第122回 一品熱魂コラム 新年特別編 生産革新ユーザー会レポート~モデルユーザー製造業3社はDXをかく語りき~

先々月に紹介をしました「生産革新ユーザー会」の初開催を終えることができました。モデルユーザー様として登壇いただいた業態の異なる製造業3社には、自社改革にどのように臨んだのか語っていただきました。そこには中小中堅製造業のDXを具体的に知るための貴重な導きがありました。

一品熱魂コラム 新年特別編 生産革新ユーザー会レポート~モデルユーザー製造業3社はDXをかく語りき~

謹賀新年

今年のコロナ禍がどのようになっていくのか? いささかの不安は残りますがwithコロナとして、うまく折り合いをつけて過ごすことができる本年であってほしいと思います。

本コラムも120回を超えて「謹賀新年」を10回も繰り返すことができています。これも本コラムのご愛読が背中を押してくれたことと感謝しています。厳しい環境に耐えている製造業ニッポンですが、私のコンサルタントを通じて、特に中小中堅製造業にこだわった改革現場の景色を、視点をブラさず紹介していきたいと考えています。もちろん、ホッピー+金宮もブレません!

生産革新ユーザー会モデルユーザー3社座談会で語られたこと

生産革新ユーザー会の意義や座談会に参加願った3社のご紹介は下記リンクから前々月のコラムを参照してください。

第120回 一品熱魂コラム 特別編 生産革新ユーザー会を初開催します~製造業3社が語る目的、取り組み、効果とは~

同じ製造業といっても業種業態は大きく異なりますが、3社から聞けたDXとしての全社改革に求める結果は「全社効率改善=楽してもうかる製造業」でした。その意味で「入口は異なれど、出口は同じ」という表現は正しかったように思います。ただし、同じ出口でも向かうためのアプローチや、試行錯誤は3社各様でありました。

それでも、具体的なDXとしてのアプローチは大分類として下記の2群に別れました。

株式会社シーエスラボ 様、二ホンハンダ株式会社 様

レシピと工程管理によって製品を生産する混ぜ物系製品製造業として類似する2社ですが、「生産管理システム+IoT」という仕組みを軸足に、全社のモノつくり環境を改革して、全社効率改善を目指す事例でした。生産管理システムに正しい情報を自動的に伝えることがプロセス重視の製造業では大変効果があり、そのためのIoTの具体例として納得させられる事例でした。

株式会社東伸 様

生産設備設計製造という部品点数の多い業種です。従って設計部門改革として流用化・標準化設計の取り組みから始めて、その後、生産部門改革を行いました。結果、全社効率改善を狙って、上流から下流まで一気通貫に情報がスムーズに流れる(「情報の爆速化」と呼んでいました)仕組みを構築しました。まさに私が唱えている中小中堅製造業の「DX=ECM+SCM」を実践された事例です。

限られた紙面ですが、座談会で語られた三つの論点について私の視点から述べてみたいと思います。

(1)改革の旗手の重要性と、それを育成、発掘するのは経営層(者)マター

まずは3社の共通項として挙げられるのは「改革の旗手」が存在していたということです。

全社改革を行うわけですから、本気になればなるほど「痛み」は伴います。しかし、この痛みは容易に社員に受け入れられません。「余計な仕事が増えた」や「本当に楽になるの?」という言葉が現場に渦巻きます。

もちろん、経営層(者)はこの改革の主軸である訳ですが、現場に降りて細かな指示や方針の決定は現実的ではありません。かえって局部的な視野に偏って会社全体としてのバランスを失ってしまい、改革の失速を招きかねません。
そこで、やはり「改革の旗手」という役回りが必要になる訳です。

基本的な機能として、まずは経営層と社員(現場)とのインターフェイス役としての活躍が期待されます。
なぜ改革を行うのか。改革が成就すればこのような良いことが待っている。こんな会社の将来にしよう。いわゆる、現場へのモチベーションプランニングを実行する、できる人材です。自ら見せて、理解をさせて、やらせて、納得させて……です。

この話題を経営層にすると「ムリムリ、うちにはそんな人材はいないから」とハナから諦めモードに入ってしまう場合がありますが、これは正直言って経営層失格だと思います。これでは何度も言う「会社は経営者以上にはなり得ない」という典型例になってしまいます。

経営者として自社改革をもくろむのであれば、まずは改革の旗手をどのように手に入れるのか……
から始めるべきです。

リクルートする。社内で我慢強く育てる。などなど、いずれにしても時間とお金が必要な経営テーマです。

さらに、もっと考えれば、この改革の旗手が将来の経営層候補であることに気付いてください。
改革の旗手ほど「損な役回り」はありません。しかし、全社、全部門を俯瞰(ふかん)して部門間調整能力を鍛える絶好の機会です。各部門の言い分や、部門間の軋轢(あつれき)など、経営に必須なノウハウを会得するリアルな学びの場となるでしょう。

つまり、本当に我が社を変革し、次期経営層の準備も、と考えるのであればこの「改革の旗手」候補の獲得が大切なのだと、あらためて、この3社の事例を伺って強く思いました。

(2)ボトムアップとトップダウンの必要性とベクトルの一致

これは前項との相関が強いテーマではありますが、改革に臨むにあたってどれだけ全社一丸となれるのか? なっているのか? という論点です。

トップダウン

全社改革に対する経営的必然性の存在です。経営者自らの「このままでは我が社の永続的な存在が失われてしまう」という危機感、つまりは全社員の生活の糧を守り抜くための改革という意識をしっかり獲得できているのか? ということです。「DXがトレンドになっているから我が社にも取り入れよう」などという動機では改革の主軸にはなり得ないということです。

ボトムアップ

前述の「改革の旗手」に導かれた社員が「自身の大切な時間を費やすこの会社を良くしていこう」そして「もうかって、もっと給料を上げてほしい」をかなえるために「現状否定」を認識・実行して改革への行動を開始してくれるようになることです。しかし、「言うは易し」の意識改革です。時間を掛けて「モチベーションプランニング(やる気の創生)」を実行する覚悟も必要です。

幸いにもトップダウン・ボトムアップが存在している場合であっても、その方向性、つまりベクトルが同じ方向に向いていることも重要です。改革の具体的目的・内容や、進捗(しんちょく)のさせ方、それらに伴うリソース(ヒト・モノ・カネ)確保など、トップダウンとボトムアップがうまくかみ合って協調する必要がある訳です。

具体的には、「中・長期経営計画」として、改革の企画案を経営層と少なくとも改革の旗手とが合意のもとに練り上げる必要はあると考えています。

この経営計画と改革の進捗をうまく同期させてマイルストーン管理をしながら、会社全体で改革の状態を確認していくことが重要です。

(3)抵抗勢力の排除。その手段と経営的視点

3社ともこのテーマには苦労が絶えなかったようです。
大変優れた「改革の旗手」が存在しても、社員全員がこれから実行する改革に賛同して行動を起こすとは限りません。

あからさまに反対する社員は、その反対の論点が明確ですから、改革の旗手はその論点に対し氷解に努めることができますが、厄介なのは「反対は言わないが行動もしない」面従腹背も含めて、いわゆる隠れ抵抗勢力です。

この勢力は私の経験としても必ず存在します。その意味で私は「改革への必須テーマ」と認識しています。

やる気のある社員だけで改革に励もうとしても、この抵抗勢力の放置はせっかく、創生した「やる気」をじわじわとむしばんでいきます。結果、改革の成就の大きな妨げになってしまいます。

対処としては、しっかりと「人事権」を行使することです。

まずは改革への行動は会社の経営計画実行への社員としての義務と考え、理解させるべきです。

会社の経営方針にどうしても従えない社員には、やはり人事権を行使すべきでしょう。「我が社は全員家族だから」と言って人事権に手を付けたがらない経営層も見てきましたが、これでは経営権の放棄といわざるを得ません。

私は「改革の実行は忠誠心のリトマス試験紙」と経営層に説明しています。
その意味で、少数精鋭化を目指すためのプロセスとして改革を実行している経営層も存在します。

誰が本当に貢献してくれるのか? 誰が我が社を生存の糧と考えてくれるのか? 普段の業務遂行からはうかがい知れない姿を改革の実行から見ることができます。

いずれにしても中小中堅製造業の生き残りに必須な少数精鋭化です。改革の実行がそれらをかなえる手段の一つであると考えています。

初回の開催で、進行役の一助を担いました。一抹の不安を抱きながらの進行でしたが、モデルユーザー3社の本音をお聞きすることができたことや、参加された方々にそれらをお伝えできたことは、我々「製造SP」というチームにとってもエポックメイキングな催事であったと思っています。

次回の「生産革新ユーザー会」はどのような形で開催されるか、まだ分かりませんが、楽しみでなりません。

以上

次回は2月4日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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