第11回 グローバル化と下流側の生き残り策 ~その1~

前回までの話題はグローバル化への必要十分な条件である人材育成のための「3Wジョブローテーション」、そして設計成果物のグローバル化対応としての「形」を整え「3Aモノつくり」を可能とすることでした。

流用化・標準化設計を叶え(これだけでも十分やりごたえの有る改革ですが・・・)、人材を育成し、BOM構築を実現して設計成果物もグローバル化対応出来て「完成だー!あー、やれやれ」といきたいところですが、もう一つ大きな難題が待っているのです。
読者の「えーっ、まだあるの?」という声が聞こえそうですが・・・

めでたくグローバル化が可能に成り、海外現地生産や現地法人の設立に漕ぎ着けることができたわけですから、その成果を得るために積極的にグローバル・ビジネスを推進することは当然です。

しかし、そこで、浮上してくるのが今までモノつくりの根幹を担っていた下流側、つまり本社(日本側)生産部門の行く末です。
「現地生産も軌道に乗ったし、ご苦労さんでした!では、解散!!」とトカゲのシッポ切りの様なリストラはできないし、すべきではないと思っています。
では、どうするのか??これがグローバル化最後の難題なのです。

今まで現場改善を繰り返し、磨きを掛けてきた生産部門の人材と仕組みをおいそれと諦めることができないという気持ちは経営者(層)としては当然でしょう。
しかし、「グローバル化の実行には、この難題が包含されているのだ」という現実を直視しない、または先送りしてしまう経営判断を多く見ます。

確かに、グローバル化が叶うまで下流側には頑張ってもらう必要があるわけで、モチベーションの維持という観点から「あなたたちは将来不要になるかもしれない」という雰囲気や疑念を払拭するために「見てみぬ振り」や「伏せて進める」という判断が存在することも理解できます。
しかし、それでは経営者マターであるグローバル化戦略に大きな欠陥があると言わざるを得ません。

私自身、この難題に対し正解を持ち合わせているわけではありませんが、私自身が経営者として実行してきた方法を一つの「やり方」として、その考え方や具体的な仕組みを紹介したいと思います。

キーワードは「全方位受注」と「別法人化」です。
結論として、求める結果は雇用とモノつくり能力の維持・発展が目的ですから、このキーワードを軸に現行の生産部門をリフォームしていくことになります。

1.全方位受注
まず、大きな意識改革として、「生きていくために何でもつくる」という決意の醸成です。
「何としても生き残る」という決意を持った集団で無ければ生き残り策はすべて絵に描いた餅になってしまいます。従って、この段階で、ある程度の離脱者が出ることはやむを得ないことでしょう。

そして、その実現への方法論として「全方位受注」があります。
イメージ的には「外注型の製造業」としての存在ですが、いわゆる「手間賃仕事の製造業」では生き残れません。国内生産ならではの付加価値をつけて、しっかり稼げる仕組みが必要です。

そのためには、以下の二点に集中した付加価値構造で差別化し、生き残りを図ります。
1:あらゆる設計成果物を受け入れられる製造業(代替品提案や設計変更対応も含めて)
2:海外生産にまねできない超短納期(1Day、2Dayサービス)

この二つのテーマを実現するには、具体的な仕組み(次回に説明します)と意識の確立が必要です。

2.別法人化
前述した意識改革の促進を図るには、独立した「自業自得の組織」にするのが一番です。
そのための「別法人化」となります。これまで通りに毎月給料が振り込まれている環境からの決別です。

法人ですから、当然、経営層や営業人材も必要になるわけです。
そこで、これまでのコラムでご紹介した3Wジョブローテーションで鍛えた人材を置きます。さらに将来の利益上納を期待する証(あか)しとして是非、子会社化したいものです。
在庫資産や固定資産のリース化、貸与等の条件設定の自由度も増します。

いかがでしょうか?
自前の人材育成は、グローバル化という「攻めの戦略実行」ばかりではなく、残す下流側の終戦後の行く末(敗戦では無い!)という「守りの戦略実行」のためにも必須であること、その重要性を理解していただけたでしょうか。

次回は、「グローバル化と下流側の生き残り策」その2として、全方位受注の具体的な仕組みと考え方を話題にしたいと思います。
(11月2日(金)の更新予定です。)

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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