第73回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その10~ 品目コード体系(耐用年数30年以上を目指す品目コード体系とは)

BOM構築への始めの一歩である「モノを表わす」品目コード体系の確立は大変重要なルール確定ステージです。「最低30年間使える品目コード体系を目指そう!」を合言葉にコンサルを行いますが、現状に囚われてなかなか大きく体系変更ができないのも事実。これでは失敗しますという視点で悪例を紹介します。他山の石としてください。

品目コード体系(耐用年数30年以上を目指す品目コード体系とは)

師走です。泣いても笑っても今月で今年は終わり。ですから笑って終わりたいものです。ホッピー呑みながら、傍らに金宮のお湯割りを置くようになりました。

意味あり、意味なしコードの選択が鍵

本コラムでも品目コードに関わる話題は何度となく取り上げましたが、コンサル現場で起きている実際から、少し視点を変えて考えてみたいと思います。

品目コード体系は「ITの力」を得るために、そのITに「モノ」を指し示し、識別させるための文字の羅列です。

一昨年末から始まったマイナンバーも「個」をITで識別するためのコードです。その意味では識別する対象が「モノ」なのか「個=人」なのかの差はありますが「識別」という考え方としては全く同一です。

コードを構成させる文字として何が適切かと考えてみますと、ITにとってみれば「重複」さえしていなければどのような文字列でも構わないことになります。

が、しかし。

一般論として漢字は漢字変換フロントエンド経由ではチョット……。

アルファベットはテンキーボードから入力できない……等々。

結果、数字の羅列というストーリーとなります。

しかし意味ありコードというのは「人間にとって意味がある」必要性がある訳ですから、数字の順列組み合わせでは意味になり難い。

従って、最終的に意味の頭文字としてのアルファベット+登録順番の数字で表現されることになります。

最もシンプルな意味ありコードとして、これは、あるコンサルの実例ですが、
D123456789012  (D:Design=自社設計品)
P123456789012  (P:Purchase=購入品)
という潔い体系。

本コンサルのPJリーダー曰く「全て数字のランダムにすることも考えたが桁数の増加を恐れD、Pという意味で仕分け、桁数を押さえた」という見識でした。私もこの考え方には賛成します。

つまり、人間に認識させるための意味ありではなく、むやみに桁数が増えることを押さえる目的での大分類コードとしての意味ありヘッダーです。

意味ありコードの崩壊

意味ありの目的は「人間にこの部品、ユニット、製品はどういう代物であるか」を伝えることを目的としています。

ITが今ほど機能していない時代には伝達手段の一つとして存在し、効果もあったことは認めますが、できるだけ桁数を押さえてシンプルなコード体系を目指そうとする今のトレンドには拮抗します。

まして今時、バーコードやQRコード+ハンディターミナルを活用すれば意味なしランダムコードであっても、それをキーにあらゆる情報を人間に与えることができます。その視点では意味ありコードを積極的に採用する理由は減ってきている訳です。さらに「意味の分類定義を管理していく」という人間業も発生し、余計な仕事が増えるばかりか、これを怠るとコード体系の崩壊が始まります。

この、意味ありコードの欠点である崩壊のプロセスの実例を以下に紹介します。

1.部品の機能や種類を表わした意味ありコードの場合

会社の成長と共に意味表現の想定を超える製品が増え、構成するユニット・部品も意味表現の想定を超え始める

意味ありの分類定義が遅れ、とりあえず「その他」の分類となる

時間経過と共に意味なし同義の「その他」の部品、ユニットが過半数を占める → 崩壊

2.製品の部位を示す意味ありコードの場合

ユニット思考があってユニット部位を示すコード体系で運用開始

流用化設計を取り入れると想定した部位ユニット以外の部位に流用ができることに気づく

二つの選択肢を迫られる
A:部位を示すコードを持ったまま他の部位に混在する → 崩壊(部位コード自体の崩壊)
B:同じ部品に部位コードを新たに採番し流用する → 崩壊(同一部品の多重存在)

意味ありコード体系の最も大きな欠点は部品、ユニット、製品をその意味が示すカテゴリーの中に閉じ込めてしまうことです。流用化設計は名のごとく部品、ユニット、そして製品にさえ流動性を求めていくものです。流動化させるためには意味ありコードという「檻」は弊害となりやすいという認識は持ってください。

結果、30年以上の耐用年数を持つ品目コード体系はやはりランダム系、つまり意味なし傾向となっていきます。
品目コード体系を人間が理解する必要はないという視点に立てるか否かが、体系構築の分かれ目となると思います。

スマホに付いているバーコードリーダーアプリを使って、そこら中の何のことだか分からないバーコード、QRコードにスマホをかざして読み取ってみると「これからはこれだな!」という気持ちになるのです。
みなさんいかがでしょうか?

以上

次回は2018年1月12日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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