第10回 グローバル化と3Aモノつくり ~その2~

前回の第9回「グローバル化と3Aモノつくり~その1~」は「中小・中堅製造業にとってのグローバル化の有り方」を切り口に、特にそれを支える人材の重要性と「自前で育てる」という経営者マターである「人材教育企画」の具体的な考え方をのべました。
今回は、~その2~として、人材に引き続き、製造業としてのモノつくりの源泉である設計成果物の考え方、有り方をテーマにしたいと思います。キーワードは「BOM」と「3Aモノつくり」です。

「世界標準の設計成果物」と聞いて皆さんはどの様なイメージを持たれますか?
JISやISOでそんな規格があったかなー?などと聞こえてきそうな気がしますが、そういうことではなく、要は「どこでも」モノつくりができるようになっている設計情報としての「形」のことです。
設計そのものの完成度とは別の尺度として、モノつくりをしっかりと実現させられる成果物としての「形」が問われています。

どこでも?・・・それは、まさにグローバル化そのものです。
つまり、自社の製造工程を前提としないこと。これは第8回のコラム「チームワーク・モノつくり」でお話した「尻拭い・気配り生産工程」に依存せずにモノつくりができる「形」に成っているか?ということなのです。

そして、その形とは「BOM」です。
部品構成表とも呼ばれますが、このBOMをしっかり構築できているか否かです。
多くの中小・中堅製造業の設計部門の設計成果物はいまだに「図面+手配表」という不完全な「形」のままの情報で出図され、下流側の「尻拭い」で何とか帳じりを合わせているのが現実です。

この様な「図面命(いのち)」から抜け出せない不完全な出図を「ジグソーパズル出図」と私は呼んでいます。
手配表にある部品は、いわばジグソーパズルのピースであり、下流側には組図というヒントを渡して「さ~、この部品(ピース)はどこにはまるでしょう?」と言わんばかりに下流側に負担を掛けているのです。
購買部門は、苦労の末にパズルを完成させ、この手配表にあるすべての部品を「せーの!」で団子発注する。工程順序や発注タイミングを考える発想もないし、時間もない。これでは、部品の支払いばかりが先行して、キャッシュフローは悪化するばかりです。このあたりは、第4回のコラム「設計部門の活動」の中の「3.BOM(部品構成表)の構築」をご参照ください。

さて、この現実はグローバル化とは真逆の構造の存在を意味し、それを私は蛸壺(たこつぼ)製造業と呼んでいます。そして「この様な構造のまま、グローバル化を図ろうとしても失敗に終わるだけだ」と申し上げています。

既に第4回のコラム「設計部門の活動」にBOMの必要十分条件は述べましたが、もう一度グローバル化という視点で読み返してください。また、違った気づきを得て頂けると思います。

世界標準の設計成果物をさらに突き詰めていくと、そこには「設計成果物の商品化」という、とても大切なテーマにたどり着きます。
モノつくりをしなくても設計成果物がそのまま換金できる、利益を生むという発想です。

つまり「ノウハウ移転が容易な設計成果物」の存在です。
このような発想やイメージを皆さんお持ちですか?先述した蛸壺(たこつぼ)製造業では難しいとは思いますが・・・

設計成果物さえ渡せばモノが作れる様に、成果物の完成度に磨きを掛けることです。
BOMという形と、それに紐づいた設計・部品情報そしてモノつくり情報がキッチリと移転可能な状態に有るかということです。

ロイヤリティーベースでの技術移転やお客様の足元で生産するために現地の生産工場に生産委託する場合等、資本力に限界が有る中小製造業がグローバル化を目指すための試金石と成る、とても大切なテーマです。

世界標準の設計成果物への前提には当然、流用化・標準化設計の存在があります。
それは何度も述べていますとおり、BOMなくして叶わず、まさに表裏一体の関係に有るからです。
ですから流用化・標準化設計の推進が、自動的にグローバル化にかなう世界標準の設計成果物を目指すことに成るという関係にも注目していただきたいのです。
世界標準の設計成果物をもってモノつくりを行う完成形を私は「3Aモノつくり」と呼んでいます。

「Anytime and Anywhere with Anybody」= 3Aモノつくり

いつでも、どこでも、誰とでも、モノつくりができる。これがグローバル化の証(あか)しだと考えています。
逆に、自社の下流側、つまり生産部門を前提とした設計成果物ではグローバル化にはたどり着けないということです。

前回の~その1~で述べた人材と今回の設計成果物、これらの存在があってこそ、グローバル化成功へのカギが手に入ると強く感じているのです。
コバンザメ移転(コラム第9回)という思慮を欠いたグローバル化はもとより、「我が社の技術力やノウハウさえあれば」という自信に基づいたグローバル化への発想であっても設計成果物の有り方を再度検証していただき、3Aモノつくりが可能なことを確認したうえで最終判断を行ってほしいと思います。

次回からはグローバル化の最後の難問である「下流側の生き残り策」というテーマで進めていきたいと思います。(10月5日(金)の更新予定です。)

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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