第57回 流用化・標準化設計は設計者からチャレンジを奪うのか? その3

取り残されていた関東地方の梅雨も明けて、いよいよ夏本番! 季節商品の辛口チューハイは各社、競うが如く新商品を矢継ぎ早に上市。呑み比べが間に合わないのは小生だけでしょうか?

今月は二階建てに成った設計部門と、そこから生み出される設計成果物を受け取る生産部門との情報の形と連携の在り方を考えてみましょう。

イラストをまずは見てください。赤い囲いの範囲ですが、一階と二階では設計成果物の性格が大きく異なります。
一階の通常出図と二階の「例外出図」です。「例外」と呼ぶくらいですから「真面・正常」ではないということは察していただけるでしょう。
今回はこの例外出図から説明していきます。

例外出図とは平たく表現すれば「まともな出図ではない」ということです。二階で行われている設計は超超短納期や新規開発等設計リスクとの戦いから生まれる設計成果物です。

したがって時間的余裕は存在するわけもなく、時間や技術リスクとの闘いの末のギリギリの状況から設計成果物が出力されます。しかし、そうであったとしてもビジネスとして製品生産を行い、完成までたどり着くことは要求されるわけです。ギリギリ許される範囲での設計成果物のアウトプット、つまり出図形態を探ることになります。

ここには「BOMなんて構築している時間は無い」という「本音」を認めざるを得ません。BOMを構築すべきと述べている小生も簡単にこの場面ではBOM構築を諦めます。では、具体的にはどの様な出図形態が存在するのでしょうか?

買い物リスト出図:
とにかく、目についた長納期品の優先度を高くして片端から先行手配する。そのためのリストをつど出図していくことになります。この過程での最も大きな痛手は中途に起こる仕様変更です。お客様はわがままです。しかし、これを拒絶するわけにはいきません。数度重ねた買い物リストに突如「キャンセル」「新規追加」「数量増減」が発生することになります。

この変化をどのように取り扱い、処理していくのかということが鍵になります。
小生の思いでは、新旧買い物リストを資材担当者と読み合わせ「追加」「キャンセル」「数量増」等々…処理をしていったわけです。何度も…。

購買部門は買うのは得意でもキャンセルは苦手という特質があって、このようなことを何度も繰り返していると「もう面倒だから、追加購入分だけ教えて」となるのです。
したがって、キャンセル部品や数量減部品は放置され、結果、残余部品として最終的に利益減の原因となります。この問題の解消法とは何か? それは、この買い物リスト連携を人力ではなくITに処理させることです。

ではITによる買い物リスト情報連携の実際とは…
まず、何度行われるか不明な買い物リスト更新に対し、つど毎回以下の処理行為を実行します。

  1. 前回と今回(現時点での最終版)とのITによる差異・差分抽出(設計者自身の確認としても重要)
  2. 新規・追加発注はITで自動発注処理
  3. 数量減を含むキャンセル部品⇒キャンセル行為へ(ITでは叶わない人間業=頭を下げてキャンセル実行)

1、2はITならではの処理作業ですが、最も大切なのは3のキャンセル行為です。この行為、処理こそが利益を確保する大切な購買部門業務なのです。そして人間業として一度発注した注文書を回収するという誠に人間臭いがとても大切な業務でもあるのです。このIT処理と人間業とのメリハリの利いた複合処理が可能でない限り製造業のビジネスとして「買い物リスト」によるモノつくりを成立させることは難しいと考えます。
「我が社は毎回買い物リストだ」と言われる読者がいたとすれば、「御社が儲からない理由の多くはここに原因がある」と申し上げたいのです。

次回はもう一つの例外出図である「五月雨出図」の実際を考えてみましょう。

次回は9月2日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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