の思い出深き素子もありました。TTLやC-MOSロジック素子が今でも働いているとは……。
最先端の半導体素子を生産するマザーマシンとしての生産設備を制御しているのは30年前のレトロな素子だったということです。生産設備のコア技術が10年以上前の開発であり、基本設計の完成もその当時であったという内実もあるようです。

昔はセカンド、サードソースと呼んで同一規格の素子がメーカーごとにたくさん存在して、「納期が早くて安価なモノを選択」で済んでいましたが、さすがに淘汰(とうた)されて、例えば「この素子はもはやTI(テキサスインスツルメンツ)でしか作っていない」とか、「仕様は同じですが素子パッケージ形状が異なり、古いラジアル基板には使えません」ということになる訳です。

さらに、驚いたのは某有名メーカーPLCのメインCPUが20年以上前に発表されたチップでした。最近のPCのように「Core i7の11世代を使っています」などという指向ではありません。もちろん、処理速度は重要ではありますが、メカ制御の主流であるリレーシーケンス(ラダーチャート)という半世紀前の中間言語体系がそもそもの処理速度を低減させているという事情もあり案外保守的なチップセットが継続しているのだと感じました。

総じて言えることは、「最新の半導体生産増産にはレトロな半導体が不可欠だ」ということです。
そもそも先細りするレトロな半導体を生産するのに半導体メーカーは新設設備など投資する訳もなく、だまし、だまし何とかほそぼそ生産を継続しているのが現状でしょう。

そうです、この、だまし、だまし生産をしているレトロ半導体群の納期解消が図られない以上、画期的に半導体部品逼迫は解消しないのではという結論に至りました。

さらに悲しいことは、各国で半導体生産設備の生産に拍車がかかり、貴重なレトロ半導体の取り合いが始まり、日本は中国、欧州に買い負けしているとの情報も入ります。

プロジェクトメンバーからは「この現状を認めて、最新チップに置換した再設計をするべきだ」との意見も聞けましたが、雰囲気的には「こんなに忙しいのに全とっかえ再設計かー、ハードばかりでなくソフトも新規開発になる……」と気持ちはこの段階で折れていました。

プロジェクトメンバーと共有した、大いなる反省としては、その当時からBOM構築をしていれば、ディスコン情報からBOM逆展開を経て影響度合いをマネジメントして、置換・設計変更ができたはずという後悔です。
いずれにしても、解決への決定打が見当たらない訳で頭が痛いところです。

高機能樹脂も同じ構図

半導体生産設備は高機能樹脂を多用します。ワイヤーハーネスを構成する樹脂コネクターから始まり、強酸化に耐える樹脂構造、部品などなど、半導体部品同様に生産設備増産に応じて旺盛な需要が発生するわけです。

米国の有名な化学会社の生産ラインが洪水に遭遇し、一時的な供給不足を招き、それをきっかけに「過剰需要=買える時に買っておこう」が発生したのも事実のようです。幸か不幸か半導体とは異なり樹脂ブロックは仕様に大きな差異はなくブロックで確保しておけば「腐らないし良いだろう」と在庫を積み重ねることになり、実需をはるかに超えた発注が取り合いの構図を生む原因となっていそうです。

従って、コネクターメーカーは樹脂コネクターを生産する樹脂そのものが逼迫してコネクター供給が滞り、結果、ワイヤーハーネスも製作できないということになります。

以上、まとめてシンプルに相関関係をイメージしますと……、

半導体部品の絶対的不足⇒全世界的な旺盛な半導体部品生産設備投資⇒生産設備用(レトロ)半導体部品・高機能樹脂の逼迫(取り合い)⇒生産設備の大幅な納期遅延⇒半導体部品の絶対的不足の継続

ということです。

結果、生産設備に必要な部品群の需給バランスが整わない限り、この問題は解消しないのでは? ということになりそうです。悲しいかな、その中には「細々と生産されている」レトロ半導体がいまだ存在することです。

前述した「風が吹けば桶屋が儲かる」とはこういうことですが、正確には「風が吹けば桶屋に材木なし」というべきかもしれません?

2022年当初から製造業ニッポンは試練です。受注はあるのに作りたいものが作れない。それが製造業自体の経営をむしばんで行きます。
この難儀に対しては、一製造業の視野ではなく、国家としての視点・視野での対応が必要ではないでしょうか。

以上

次回は3月4日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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