第56回 流用化・標準化設計は設計者からチャレンジを奪うのか? その2

予想どおりの酷暑が始まりました。小生、ホッピーによる水分補給はぬかりありません。しかし関東は水不足が懸念され、一方、九州の想定外の多雨と自然のバランスが崩れています。製造業においても「バランスの維持=ちょうど良い」ほど難しい課題はありません。

前回に引き続きその2です。再度前回から読み返してもらいたいと思います。

第55回 流用化・標準化設計は設計者からチャレンジを奪うのか? その1

肝は…
「設計部門は二階建てにすべき!」でした。
そのイメージをより具体的に共有するためにイラストを用意しました。

ここには設計部門のみならず、製造業の下流側といわれる生産部門も含め、さらに営業部門、それも設計部門と一体となった活動が求められる営業・技術部門も存在します。
そして、上流側、下流側間のインターフェイスとして設計成果物の情報連携も載せました。今回、その2では設計部門と営業・技術部門とを中心に話題を進めたいと思います。(赤細線で囲んだ部分)
結論からいえば、流用化・標準化設計を実現し、設計効率を高めた結果として求める姿がこの二階建て構造の設計部門です。「二階建て構造にするためだけに流用化・標準化設計を頑張るの?」との声が聞こえてきそうですが、まずは、各フロアーの働き、役目から説明しましょう。前回も概要は説明してありますが重複を恐れず参ります。

一階:経営を支えるフロアー=今日の糧を生み出す

「流用化・標準化設計」のフロアー。御社の柱となる製品の設計を担当、つまり今日の糧を生み出すフロアーであり、御社のコアテクノロジーが存在します。「会社経営と直結する製品をいかに効率良く設計成果物として生み出すか」というミッションを担うフロアーです。もう少し噛み砕けば会社経営と直結する=利益ですから原価を安く、手戻りの無い、つまり設計不具合の無い設計成果物をアウトプットするフロアーでなくてはなりません。
さらに、このフロアーの設計効率を徹底的に高めることで「設計工数に余力」を生み出します。設計工数に余力を生み出す手法として、このイラストでは二つの提案をしています。

  1. 流用化・標準化設計による設計効率向上
    これは既に説明は必要が無いと思いますが、設計者ばかりでなくマネジメントも「楽に仕事ができる」フロアーとすべきです。設計リスクと設計工数を同時に下げられることを実現させるための流用化・標準化設計なのです。
  2. 営業技術による設計スルー=設計工数への直接寄与
    今までの営業から飛び込んでくる「なんでも、かんでも設計部門経由」=仕様確認、見積依頼、保守部品・納期確認…等々から始まり「去年作った製品のリピート、リピートだけど色違い」から「去年作った製品の70~80%程度を流用可能なリピート」まで、設計部門を経由せず営業部門(営業技術部門)から直接確認・出図できる体制を設けることによって設計工数を算出する方法です。
    そのためには営業技術部門にも流用化・標準化プラットフォーム設備して仕組みの共有と設計部門と営業・技術部門のジョブローテーションも実行して、実現していきます。
    設計スルーは発想があっても流用化・標準化プラットフォームという設計成果物を共有する仕組みが無ければ実現できない手段であり、逆にプラットフォームを構築した以上この手段を使わない手は無いと考えるのです。
    これらにより算出された「設計工数の余力」をどこに注ぎ込むのか…?
    そうです、残らず二階に注ぎ込みましょう!

二階:高難度、新規テクノロジーのフロアー=未来の糧を生み出す

経営の新たな柱、未来の柱を生み出すフロアーは三つの目的で存在します。

  1. 超超短納期、高規格仕様
    現行製品の延長線上であっても設計リスクが高い、難しい設計を強いられるケースです。
  2. 新規開発、新規テクノロジー
    設計リスクさえ想定できない=やってみないと分からない設計。新規テクノロジーに対して果敢にチャレンジを重ねる。従って試行錯誤を余儀なくされるが、その結果が全て新たなノウハウとして蓄積される。たくさん設計不具合を作って、たくさん解決する過程に意義がある設計の実行フロアーです。設計者の自己実現の一つである、新たなテクノロジーに触れる機会でもあり。モチベーション維持にも一役買います。
  3. 設計者の育成、ノウハウの蓄積
    1、2の設計過程は全くもって設計の「修羅場」であり、これこそ「設計者育成の好機」です。なぜなら設計者は「失敗の蓄積」で成長します。であれば、この二階のフロアーで失敗を「企画」するのです。私はこれを「設計リスクの絶縁」と呼んでいます。設計部門を二階建てにしない限りこの「設計リスクの絶縁」はできないのです。

一階の設計リスク=損失につながる

二階の設計リスク=利益につながる

一階と二階とでは、設計のリスクがこれほど異なる結果につながります。いかがでしょうか?

次回、その3は設計成果物の下流側との情報連携について述べてみたいと思います。

次回は8月5日(金)更新予定です。

ご案内

このコラムに関するセミナーや書籍をご案内します。

セミナー

当コラムの内容を、日刊工業新聞社主催にて、半日じっくり解説する有料セミナーを開催します。

部門間連携に悩むすべてのものづくり企業へ!
BOMで流用化・標準化設計の実現と企業価値を高めるコツ

【日時】
2016年12月2日(金)13:00~17:00

【会場】
日刊工業新聞社 東京本社 セミナールーム
東京都中央区日本橋小網町14ー1
(住生日本橋小網町ビル)

【詳細および申込みページ】

<開催終了>部門間連携に悩むすべてのものづくり企業へ!BOMで流用化・標準化設計の実現と企業価値を高めるコツ(日刊工業新聞社Webサイト)

書籍

当コラムをまとめた書籍『中小企業だからこそできる BOMで会社の利益体質を改善しよう!』を日刊工業新聞社から出版しています。
BOM構築によって中小企業が強い企業に生まれ変わる具体策とコツをご提案しています。

Nikkan book Store(日刊工業新聞社)

中小企業だからこそできるBOMで会社の利益体質を改善しよう!(日刊工業新聞社Webサイト)

関連するページ・著者紹介

この記事のテーマと関連するページ

部品構成表管理システム 生産革新 Bom-jin

製品原価の80%は設計段階で決定されます。「生産革新 Bom-jin」は生産管理とのデータ連携を重視し、設計技術部門の図面・技術情報などの設計資産を「品目台帳」で管理。部門内の設計ルールを統一し、標準化と流用化を実現します。また、生産管理システム「生産革新 Raijin」と連携し、生産部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減・納期短縮・生産効率の向上を実現します。

ハイブリッド型生産管理システム 生産革新 Raijin SMILE V 2nd Edition

「生産革新 Raijin」は、標準品や規格品の“繰返生産”と、個別品や特注品の“個別受注生産”との両方に対応したハイブリッド型の生産管理システムです。また、販売管理と一体化された組立業向け製販一気通貫型のシステムであるとともに、部品構成表管理システム「生産革新 Bom-jin」と連携し、設計部門との双方向連携による真の一気通貫で、コスト削減、納期短縮、生産効率の向上を実現します。

この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

BOMの検討に役立つ資料

BOM導入をご検討されている方向けに、BOMについてを解説したハンドブックを作成しました。無料でダウンロードいただけますので、お気軽に下記バナーよりダウンロードしてご活用ください。

製造業専門サイト

生産管理ナビ

生産管理・BOM管理特集のスペシャルサイトです。フェア・イベント情報や関連コラムなど、製造業の皆様向けのコンテンツをまとめてご紹介しています。

BOM構築による流用化・標準化設計・設計部門強化を解説するセミナー動画をご用意しています。

高効率設計を実現するための流用化・標準化設計や、設計~製造の一気通貫を実現するためのBOM構築を中心に解説した動画を配信しています。
その他にも、製造業の皆様に役立つセミナー動画を多彩にご用意。無料でご視聴可能ですので、お気軽にお申し込みいただき、情報収集にご活用ください。

動画視聴を申し込む

公式Facebookにて、ビジネスに役立つさまざまな情報を日々お届けしています!

お仕事効率研究所 - SMILE LAB -

業務効率化のヒントになる情報を幅広く発信しております!

  • 旬な情報をお届けするイベント開催のお知らせ(参加無料)
  • ビジネスお役立ち資料のご紹介
  • 法改正などの注目すべきテーマ
  • 新製品や新機能のリリース情報
  • 大塚商会の取り組み など

お問い合わせ・ご依頼はこちら

詳細についてはこちらからお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ

0120-220-449

受付時間
9:00~17:30(土日祝日および当社休業日を除く)
総合受付窓口
インサイドビジネスセンター

ページID:00116532