第121回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その52~トップダウンとボトムアップとのはざまで~全社改革の志を持った幹部層の悩み深き実際~

全社改革成就の必要十分条件の一つに、トップダウンとボトムアップの存在と、そのベクトルの一致があります。それ故、改革の必要性を感じ、それに取り組もうと奮闘する幹部層が苦悩する実態を多く見ます。せっかくの改革も口火を切ることが難しく、孤軍奮闘することになります。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その52~トップダウンとボトムアップとのはざまで~全社改革の志を持った幹部層の悩み深き実際~

今年も、もう師走です。1年早すぎです。コロナ禍も不気味に(?)急峻(きゅうしゅん)な収束を見せ、飲み屋さんのちょうちんもにぎやかになってきました。なじみの飲み屋もお酒解禁で三冷ホッピーから金宮お湯割りと、いつものルーティーンをこなしましたが、なんか違和感があり眺めてみると、お客のハケが早く、ダラダラ飲みが見当たりません。コロナ禍はのんべえのしぶとい生態まで変えてしまいました。

トップとボトムとのはざまから始まる苦悩

全社改革成就の必要十分条件の一つに、トップダウンとボトムアップの存在と、そのベクトルの一致があります。
しかし、ダウンとアップさえも存在しないケースも今までに多く見てきました。

中途入社した幹部(A氏)は前職の会社と比較して、現職の製造業としての現状に多くの問題を発見することになります。このままでは存続は危ういと感じて、トップ層(経営層)とボトム層(社員層)に問題提起を始めることから改革は始まります。

しかしながら、それに対するレスポンスは大変脆弱(ぜいじゃく)で、トップ層からは「DXとやらもトレンドだし改革は必要だが、当社にそんな改革できるのかな?」と腹の底から改革など考えていない言葉が返ってきます。一方、ボトム層からは「改革は結構ですが、我々にこれ以上負担がかかるようなことだけは勘弁してください」という言葉が重なるわけです。

このA氏が中途採用される時には経営者から「わが社の将来に向けて第三者の視点でいろいろ改革してほしい」などと勇ましい言葉を投げかけられて、やる気満々だったのですが……。
まあ、ふたを開けたらこのような状態です。

トップの「発する言葉は勇ましいが本音ではない意識」とボトムの長年の経緯から由来する「何をやっても無理との諦め」とのはざまにハナから陥ってしまったわけです。

せっかく中途入社した会社の将来に暗たんたる気配を感じて、「一緒に沈んで行くのはご免だ」と思う一方、どのようにしたら少しでも前進するのだろうかと大いに悩むのです。

たまたま、私に相談があって、A氏の後押しをすることになりました。その場合、まずは経営層向け、社員層向けの「啓蒙(けいもう)コンサル」から始めます。

「啓蒙コンサル」の骨子は……

  • 多くの中小中堅製造業を預かるコンサルタントとして、世の中の現状やそれに必死に整合を図る製造業の現状つまり他社の現状を知ってもらいます。要は、世の中の扉を開いて、その風を感じてもらいます。
  • 改革という「脱皮」の必然性から、DXというトレンドを分かりやすく具体的なテーマとして捉えてもらえるように導きます。
  • 結果としては、経営層には「利益改善」としての「全社効率改善」、社員層には「給与アップ+働き方改革」としての「全社効率改善」に着地させます。
    もちろん、1回の啓蒙コンサルで劇的な変化が得られることはありませんが、「改革へのきっかけ」につながればまずは成功です。
  • そして最も大切なのは「幹部、A氏が言っていることは正しいのだ」と考え、信じてもらうことです。
    つまり、私が「A氏が提起している改革は正しいのです」という裏打ちを行うことだと考えています。

その後は「地ならしコンサル」と呼んでいる意識改革やモチベーションの形成に努めます。つまり、今より楽にもうかって、働きやすい製造業への着地イメージが全社共有できれば目的は達せられ、改革への心と体の準備は整ったといえます。

トップダウン・ボトムアップの形成への苦悩

こうやって、社内に「改革・脱皮・DX」などという意識がようやく芽生えてきます。しかしながら、いまだにこれは、あくまで芽生えです。

この状態ではトップダウン・ボトムアップもフォースにはなっていませんから、A氏はトップ層には「このような方法と仕組みでもうかる製造業を考えていますのでリソースの準備をお願いします」と伺い、ボトム層には「仕事がこれだけ楽になって待遇改善も同時に図れます」と説得を重ねます。

今までの事例からボトム層は現状に「何だかなー」と不満、矛盾を抱いている場合が多いので、A氏の言うことに耳を傾けて、「それならやってみよう!」という意識の変化が顕在化するケースがことの外多いと感じています。

厄介(?)なのは、やはり経営層です。

経営層が語る勇ましい言葉は多いのですが、リソース(主にお金)となると途端に意気消沈。
総論は賛成だが、今までの業務フローや組織変更という各論になるといろいろ異論を述べ始める。

この辺りでつくづく思うのは「会社は社長以上にはなり得ない」という私の信念です。
端的にいえばトップダウンの形成が難しければ改革は諦めざるを得ません。

自分の会社としてのトップ自身に「やる気の形成」ができなければ、仮にリソースが確保できても改革は成就しないからです。
その意味で経営層自身の意識、もっとベタに言えば「本音」がどうなのか? の確認は必要です。

もちろん、自社を未来に渡って継続したいと経営層は思っているはずです。しかし、何となく事業を継続できるような安易な外部環境ではなくなってきているわけで、積極的に生き残りを図る経営施策、つまり中期・長期経営計画の立案と共に改革案を畳み込んでいけるのであれば、トップダウンの形成につながると思います。

言葉にすると数行の「形成プロセス」ですが、それを実際に実行するA氏の精神的、物理的負担は大きいものです。
ここでもう一つ経営層に気づいてほしいことは、改革が成就したならば、このA氏は次期経営層(者)候補に成長するという事業承継へのプロセスであることです。

改革の旗手として常に会社全体を俯瞰(ふかん)してプロジェクトをけん引し、部門間に時として発生する利害をバランスよく調整しながら改革を成就させることはまさに経営力そのものです。

「中期的視点の全社効率改善」とは、「もうかる製造業へのDXと長期的視点の次期経営層(者)候補育成」であり、それはすなわち「事業承継」という重要な二つのテーマを含んだ改革であると理解することが経営層には求められていると考えています。

以上

次回は1月7日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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