第52回 「保守ビジネスを考える」 その3

S-BOMを構築しよう!

季節は冬と春の境目を行ったり来たりしています。経済環境も揺れ動いていますが、私がお預かりしている製造業は皆さん忙しい状況が続いています。読者各位の会社はいかがでしょうか?

保守ビジネス・シリーズもいよいよ3回目。クライマックス? となるべく進めたいと思います。そのクライマックスたる由縁はやはりS-BOMというBOMの構築にあります。その命名由来はS=Serviceつまり保守業務を念頭に命名したつもりです。M=Maintenanceを冠にするとM-BOMとなってしまい、混乱するのでS-BOMとしました。保守という側面ばかりでなく「奉仕、仕える」という意味合いもお客様目線でのCSをイメージさせ好んで使っています。

命名の前置きはこの辺りにして早速その実態に迫りましょう。
皆さんは既に理解されていると思いますが、このS-BOMの源泉情報はE-BOMです。M-BOM同様、正しいE-BOMの存在があってこその存在です。
S-BOM構築の実際に進む前に添付した図を見て、E-BOMとS-BOMを比較してください。
話を容易にするためにシンプルなシャフトユニットを例にしました。

E-BOMの例

S-BOMの例

比較した感想はいかがでしょうか?
シンプルなシャフトユニットのE-BOMですが、これを基にM-BOMが構築されモノつくりが始まります。その後S-BOMが構築されるプロセスです。紙面の関係でM-BOMは省略しますがS-BOMはE-BOMとM-BOMの双方の部品、ユニットを上手く活用して構成されていくのです。
理解された読者、「?」の読者、さまざまでしょうが深堀をしていきましょう。

S-BOM構築の肝は……
1:E-BOMを保守の目線で再構築する
2:M-BOMで新たに生成された仕掛ユニットを積極的に使用
3:部品ではなく製品(商品)としての付加価値を付ける
です。それぞれ詳しくみていきましょう。

1:E-BOMを保守の目線で再構築する

前回も説明しましたが、保守作業と生産作業の違いは、「外して、付ける」つまり「脱」「着」の有無です。保守作業は当該部品を外して、やっと道のり半分です。それも作業性の悪い据え付け現場での作業であることを常にイメージしてください。その様な「気配りイメージ」をどうしたらS-BOMに反映できるのでしょうか?
実際に保守業務を体験したり、保守業務専任者との意見交換をしたり、これらは有用なヒントを与えてくれると思います。

具体的な例として(S-BOMの例の図にある)【1】の脱着用治工具はその典型例です。
例えば、シャフトユニットの軸中心合わせを劣悪な環境下においても、この治工具の存在で上手く再現できたならば、ここで初めて保守業務への気配りが生きるのです。それは保守業務担当者への「早く動かせ!」という現場のプレッシャーの存在を理解しているか否かの差での結果です。きっと保守業務担当者はこの治工具に対して「ありがたい、助かった」と感じてくれるに間違いありません。
これが、とても大切なCSに直結することには論を持さないと思います。

2:M-BOMで新たに生成された仕掛ユニットを積極的に使用

M-BOM構成においてモノつくりの過程で生成されたユニットや複合部品は、S-BOMでも大いに活用すべきです。保守現場はバラバラな単品部品より少しでも正しく組み上がったユニットの方が便利ですし、助かるはずです。

典型例として【2】のユニットや部品はM-BOM由来の物です。生産現場では中間仕掛品として存在するものです。S-BOMを構築する際にはぜひM-BOMをしっかり眺めて、保守現場に思いを馳せてください。きっと「これ使えそうだ」というユニットが存在しているはずです。

3:部品ではなく製品(商品)としての付加価値を付ける

まずは正しい保守部品を届けるための証としてS-BOMを構築した後に、該当する製品と情報の紐付けをしてください(【4】を製品と紐付ける)。顧客からは保守部品リストからS-BOMの品目コード【4】で正しく購買・調達指示が来る場合は問題ありませんが、顧客名から始まって、製品の名前、製品品目コード、シリアル番号等々「数々のヒント」から正しい保守部品を見つけ出すことを迫られる場合も多くあると思います。でもS-BOMさえ構築しておけば、それらの種々な情報から紐をたぐって正しい保守部品に到達することができます。

いろいろな所で述べてはいますが「ゴチャとした部品の塊」ではなく製品、つまり商品としての位置づけをしっかり感じていただくためには【3】のような保守業務に優しい情報としてのマニュアルも大切です。見える外観として付加価値を感じてもらえる社名入り梱包も必要でしょう。

これら顧客先で保守業務を担当しているスタッフに「俺たちのことを忘れていないな」と思わせること。このCSを得るための努力は間違いなく儲かる保守ビジネスへ直結します。
どの会社も保守業務は概ね予算化されています。既に「お金を使うことが前提」となっている訳です。そのお金を見す見す逃す必要はありません。ただし、そのためには少しだけ努力が必要なのです。それがS-BOMの構築です。

次回は4月1日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ コンサルタント

谷口 潤

開発設計製造会社に入社以来、設計開発部部長、企画・営業部部長などを経て、米国設計・生産現地法人の経営、海外企業とのプロジェクト運営、新規事業開拓に携わる。その後、独・米国系通信機器関連企業の日本現地法人の代表取締役社長就任。現業に至る。

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