第58回 流用化・標準化設計は設計者からチャレンジを奪うのか? その4

初夏の頃、台風発生の少なさに異常を感じていたのも束の間、4連続の東北、北海道への上陸、それも観測史上初の直接上陸で被害も深刻です。これらを異常気象という表現で括ってしまうには、いささかの不安が残ります。それに比べて私のホッピー消費はいたって定常解。実にスティディです。なんの比較にもなりませんが……。

今月は先月の「買い物リスト連携」に引き続き、例外出図の帝王?である「五月雨出図」の連携について述べたいと思います。イラストを載せますので、まずは確認ください。

多くの設計者の方々はこの「五月雨出図」という表現を聞いて「あれね!」と頷いてもらえると考えます。ただし、あまり良い思い出は無い、というか悪夢としての記憶の方が多いのではないでしょうか?実際「イヤーひどい目にあった」とか「購買、生産部門を大混乱させてしまった」などという反省の句が聞こえそうです。何を隠そう小生の記憶もまさに同じです。ひょっとしたら、出図納期に追われ、今まさに「五月雨中」の方も居るのでは?

「買い物リスト」よりは全うな設計成果物を目指して、BOMの大枠は構成するも、そのBOMを構成するユニット群の中身は空っぽという状態から始まります。ですから必死で設計して、

  • Aユニットは今週末出図
  • Bユニットは来週末出図
  • Cユニットは今月末出図

というようにまさに五月雨の如くパラパラっ、パラパラっと出図がダラダラ続くわけです。増して納期もギリギリなので出図したAユニットから逐次手配していかねばならないという状況です。

このまま順次出図、手配がオンタイムで進捗するならば、通常出図よりは「忙しい生産だった」という表現で済ますことはできるでしょう。しかし、この五月雨出図は「悪夢」をもたらす危うさをはらむわけで、その原因、要因を確認する必要がありそうです。

小生が五月雨出図を悪夢に追いやる三大テーマとは……。

  1. お客様の途中仕様変更

    わがままなお客様が言うことは涙を飲んで聞かねばなりません。
    アッチャー! A,Bユニット共に再設計かー!!(確かに同情します!)

  2. 途中で設計不具合を発見

    既に出図してしまったAユニットに問題があって、出図と設変を同時進行。(設計者としてはつらい状況ですが、成長への糧でもあります)

  3. 五月雨Ver.の上流側・下流側での不一致

    何とかVer.10(10回目の五月雨出図)で完成! しかし、下流側が認識しているのはVer.9!

この三大テーマと戦う術は何か? 少し場合分けしてみましょう。

1、2は出図済みの設計成果物と新規設計成果物との「上手な差分情報の共有」が肝と言えます。私は五月雨出時の設計者の基本姿勢として「とにかく完成形を追求すること」としています。既に出図してしまった設計成果物のことは「忘れ」ひたすら正確な完成形を目指すというものです。そこで活躍するのがIT連携です。今度のVer.は直前のVer.と何が異なるのか?

そうです、人間が一番苦手な「間違い探し」です。ここに「ITの力」を借りるのです。私自身の記憶の断片として、この間違い探しを担当設計者と購買担当者がおでこを付き合わせ、BOMを見ながらマーカーペン片手に「新規、員数増、削除、員数減」とやるわけです。大変根気のいる仕事。週刊誌等で間違い探しがクイズになっているぐらいですから、人間様が苦手とする作業なのは自明です。

だいたいVer.3ぐらいで双方とも疲弊して、前回の買い物リストよろしく「新規、追加(員数増)」のみの購買活動へと流れていきます。発注済み(要キャンセル)、員数減(数量過多)の部品はどんどん捨て置かれることになります。そして結果、無駄なコストが膨らんでいくことになります。

ここもITによって差分情報をしっかり得て「新規、員数増」はITに任せ、「削除、員数減」は人間業として購買スタッフが活躍する場としていくべきです。結論として「前回と今回との相違、つまり間違い探し」を決して人間業で処理してはいけないということです。この辺りの問題に対する傾向と対策は前回説明した「買い物リスト」の時と同様と言えます。

3への対応は、これもITの得意技であるVer.管理をさせることです。上流側、下流側共に「最終Ver.はどれ?」とITに問い合わせるとITがしっかり最新版管理を実行して「これです!」と示してくれるようにすべきです。

例外出図の二大例として買い物リストと五月雨出図を説明してきました。
これらは望むべき、あるべき設計成果物の姿ではないのですが、設計業務、特に設計部門の2階で行われる設計業務の性として避けられない現実であると考えます。

ならば、いかに上手く処理をしてコストダメージを抑えていくのか? ソリューションとしての糸口として、やはり「ITの力」をいかに味方に付けるかという発想が大切になるでしょう。その発想はこれから、製造業の生き残り要因の一つでもあると考えるのです。その意味で例外出図連携の重要性を認識していただければ良いと思います。
次回は例外出図の後始末について述べてみたいと思います。

次回は10月7日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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