第72回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その9~ プロジェクト・リーダーを支えるものとは

私がお預かりするプロジェクト(PJ)全てが、改革を成就できるわけではありません。その成就の成否を握るのはPJリーダーのマネジメント次第であることは間違いがないのです。ではPJリーダーとして、マネジメント力を発揮して、その厳しい役目を果たすための精神的な支えとは何か? 改革を成就できるPJリーダーとは? という切り口で考えてみましょう。

プロジェクト・リーダーを支えるものとは

今年もラスト2カ月、なじみの呑み屋のカレー鍋が恋しい季節。これが実に金宮ホッピーのベターハーフなのです。

プロジェクト(PJ)リーダーを支えるものを考える。

これまでも何度となくPJリーダー論を、このコラムでも取り上げてきました。

なぜならPJリーダーは、改革の錦の御旗を振って、PJメンバーを叱咤激励しながら目標へ到達させる最も重要な仕事だからです。
さらにPJリーダー一人だけ到達しても意味はなく、まずはPJメンバーを一緒に目標へ到達させ、そしてそこから全社に改革を波及させてようやく全社改革の成就となります。改革が失敗したら……などというネガティブな発想はここにはなく、前回取り上げた「変える勇気」を発端に前進あるのみの発想です。

この力をマネジメント力と一括りにしてしまうのは、いささか荒っぽく感じます。もっともっと複雑系だと感じています。心中を察して余りあるほどの心の機微だとも思います。

しかし、そうは言ってもPJリーダーも明らかに「人の子」です。給料がある日突然、何倍にもなるわけでもないし、何をモチベーションとして自身を支え、そのモチベーションを維持するためのプランニングはどうしているのか? どうしていくべきなのか?

私のコンサルとしての仕事の完遂という一面を握るPJリーダーの資質だけに、常に頭にある要件です。

ツールを使ってPJリーダーの資質を探ってみよう

スウェーデン人の心理学者カラセックが唱えた「カラセックの3次元モデル」というのがあります。皆さんも管理職研修や仕事のやりがい研修等で一度は聞いたことがあるのではと思います。

PJリーダーのようないわゆる「大変なお仕事」を完遂するためにはどのような要素が必要なのか? それらの関連性は? を分かりやすく教えてくれます。今回はこれをツールとして使って分析してみましょう。

3次元つまり3要素ということになりますが、その要素ごとの意味合いや実際のコンサル実務、そして優先度等をPJリーダーという仕事に当てはめて考えてみましょう。

「要求」:自己実現させる原動力(=こうありたい!)

まずは改革の発端となる「何のために」という心のニーズです。自己実現と表現しましたが、自分のいる会社に自身の人生という有限な時間を委ねているわけですから、その時間を無為に過ごしたくない、人生の終焉を迎える時に「あの会社で過ごした時間は有意義であった」と思いたいという改革の始めの一歩となる動機です。

リーマン生活をつつがなく過ごし、退社して、そして忘れられていく……
これは我慢ができない、自身の存在という「爪痕」を何とか残したいという要求でもあります。
改革の成就のあかつきには、「この設計部門を改革したのは……」と数十年後まできっとPJリーダーの名前は確かに刻まれることでしょう。

「裁量」:いわゆるビジネスパワー(=トップダウン代行権限)

最終的には全社改革に繋がる改革なのですから、この裁量つまりビジネスパワーは「社長代行」同等であるべきです。
この裁量権がしっかり権限移譲されていない会社はまず、上手く行きません。

何度となく、見てきました。裁量権を委ねると口ではおっしゃる社長なのですが、最後は「そんなこと誰が決めた!」で、せっかく決めた改革方針や業務フローがご破算になります。そんな事を繰り返していくうちに周囲の「やっぱり社長の鶴の一声さ!」であえなくPJリーダーは二階に登らされたまま梯子を外されることになるのです。
改革PJ一巻の終わりーーーとあいなります。

従って、この裁量の有無と真偽はPJリーダーばかりではなく、私にとっても優先度が高く、重点項目であります。

「支援」:小生の仕事(=コンサル、PJ内の調歩同期。PJリーダーを孤独、孤立から救う+利害調整<行司役>)

PJリーダーは自己実現が具体的に見えていますから、PJメンバーも同じ景色が見えているはずだと錯覚しやすいものです。つまりあまり牽引力が強すぎるとPJメンバーはただただ引きずられて、そのうちロープから手を放してしまいます。気が付いたら、PJリーダー自身とロープのみという結果になりかねません。

私の仕事としては、リーダーの牽引力の強弱調整やメンバーの理解促進に励むことになります。これによりPJ全体の調歩同期を図るわけです。

そして、裁量権とセットで他部門との利害調整を行います。新しい業務運用やシステム運用に関わる部門間調整は時として難航します。それは改革が全体最適を目指すため、一部部門には負荷が増えることも考えられます。「何で技術ばっかり楽になるのだ!」と言わんばかりの他部門の抵抗です。裁量権はこの事象には人事権と読み替えた方が分かりやすいかもしれません。やはり、抵抗勢力の排除は必要です。社長、PJリーダー、コンサルの私が三位一体で対応を迫られる緊迫の一瞬です。

さらにもう一つ、「支援しない支援」というのがあります。最近特に重要視している手法です。
コンサル料タダ取りという意味ではありません。
分かりやすく表現すると、「徹底した聞き役に徹する」ということです。

同志として認めていただいているコンサルの私であっても、PJリーダーからすれば時として「雑音・ブレーキ・思考の違い」等々PJリーダーの自己実現との間に摩擦熱を持つ場合もあります。そのように感じた時は「そっと傍らに佇んでいるだけ、その代わりPJリーダーの思いは(不平不満も含む)徹底的に吐露してもらう」という行動に切り換えます。

この事は結果として私との相互理解に結びつき良い結果を生んでくれます。「孤独でないことの再確認」という支援と言えるのかもしれません。

改革を任されたPJリーダーを支える考え方として今回は述べてみました。少なくとも上記の三要素をPJリーダーの資質とあわせて経営トップ層は戦略的に考えていくべきであると考えます。改革の成否を握る必要十分条件です。

さらにPJリーダーとしての資質は後天的な物であると考えます。従って、普段の社員教育も含めて社員を沈殿させない厳しさのある製造業には改革成就のきざしを感じるのです。

以上

次回は12月1日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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