第51回 「保守ビジネスを考える」 その2

保守ビジネスのあるべき姿を目指すには?

気温が定まらなかったり、あらぬ所で大雪が降ったりの1月でした。私も琵琶湖の湖北側で突然の大雪に遭遇し、難儀を致しましたが、政治も経済も不意打ちが続きます。

さて前回述べました、保守ビジネスの成功への三つの掟。つまり、あるべき姿を獲得するためにはどのようにすれば良いのか?という論点で進めて参りましょう。
三つの掟にしたがってまずは考え方や方法を前回に引き続き深堀をしてみましょう。

1:早く届ける

定期保守ならまだしも、機械が故障して止まっているとしたら……
このようなやり取り経験はありませんか?

製造側:「すみません、これから部品を作るので納期は~」
客側:「えーっつ!そんなにかかるの?少しでも早くしたい。地元の外注に作ってもらうから図面だけ送って!」

この段階で保守ビジネスは瓦解します。
この問題の特効薬は何でしょう?そうです在庫です。作り置き=即時出荷が可能です。
「そうは言っても在庫なんか類似品種が多すぎてできない。うちはシャフトだけでも数百種類もあるんだ!」という保守部門スタッフの声が聞こえそうです。
たしかにこれは現実でしょう。このままの状態で「在庫のススメ」はさすがにできません。
まずは、対症療法として使用頻度に合わせてABC分類して在庫し、確率的に対応して、何とか凌いで行くしかありません。あくまで痛み止めの対応です。

したがって、根本療法としての治療計画が迫られるわけですが、迷わず設計部門で流用化・標準化設計をできるだけ早く実現して類似品種の部品を徹底して減らすことです。しかし、この根本療法の効果が出るには数年かかります。ですから、できるだけ早く取り掛かる。この決断が保守ビジネスの将来の成否を決定するのです。

2:部品では無く製品として届ける

生産用部品と保守用部品とは何が異なるのでしょう?
「全く同じ部品でしょ!」との声に「たしかに部品単体としてはそうですね」とお答えしますが、生産と保守という言葉の違いの中に、部品の扱われ方に大きな相違があります。
生産用部品は生産を目的とした生産現場で使われる部品であり「取り付け、組上げる」ことが前提です。一方、保守用部品は顧客の生産現場に他の機械と一緒にシステム化され組み込まれた状態にある機械に対し使われる部品であり、不具合部品を「取り外し、再度取付け、組上げる」ことが前提です。如何でしょうか?同じ(形状の)部品であっても使われる環境、条件がこれほど異なるのです。

ここで重要なのは、これら前提の相違をしっかり捉えて「保守の視点」で部品のあるべき姿を考えるべきです。前回も述べましたが、不具合部品を取り外すだけでも四苦八苦することも多々あるわけです。「取付け、組上げる(=着)」だけの生産時には気づかない保守時の「脱・着への配慮」が保守に優しい部品としての位置づけを決定し、顧客に付加価値を感じてもらえる、つまり高く買ってもらえる原動力となるCSを生むのです。

設計時点での「脱・着への配慮」が理想的ですが、なかなかそこまで届かない場合もあるでしょう。しかしできるだけ「脱・着への配慮」を保守部品設定時に盛り込みたいものです。
例えば、シャフトだけの不具合であっても脱着や芯だし等の機能確保の視点から軸受も含めたシャフトアセンブリーごとの交換を薦め、その際の脱着を容易に進める為の手順マニュアルも添付することです。シャフト一本ゴロっと送って「後は上手くやってください」では無く、保守用シャフトアセンブリーという「製品」を顧客に届けることなのです。

3:正しい部品を届ける

類似したバージョンが繰り返された設変ごとに存在し、該当機械には、何度目の設変のバージョンの物が使われているか「誰も分からない」……
やっとの思いで探し出した該当機械の古いファイルをひっくり返して、組図を見ても、どのバージョンか「誰も分からない」……

この悲しい現象の原因は何でしょう?
結論から言えば、設計成果物の形に問題があるのです。まずは「一意の認識」ができていないことです。もうお分かりですね。品目コード体系がないことがこのような致命的な結果を生むのです。

さらに、設計変更履歴の継続的なフォロー(設変履歴トレース)や最も大切な部品構成情報つまりE-BOMの構築不全が「間違いなくこの部品=この品番」という鮮明な識別を不能にしているのです。品目コード体系とE-BOM無しでは話に成らないということです。

解決策はS-BOMの構築

S-BOM(Service BOM=保守BOM)とは「保守という視点」を持って新たに再構築されたBOMのことであり、上記の「三つの掟」を実現させる手段でもあるのです。そしてS-BOM構築の源泉情報としてE-BOMが必須となります。つまりE-BOMあってのS=BOMということになります。このS-BOMの構築については次回に詳しく述べたいと思います。

次回は3月4日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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