第92回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その27~設計部門の評価制度を考える その1

設計部門の働き方改革としてテレワーク(在宅勤務)が実現しようとしています。そうなると、勤務時間労働ではなくなり、アウトプットされる設計成果物に対する評価が必須となります。働き方改革を見据えて、どのように評価制度を考えていけば良いのか?どのようにしたら機能するのか?数度に分けて考えてみたいと思います。

設計部門BOM改善コンサルの現場から~その27~設計部門の評価制度を考える その1

7月に入って梅雨本番という今年です。ジョッキに入った三冷ホッピーも湿気でしょうか?大汗をかきっぱなしです。珪藻土(けいそうど)でできたコースターがそれを上手く吸って、紙の資料が濡れるのを防いでくれています。些細なことですが「機能美」を感じます。「使えるなおまえ!」てな感じです。

流用化・標準化設計やテレワークに必須な評価制度

中小・中堅製造業野設計部門の働き方改革への提案として、「流用化・標準化設計プラットホームを完成させてテレワークを実現させる」という考え方の詳細は下記コラムを一読願います。

第74回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その11~ 中小製造業・設計部門の「働き方改革」とは? Part1
第75回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その12~ 中小製造業・設計部門の「働き方改革」とは? Part2

拘束時間労働に対する評価の典型は残業手当です。長く会社にいたこと(決して働いたとは言いません)に対する評価です。長く会社にいるとお金が沢山もらえるという不思議な(?)評価です。そこには拘束時間の長さ=アウトプットの増加という関係がなり立っている必要がある訳です。

生産ラインでの作業ならまだしも、設計業務には本質的にそぐわないことは明らかです。ましてや設計効率を上昇させる=短い時間でアウトプットを得るという動向を求める流用化・標準化設計や自己裁量労働のテレワークでは真逆の発想の評価制度が必要となります。

では真逆とはどんな発想でしょうか?
そもそも設計業務で評価すべき事柄は何でしょうか?少し考えてみましょう。

1:機能仕様、コスト仕様を満足している
2:不具合(設計ミス)が無い
3:出図納期が守られている

この辺りまでは皆さんも直ぐに出て来るのではないでしょうか?
さらに流用化・標準化設計では最も大切な項目が……

4:使い捨て図面が無い・少ない = 流用化率標準化率が高い (⇒ 1階部分(※)の評価)
5:新規性・斬新性 (⇒ 2階部分(※)の評価)

という項目です。これは設計効率の高さや技量向上を示すとても重要な項目になって行くでしょう。

※1階部分、2階部分については、「第55回 流用化・標準化設計は設計者からチャレンジを奪うのか? その1」をご参照ください。

第55回 流用化・標準化設計は設計者からチャレンジを奪うのか? その1

如何でしょうか?これら項目には設計時間相関はありません。何時間で設計して出図しようが、そもそも評価軸が存在しないのです。従って、拘束時間評価が全く意味を持たないと言っている根拠がここにあります。

もちろん、会社に所属しているわけですから経営方針への理解度やそれに伴う忠誠度、社会人としての基本行動への評価軸は必要でしょうが、それらは設計業務自体に対する期待役割から考えると副次的な評価軸です。
これらを前提条件にどのように設計部門に評価制度を構築していくべきなのか……
深堀して行きましょう。

正しく公平な評価制度とは……

評価制度に対しては今までも色々な考えや意見を見聞きしましたが、私の志向としての評価制度の在り方で述べていきたいと思います。

まずは最初に、正しく公平な評価制度を追及することは大切ですが「実現することは不可能だ」と断言したいと思います。「えっ!それでも評価制度が必須というのですか?」という声が聞こえてきそうですが……

真意は「正しくて公平を追及し過ぎても意味がない」と申し上げたいのです。なぜか?……

それは人(上司)が人(部下)を評価するからです。そこには人間関係や感情という人間特有の複雑系が存在し、メートル原器のような公正な基準評価軸は成立し得ません。残念ながら評価制度には避けられない「性」だと考えています。

こんな言葉を聞いたことがありませんか「会社は選べるが、上司は選べない」これは正に評価制度のジレンマを端的に表した名言だと思います。従って経営者は評価制度を導入することに伴うリスクとして常に考えておくべき視点だと思います。

そうです、評価を担う幹部への期待役割は「正しく公平な評価への試行錯誤」なのです。評価できない幹部は大切な部下を失うこととなります。ですから評価ができない、改善しない幹部は経営者として評価ができないという関係になっていくでしょう。幹部の最も大切な期待役割は評価能力と言えるでしょう。

いろいろな困難がある中で私が評価制度を重視するのは、私の経験から評価能力の高い幹部を持つ組織は例外なく活性化していたことです。評価をする・されるという緊張関係が組織活性化にとても重要なのだと気づかされたからです。

自分の評価を正しく部下(スタッフ)に理解させられる幹部には必ずリスペクトが伴っていると感じています。「あの部長がそう評価するならやむを得ないな。チャレンジするか!」というスタッフの納得感を感じるのです。
これらを前提に前に進めていきたいと思います。

コンサルティングしている会社の評価制度の実態は……

正直申しまして「惨憺(さんたん)たる状態」という表現になってしまいます。ワースト3は……

1:シンプルに「そんな制度無い」ただし、「今後必要」から「面倒くさい」まで意識の差は大きい
2:あるが形骸化している=どっかの会社のモデルを持ってきただけ
3:経営者が「社員は家族だ!家族を評価するな、差別するな」=そんな会社に限って、社員は家族では無くて「居候」になってしまっている。*「居候」=存在すれば給料がもらえる

です。

なかなか手ごわい状態ですが、「本気で設計部門の効率改善を望むなら効率改善に励む設計者を評価しましょう」と説得を続けることになります。「設計者の自己実現を叶わせる」というモチベーション・プランニングは流用化・標準化設計プラットホーム構築に大変重要ですが、上手くプラットホームが構築できても「流用化・標準化設計を持続させ設計効率改善を継続させるためにはこの評価制度は必須なのです」と重ねて説得を続けます。

どこから始めるのか……

まず、評価項目の見極めです。つまり何を評価するのか?ということです
当初に挙げた5項目を始めに、評価を実行することになる幹部スタッフの重要施策課題となります。
ブレストも含め喧々諤々、でもこの時間は色々な気づきもあって重要です。

実務的な項目だけではなく、
1:会社の基本方針の理解
2:忠誠度
3:チームワーク能力
等々、社会人としての基礎能力も副次的ではありますが評価項目対象となるでしょう。

とにかく、評価項目こそ経営理念やその経営者の価値観が出てよいと思います。そうです、どんなに一般論として優れた人材でも、この経営者の価値観にそぐわなければ永遠に評価されないのです。その辺りを社員知らしめることは、とても大切です。経営者と幹部が改めて経営者の価値観や経営的に実行したい思いを再確認する良い機会でもあります。
「オーナー社長が何故会社を始めたか!」その原点を始めて知る幹部も出てきます。

ですから絶対にやってはいけないことは、他社事例をそのままコピペして項目にしてしまうことです。これでは全く意味がありません。
そして将来「どうやったら、この会社で評価されるのか?何処に力点を置いて何処で手を抜くのか?」この辺りの傾向と対策が打てる社員が出てきたら評価制度が定着したと言って良いでしょう。

次回は何とか評価項目を設定しても幹部達の「どうやって評価するの?基準は?わからない!」というトホホ状態からのスタートとなる訳ですが、その顛末から始めたいと思います。

次回は8月2日(金)更新予定です。

ご案内

書籍

当コラムをまとめた書籍『中小企業だからこそできる BOMで会社の利益体質を改善しよう!』を日刊工業新聞社から出版しています。
BOM構築によって中小企業が強い企業に生まれ変わる具体策とコツをご提案しています。

Nikkan book Store(日刊工業新聞社)
中小企業だからこそできるBOMで会社の利益体質を改善しよう!(日刊工業新聞社Webサイト)

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部品構成表管理システム 生産革新 Bom-jin

製品原価の80%は設計段階で決定されます。「生産革新 Bom-jin」は生産管理とのデータ連携を重視し、設計技術部門の図面・技術情報などの設計資産を「品目台帳」で管理。部門内の設計ルールを統一し、標準化と流用化を実現します。また、生産管理システム「生産革新 Raijin SMILE V」と連携し、生産部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減・納期短縮・生産効率の向上を実現します。

ハイブリッド型生産管理システム 生産革新 Raijin SMILE V

「生産革新 Raijin SMILE V」は、標準品や規格品の“繰返生産”と、個別品や特注品の“個別受注生産”との両方に対応したハイブリッド型の生産管理システムです。また、部品構成表管理システム「生産革新 Bom-jin」と連携し、設計部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減、納期短縮、生産効率の向上を実現します。

この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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