第93回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その28~設計部門の評価制度を考える その2

設計部門の働き方改革を見据えて、どのように評価制度を考えていけば良いのか?どのようにしたら機能するのか?前回のコラムは預かる会社の現状を俯瞰しました、今回は評価の基準となる査定基準を定めて行くことになります。設計部門の査定基準とは……

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その28~設計部門の評価制度を考える その2

8月になってようやく梅雨明けです。7月はドイツ・ババリア地方の拠点都市ミュンヘン最大の製造業であるBMWを訪問してきました。IT・Ver4を謳って実践している当社の先進性は見習うべきところが多かったと感じています。特にIoTの具体的事例は大変参考になりました。紹介する機会が有れば良いと思っています。
若干胸が痛むのは代用ビールのホッピーではなくババリアの本物ビールに酔いしれていたことです。飲み物ではなく「食べ物」として存在するビールは奥が深い。ホッピー許せ!

評価制度の基準、つまり査定基準の策定から始める

前回のコラムでも述べましたが、経営方針や会社の在り方を反映した査定基準策定を目指すべきです。やってはいけない大きな誤りは、他社の基準やどこかに「ひな形」で存在するような基準を流用してしまうことです。
第92回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その27~設計部門の評価制度を考える その1

これから査定作業に当たる幹部、そして経営層が設計者に求める技量や設計部門のあるべき姿、望まれる人材像をキッチリ擦り合わせて、基準となる「ものさし」の目盛りを真摯に刻んでいく、大変重要な作業です。

この作業の手を抜くと折角の評価制度が崩れてしまうことになります。借り物ではなく自身から滲み出るが如く熟慮に熟慮を重ねて目盛りを刻んで下さい。

参考までに、私が目指した設計部門の評価の項目と特徴(こだわり)を紹介しましょう。

1:技量

いわゆる、設計者としての知見、ノウハウへの評価であり、評価の根幹をなす項目です。幸か不幸か?この項目の査定は比較的ブレが少ないのが実際です。設計という性である、森羅万象を相手に格闘し、持てる知見とノウハウを駆使して、それを満足した設計成果物はいわゆる「不具合」を起こさない設計ということになります。この森羅万象は「公平に」設計者に関与しますから不具合を起こさない技量の持ち主は客観的に評価しやすいということになります。
さらに営業力も技量の一部です。「歌って踊れるエンジニア」は高評価です。「無口で寡黙なエンジニアが良い」とはいかないのです。営業いらずの設計者こそ中堅・中小企業には有効なのですから。

2:チームワーク・スキル(マネージメント・スキル)

蛸壺設計に慣れて個人プレー設計で成長してしまった設計者には厳しい評価軸です。設計プラットホーム上でBOMを構築しながらチームワーク設計を実行することが望まれる環境では必須なスキルです。さらに、将来の設計幹部になり得る人材の発掘としてもこの項目は重要です。人事管理能力の早期発見は将来の幹部層構想に直結します。長期に亘る幹部層教育に早めに移行できます。

3:流用化・標準化設計(=設計効率・コスト)

どんなに技量が高くても、コスト意識や納期厳守意識が希薄では評価できないわけです。良い設計とは「儲かる設計」と考える設計者は経営的視点からは大変貴重です。従って技量=最先端と勘違いして趣味や個人的嗜好に走る設計者は評価できません。常に述べている設計部門を1階建て構造に変革して1階でも2階でもしっかりと期待される設計技量を発揮できる設計者は今後評価が高くなるでしょう。

4:会社方針に対する忠誠度

この項目は経営方針と直結します。その1でも述べましたが、経営者の思い(=経営方針)としての評価軸に自身の思いの反りがあわなければ永遠に?評価されないのです。「経営者との価値観の相違」と簡単にかたづけられる問題ではありません。
技量より重要と経営層がこの項目への評価加重を定めたら本項が査定要件の最重要項目となります。
経営者と価値観が異なる会社に存在すべきか否か?私自身も悩んだ経験から、自身の価値観との齟齬を早く知らしめる為にも、この項目は良くも悪くも重要です。

各項目の評価基準の細分化

査定基準の良し悪しはできるだけブレの少ない結果を導けることです。
例えば「技量」という一括りの項目で評価査定したら粒度が荒く査定者に依ってのブレ幅も大きくなると思います。
この技量を捕捉するための副次的な評価軸は何かを見出していくことが大切です。
メカ系、エレキ系、ソフト系全て異なるはずです。さらにマルチ系(メカ系エレキ系両刀使い等)の評価軸も必要でしょう。評価軸粒度が細かければ良いとは言いませんが、各社の製品形態に依ってあるべき技量、必要とされる技量は異なるはずです。手抜きをせずに「わが社の設計者の技量のあるべき姿」を求めて全霊を傾けて策定ください。

次回は難題です。
苦労して策定した「査定基準」はできたものの、査定の実務経験値が低い(無い)幹部層の査定スキルの向上には時間が必要です。「会社は選べるが上司は選べない」の原因としない為に、どの事例も苦労しました。
色々な「査定癖(ぐせ)」も出現し、頭を抱えます。査定スキルアップへの実際を紹介しましょう。

以上

次回は9月6日公開予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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