第71回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その8~ 「変える勇気」の大切さ

私がお預かりしている会社で行われているPJ(プロジェクト)活動の根本は変革です。つまり変わることを結果として目指しているのですが、しかし、同時に変わることの難しさとの戦いでもあるのです。変わることへの恐れと戦う、その原動力は「変える勇気」の有無だと思うのです。実に大切な事柄だと思うのです。

「変える勇気」の大切さ

暑さ寒さも彼岸まで。ホッピー3冷が最も整合する季節です。確かにもう氷は要りません。実にウマシ!

設計部門の改革を支える「変える勇気」

社歴という長年の積み重ねと継承という名を借りたマンネリの結果の末、今の非効率な設計手法が存在してしまっている各社の設計部門。その設計部門の現状に改革のメスを入れることへの不安とためらいは各社各様ではあるものの、必ず存在します。

そして、それは大変重く、厳しい物です。

変革の当事者になることへの恐れとでもいうのでしょうか? リーマンである以上「先送りしたい! なぜわざわざ火中の栗を拾うの?」「給料が変わる訳じゃないし」等々、現業が忙しいのに、さらに上乗せされる変革への努力は「余計なお仕事」と捉えがちです。そのような会社のPJメンバーと経営層のジレンマは「PJの進捗と現業の処理のどちらを優先するのですか?」が常にテーマとなってしまいます。この矛盾に対する回答は実に難しいのです。そうです、その理由は既に二律背反する矛盾になってしまっているからなのです。

しかし、そのような現実がある一方、これらを矛盾化させず「現業もPJに課せられた変革も両方実行できないか?」という思考を持ち、実行するために奮闘しているPJも多く存在します。今回は実例として今お預かりしているT社の例を紹介しましょう。

現業とPJ進捗を矛盾化してしまっている会社との大きな違いは唯一「変える勇気」という意志の有無だと思います。その明快な表現としてT社のPJキックオフ資料の一部を掲載します。

訴求されているのはアメリカの神学者、倫理学者ラインホールド・ニーバー(1892-1971)の大変有名な一節でした。それは「変える勇気」でした。この一節をPJ発足の意識の核としてPJメンバーに周知し浸透させる行為はPJリーダーの正に知性とマネジメント力のたまものだと思います。

皆さんの印象はいかがでしょうか? 私の印象は「我々の時代で過去の延長線上から大きく舵を切ろう」という大変力強いメッセージが込められていると感じました。

このメッセージにはリーマン根性を窺い知ることはできませんし、自身が存在する会社全体を俯瞰した意識であると感じます。これは正にリーマン視点を超える経営的視点へのアプローチであると同時に思います。

「変わる」ではなく「変える」という能動的な覚悟が重要

よく私はコンサルタント中に「どうやったら変わるのでしょう?」という質問を多く受けます。
この質問を聞くたびに、私は「変わるための魔法の粉を下さい」と同意に感じてしまうのです。

そのつど、ついついピキッと切れて「PJ自身で死ぬほど考え抜いてください!!」と語気を荒らげてしまうのです。
この「変わる」と「変える」の一文字違いの中に、言葉遊びの範疇を越えて大きな意識の差を感じます。

受動的な印象と能動的な印象の違いと説明してはおきますが、もう少し真意は深く、「変える勇気」の一節には恐れの存在を認めつつも「森羅万象たる自然現象以外我々の手で変えていくことができるはずだ」という強い意志も感じます。
まさに祈りにも似た物さえ感じます。

設計部門改革と祈りは不釣り合いかもしれませんが、「本当に我々は変わるのだ」という強い意志なしに、「設計部門の改革」は成就しないと言えるのでしょう。私が何度も申し上げている、設計部門改革へのモチベーションプランニングの原動力として「変える勇気」の存在の有無は改革の成否そのものを握ると考えています。

PJメンバー一人ひとりの心の中に「変える勇気」を植える、植えられるPJリーダーそのものの有無なのかもしれません。

以上

次回は11月10日(金)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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