第55回 流用化・標準化設計は設計者からチャレンジを奪うのか? その1

走り梅雨です。今年の夏は酷暑との予想ですが、梅雨明けは早いのでしょうか? いずれにしても冷たいホッピーが一番おいしい季節になって来ました。ジョッキが進みます。

今月からは少し重たいテーマですが、愛読していただいている皆さんとしっかりと小生の考えをすり合わせておきたい部分でもありますので複数回に分けて述べてみたいと思います。その思いの発端は、コンサルティングの仕事でお預かりしている各社から多く聞かれる共通の疑問・質問としてのテーマでもあるからです。

あるお客様からの疑問点の主旨は次のようなものです。
「流用化・標準化設計、つまり今ある設計資産を上手く活用しながら仕様を満足させられる設計能力は確かに重要ですね」
「しかし…」
と続きます。

「それは新たな技術への取り組みだとか、斬新なアイデアに基づいたチャレンジ設計の芽や発想を摘んでしまうのではないでしょうか?」
という疑問・質問です。

皆さんはどのように思いますか?
小生は流用化・標準化設計を「目指せレゴブロック設計!」と、ことあるごとに言っています。この疑問は「手持ちのブロック(今ある設計資産)を工夫しながら組み合わせ、何とか目的の形状(仕様)にする」という能力は磨かれるが「こんなブロックを新規に作ったらもっと斬新な形状を構築できる」という能力は削いでしまうということなのだと思います。

私はこういった疑問に、いつも二つの解答を用意しています。

その1
手持ちのブロック(今ある設計資産)を知恵と工夫で目的の形状にするという過程、行為は立派な「創造」行為であり、決してチャレンジを阻害してしまう要因にはならない。ただし、設計者としての技量を高めるための必須要件である全く新たなテクノロジーへの接触やそれらを咀嚼し身に付ける(=ノウハウとする)ための試行錯誤には別の補完が必要です。その補完については「その2」で解説しましょう。

その2
「設計部門は2階建てにすべき!」
1階は「流用化・標準化設計のフロアー。御社の柱となる製品の設計を担当」つまり、今日の糧を生み出すフロアーであり、御社のコアテクノロジーが存在します。このフロアーの設計効率を徹底的に高めることで設計工数に余力を生み出します。この「設計工数の余力」を生み出す行為こそが小生が最も求める流用化・標準化設計の結果なのです。

2階は「新規開発、超超短納期、テクノロジー開発フロアー」です。明日の糧を生み出す部屋です。設計工数の余力をこの部屋に徹底的に注ぎ込むのです。このフロアーには大切な二つの役割があります。

  1. 新たなコアテクノロジーの開拓も含めた新たな製品群の開発
  2. 設計者の道場、教育現場。設計者への育成の「修羅場」を企画し、「問題を沢山作って沢山解決させる」のです。解決するプロセスこそが設計技量の充足に他ならないからです。

設計工数の限界が売上の限界になってしまっている設計部門は、2階建ての設計部門にはなり得ませんし、設計工数の余力があってこその設計部門2階建てのフロアー運営なのです。流用化・標準化設計で設計効率を高め1階の運営を楽にして、難しいマネジメントを要求される2階の運営に全力を傾けるイメージです。

文字の表現で上手く2階建てのイメージが伝わるか、いささかの不安があります。
次回は少しイメージを共有できるイラストを基に再度2階建ての意味と、それに関わる情報連携や下流側との関係を述べてみたいと思います。

次回は7月1日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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